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初説得

 しばらく呆然としていると、スキンヘッドはまた慌ただしく現れた。



「やっべぇ! 大事なこと言うの忘れてタア!」



「何ですか、落ち着いてください」



「うんありがとう。塁君。アナタのスキルを用いて無双しなかった場合、アナタ死にますカラ! ヨロシク!」



「あ、ちょっと! どういうことですか!」



 しかしやかましいスキンヘッド男は、もう2度と現れることはなかった。

 しばらくするとまた辺りは暗くなり、そうしたかと思うと明るくなった。なんだ? スキンヘッド男は神様なのか? あれで? あいつが操作しているのか。「こいつを転生させよー」とか言って。ハハ、笑える。

 気づくと俺は、やっぱり中世ヨーロッパ風の広場? みたいな所に立っていた。思わずため息をつく。いやいや、展開が早すぎるって。俺まだゴンゾーを助けて、どうなったか気になっている最中なんだけどなー。ていうかそもそも、『説得』でどうやって無双しろって言うんだよ。せっかく転生したら武器とか魔法とかで無双したいよ。論破して無双するなら、現代日本でもいいじゃないか。あ、説得だから論破ですらないのか。トホホ。

 周りを見渡すと、日本人っぽくない顔つきの人達が、日本っぽくない服装をして、よくわからない貨幣で買い物したりお話したりしている。これには少しだけ興奮した。なんだか、異世界転生って感じがする!



「きゃああああ! 助けて、誰か助けてください!」



 近くで悲鳴が聞こえる。居ても立っても居られない俺は、思わず声のする方へ駆け寄った。



「どうかしましたか!」



「助けてください! この人が、この人がぁ!」



 えっ可愛い。金髪のさらさらロングヘアーで、ブルーの大きな瞳。年齢は10代後半といったところか。ただ、今はそっちに目をやっている場合ではない。可愛い少女はゴツい大男の腕に抱えられ、どこかに連れさられようとしていた。よし、助けよう! 俺の使える技はっと…。

 ガーン。説得。よし、あくまで論理的思考に基づいて話をしよう。



「君! 彼女を話してあげたまえ! 何故なら彼女は嫌だと言っているからだ! 嫌だと言っているのに嫌なことをするのは明確な彼女に対する権利の侵害である!」



「何言ってんだ、こいつ」



 俺達の周りには人だかりができており、その中の1人が呟いた。本当だよ。何が『説得』だ馬鹿野郎。おかげで恥かいたじゃねえかあのスキンヘッド馬鹿タコ野郎! 俺は心の中で、スキンヘッド男に対して散々、悪態をついた。しかし、大男の反応は違かった。




「あ〜! それは気づかなかったです! そうですよね、そうですよね! 嫌なことをやったらいけませんよね! すみませんでしたぁ!」



 そう言って、大男は大きな図体を屈ませ、地面に頭を擦り付けて必死に謝り始めた。



「いや、もう大丈夫です! 大丈夫ですから!」



「これからは気をつけます!」



 大男はトボトボと手ぶらで帰っていった。人だかりがざわつき出した。



「あの男、強盗を説得したぞ!」



「おい、あの男、偉い貴族なんじゃないのか? あんな普通のこと言っただけで強盗をひれ伏せさせるなんて!」



「そうだ、そうだ。そうに違いない」



 ひそひそとあることないことを話されるのは嫌だったので、俺は広場から走って逃げ出そうとした。すると、後ろから呼び止める声があった。




「あのぅ、助けてくださってありがとうございます。お礼がしたいのですが」



 それは可愛い女の子だった。

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