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研修。




 さて早速魔術省でのインターンが始まった。

 研修生たちは魔術省の会議室に集められ、様々な説明などを受ける。


 私は大人しく座っていたが、ん~…なんだか視線が頬に突き刺さる。

 横目で視線の主を確認すれば、対角に座っていたヒロインのカトリーヌだった。射殺しそうな迫力で、めっちゃ私を睨んでる。


 えぇ〜、なんで?

 ストーリー通りにいじわるしてないし、話したことないし、そもそもアレックスと婚約してないから障害にはならないはずでしょ?


 なんだかなぁと思いつつ、睨み返すのもバカバカしいので無表情キープ。

 そのカトリーヌの隣でアレックス王子もこっちをガン見してる?

 アレックスは睨んでいると言うより、目を見張って凝視しているという感じかな。

 やだ、もしかして寝癖とか朝食のパンくずが口にくっついたままとか?

 でも髪はコリンヌが動きやすいようにと頭のてっぺんでお団子にしてくれたし、出掛けに全身チェックしてもらったんだけど…。

 内心首を傾げていると、十分ほどの休憩になった。

 その瞬間パッと顔を上げて、アレックスとカトリーヌを見る。


「う…」


 アレックスはひるんだように顔を赤らめ、カトリーヌは両手で顔を覆った。


「あの…なんでしょう?」

「いや、うん、研修生のユニフォームが珍しくてな」

「あぁ、そう言えば…」


 貸与されたユニフォームは前世で言うセーラー服のような襟とスカーフ。それに膝下スカートとレギンスにくるぶしまでのブーツ。その上にハーフコート丈のローブを身につけている。

 制服以外ではパンツルックばかりなので、見慣れないのだろう。

 視線の理由に納得し、私が頷くとアレックスが虚空に向かって、ぶつぶつつぶやいていた。


 こっちからはよく聞き取れないけど、隣でアレックスの腰巾着エイベルが「わかります、確かにグッときます!」なんて言ってる。

 カトリーヌは顔を覆っていた手を少しずらし、指の隙間からまたこっちを睨んでいた。

 なんだか怒ってる?

 何か誤解でもあるのかなぁ。

 極力ストーリーに絡まないし、邪魔もしないから、できれば見逃してほしい。

 

 なんだか疲れる休憩が終わり、次は実技に入った。


「今日は君たちに簡単なテストをしてもらおう。二人一組になってくれ」


 教官の言葉に私は「あ、私ハブだ」と瞬間的に思う。

 ここにいるのは私とカトリーヌと、他七人で合計九人。完全に私があぶれるパターン。


 そういえば前世もよくあぶれる立場だったなぁと懐かしく思いながら口を開かず、大人しく待つ。

 もうしばらくしたら「先生! グレイスが余ってます!」と言われ、「お、じゃあ先生と組むか!」というお約束の流れになるだろう。


 それを待っていたら、アレックスが駆け寄って来て私の右手を取った。


「グレイス、俺と……」

「グレイスさま! 私と組んで下さい!」

「えっ?」


 銀髪の美少女が私の左手を鬼気迫る顔で、がっちりと握っている。白目血走ってるけど、どうしたっ?


「お願いします! 足手まといにならないようにしますから」

「あ、えぇ…よろしくね?」


 勢いにおされて頷けば、カトリーヌがニヤリと笑った。

 え、なに? 何かたくらんでるの?


「おぉ、そこは女子同士か。他は…ん? 一人あぶれるな。じゃあ女子チームに入ってもらって、三人にしよう」


 教官の言葉に男子たちが一斉に立ち上がった。


「俺が」

「いや、俺がいく」

「お前ら、王子を差し置くな」

「身分とか今は塵っすよ、殿下」


 男子たちはカトリーヌのそばにいたいんだろう。生温かい気持ちで言い合いを観察。

 結局教官が用意したくじで決着し、アレックスが私たちと組むことになった。


「くそぉ…っ」

「王子なんて何でも持ってるんだから、ここは引いてくれよっ」

「甘い、実力主義のこの国で王子が恵まれてると思うなよ?」


 なんだか楽しそうに言い合いしてるのを教官が黙らせ、テストの説明をする。


「今から隣にある森に入って、一人一つ、宝物を持ち帰ってきてくれ」

「宝物とは?」

「それは言えない」

「形状や色などは?」

「それも言わない。森の中にあり、一目で宝と分かるはずだ。時間は一時間以内」


 なんとも不思議なテストだと首を傾げつつ、私たちは森へ向かう。


「装備は杖のみ。では開始!」


 教官の言葉で私たちは別々のルートから森に分け入った。




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