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オイ!スキル『説得』でどう無双しろと!どこがチートやねーん!

 俺はいつも冷たい奴だと言われる。心がないただとか優しくないだとか何考えてるか分からないだとか。それはひとえに、俺がポーカーフェイスだからだ。感情表現が下手くそで常に無表情の俺は小さな頃、家族や友達から『能面』とまで呼ばれた。もちろん、不本意なことだ。俺にだって人の心はある。近所の『ゴンゾー』はただ1人、いやただ1匹の、俺の理解者だ。もちろん『1匹』というからには人間ではない。白い雑種の中型犬である。

 俺は用事もないのに近所を毎日散歩する。それは庭にいて、リードで繋がれている『ゴンゾー』に挨拶するためだ。俺が「ゴンゾー!」と呼ぶと、野太い声でワン! と返事をしてくれる。俺にはそれが可愛くて仕方がない。

 しかしながらゴンゾーは、あまり人懐っこいタイプの犬ではない。他の人が近寄っても吠えたり、最悪の場合は追いかけたりする。多分ゴンゾーは、俺の芯の暖かさを知っている。

 今日も俺は、ゴンゾーに挨拶するため、ジャージを着て外に出かけた。春の午前中はほどよく暖かくて気持ちいい。



「ゴンゾー!」



 例の家の前までくると、ゴンゾーは俺に気づき、喜んで走ってきた。たが、繋がれているので庭の外には出られない。そのはずだった。しかし、ゴンゾーは庭を飛び越え、道路に飛び出し、道路を平気で横断してこちらに向かって来ようとしている。まずい、飼い主の不注意でリードで繋ぎ忘れたのだ。



「ゴンゾー! ダメよ!」



「ハフハフハフ」



 言葉なんて分かる訳がない。ゴンゾーは嬉しそうに舌を出しながら、道路に飛び出した。

 まずい、向こうから車が来ている!




キィィー!




 視界が暗くなった。俺は死んだのだ。間違いない。ゴンゾーを庇って車に轢かれた。ゴンゾーが無事なら最悪構わないが…。

 でも、大好きな動物を助けて死ぬことができたんだ。俺の人生に悔いなどない。そう思った瞬間だった。目の前がぱあっと明るくなった。




「ぐわわ! ま、眩し!」



 しばらく、目を開けることができなかった。顔を手で覆いながら少しずつ目を開けて、光に慣れていく。完全に目を開くと、目の前には謎のスキンヘッド男が立っていた。いや、宙に浮いている…? これってもしや…。まあいいや。俺は、このスキンヘッド筋肉隆々男が話を始めるのを待つことに決めた。




「目は慣れたか?」



「は、はい! 慣れました!」



「よし! 元気がいいね、死んだのに!」



「えっ」



 ああ、やっぱり俺は死んだのだ。異世界転生などという漫画のようなことを考えた自分を殴ってやりたくなった。どうせ痛くないし。



「嘘で〜す!」



「へっ? どの部分が?」



 スキンヘッド男は腕組みをし、考え込んだ。いやいや、アンタが嘘だって言ったんでしょうが。



「アナタね、田浦塁君。アナタは、実は死んでませ〜ん! パチパチ!」



「どうせなら手、叩いてくださいよ」



「あ、そうか」



「っていうか、じゃあやっぱり『異世界転生』ってやつですか?」



「ピンポーン! ピンポンピンポン!」



 ああ。この人と話すのしんどいわ、俺。



「これから、『タクスフィー王国』のそこそこの貴族の家の息子さんになってもらいます! チート無双できてよかったネ!」



「え、やった。ちょっと憧れてたんです! ちなみに、スキルはなんですか?」


「スキルは、『説得』です! じゃあ、頑張ってね〜! これにて失礼ドロン!」



 スキンヘッド男は消えた。ちょっと待って。異世界転生で俺、手に入れたスキル『説得』って何? はあ!?

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