俺の新しい異世界生活がしっかりと始まりました①
まさか、目を開けてみると家にいるとは思わなかった。それになんだか体の自由は効かないし周りの言葉も全然わからない。
何故か別に悲しくも無いのに涙腺が緩んで泣いてしまいそうだ。それに自分で感情がいつもみたいに上手く制御できない。その原因を掴むために、俺は自分の体を見る事にした。
手を自分の元まで運び空中を掴む動作をすると、とても小さな手が見えた。なんだか嫌な予感がしてならない。
目を閉じてこれらの事を結びつける。
すぐに泣きそうになる事や、体の自由が効かない事、そして小さい手。
それは今俺が赤ちゃんとして産まれて来たと言うことに気付いた。
異世界転生したら高校生の時の姿だと思ったが、よくよく考えるとそれは異世界転移であってあくまでこれは異世界転生神様もしっかりしている。
だが今の俺の知識では日本語しかわからない事と、この世界の知識も分からないから、これから異世界の言葉や文化に慣れないといけないと考えると頭が痛くなりそうだった。
とりあえずこの状況を説明したい。
まず、今わかる範囲では、周りを見渡す限り俺は結構裕福な家庭に生まれたと見れる。
ベットはふかふか、枕も柔らかい。それになんせ俺の目の前にはあの憧れのメイドがいる。父親と母親と思わしき人影は見えないがとりあえず今は時間が過ぎるのを待つ事にした。
三時間くらい待っていると、自分の母親らしき人が、こちらにやってくる。
母親らしき人は俺を抱えながら子守唄みたいなもの歌ってくれた。なんて言っているかは全くもってわからない。
ただ、この声を聴くと癒され、だんだんと眠たくなってくる。それに人の体温は暖かくて優しさを感じる。
前世の小さい頃だが、母親によくこうやって抱きついて甘えていた自分を思い出す。きっと母さんも父さんも俺が死んだ事に悲しんでいるだろう。
いくら俺が平凡だって言っても、両親からしたら自分達の大切な息子だ。それなのに死んだ事は悪いと思っている。
最後にもう一回くらい、母さんのご飯を食べてみたかった。父さんと話がしたかった。友達とゲームや遊びをもっとしておけば良かったと、せっかく異世界転生出来たのに今更後悔してしまう。
悔やんでも悔やみきれない。さっきまでは異世界転生最高とか思っていたがやっぱりまだ俺は前世にやり残した事が沢山あったんだ。
だが打ち出した銃弾は戻って来ない。それと一緒で死んだ人間は前世には戻れない。今は後悔を少なく生きる事を目標として生きて行こう。
俺はそう決意し、今の母親の腕の中で深い眠りについた。