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第9鮫 シャチシャダイ

「兄上……あれってオルカ……」

「みなまで言うな、ここは後で説明することにしておいて、昨日の調整で増えた機能としておくんだシャチ」


 いや、落ち着け、マコトは自分のことをシャチだと言った。

 思い返せばセレデリナ・セレデーナも自分がサメであると叫んで変身していた気がする。

 つまり、あの義手を与えたことでシャチに変身する能力を得たという事だろう。

 サラムトロスはファンタジックで不思議溢れる世界だ、何が起きてもおかしくはない。

 なら、これで改めて正真正銘シャチ3匹による戦いが出来る。

 それなら、豚ヘビ如き恐れるモノではないシャチ!


「マコトォ、俺達はサポートに回るから、メインで殴るのはお前の役目シャチ!」

「了解しました。それと、聞いておきたいのですが、視界に4分20秒から始まるカウンドダウンが見えるのはこの姿でいられる制限時間ということですね?」


 まずい、それは分からないシャチ!

 もうここからはアドリブだけで対応するのが最適解だろう!


「YESシャチ!」

「そういうことオルカ!」

「了解、やってやりましょう!」


 その一言と共に、マコトは敵へ向かって飛び蹴りの姿勢で突撃した。

 そこで加えて、


「ガルルルルゥゥゥ! セカンド・アンペアストライク!」


 

 自身の体を電流で覆い、触れた敵を感電させる魔法を唱えた。

 ……姿が変わってから言動が野生化してないかシャチ!?

 とはいえ、これにより、敵は迂闊に物理攻撃を仕掛けられないだろう。


「その程度、お見通しだクソ毒使いィ!」


 だが、ボルケーノ・スネークは口から火炎放射器の要領で火を吹き抱し、マコトどころか部屋全体を火の海にしてしまう。

 そんな攻撃、こっちも溜まったものじゃない。


「熱いシャチイイイイイイ!!!!!」

「兄上、何か、何か変身してくれオルカァ!」


 一方、マコトはというと……無傷だ。攻撃の動作すら止めていない。

 いくらか体の一部が溶けているようにも見えるが、恐らく全身が鉄になったことで苦痛を感じないのだろう

 そうなれば当然、蹴りがボルケーノ・スネークに直撃する。


『キシャー!!!!!』


 物理的なダメージに加えて、全身に電流が走り大きく痺れている。

 この程度で倒れるとは思えないが、いい出だしだ。


「これがシャチになった気分、何だか爽快だ! 地上にいるのに海を泳いでいるようです」


 なら次は俺達の番シャチ。

 まずは、魔獣遺伝子注入銃を取り出し、サンドマンの遺伝子をセットした。

 熱い砂漠の大地に生きる巨人は、大きな炎耐性を持ち正しく有効打だ。

 そして、首筋への注射が完了すると、俺の姿は大きく変わる。

 体にして3mを超える魚!? いや違う、しなやかでツルツルした肌! 白と黒の模様になっている美しきボディ! 鋭き歯! そう、これこそ哺乳類、それも最強のシャチそのものだ!

 しかし、その肉体を構成するのは……砂!

 そう、これは砂のサメ、それこそが……!


「魔獣シャチ6号"熱鯱ねっしゃち"だシャチ!」


 鯱二郎が上に乗り、準備は完了。

 砂であるからこそ、地面で体を一旦潰し体の上半分だけで移動できるそのシャチは、正しく地を泳ぐシャチだ!

 なら、次にやることは単純明快。ボルケーノ・スネークが再びマコトに行った火炎噴射を掻い潜りながら腹元を飛び上がり、相手の首を思いっきり噛むのだ!


『キシャー!?!?』


 この程度で悶えるとは、弱いヘビシャチ。

 なら、あとはこの言葉をマコトに送れば良いだろう。


「こいつは俺達に任せて、豚ヘビを倒すんだシャチ!」

「そういうことオルカ!」

「分かりました。また逃げられたりでもしたら村の人達が危ないですからね」


 その後、痛みに悶えるボルケーノ・スネークを避けながらマコトは豚ヘビの元へと走った。

 そうなれば、後は首を噛みちぎるだけシャチ。


『キシャシャシャシャー!』


 だがその時、ボルケーノ・スネークは凄まじい勢いでジタバタと暴れ始めた。

 とにかく首を左右交互に回転させ、振りほどくつもりのようだ。

 がっちり可動部を拘束して噛み付いたはずだが、普通のヘビとは身体構造が違うということか。

 これにより、完全に振りほどかれて近くの壁へと叩きつけられてしまった。


「イッデェオルカ!」


 体が砂だと単純な物理攻撃に対して痛みを感じないのだが、あくまで鯱人オルカマンでしかない鯱二郎はこういう場で不憫だ。

 そして、シャチを振り払ったボルケーノ・スネークは大きく叫びを上げる


『キシャーーーー!!!』


 すると、体を奔る赤い線が全て発光し……体全体が炎を纏った。

 正しく、炎そのものがヘビの形をしているようだ!


『キシャー!』


 そこから追撃で吐く火球は、人間を一撃で消滅させるであろうと予測される高熱にして巨大なモノ。

 鯱人オルカマンはあくまで水陸両用であることをメインにしており、熱に弱い。故に、これを鯱二郎に喰らわせる訳には行かないシャチ。


「あ、兄上!?」


 砂の体を変質させ、俺は鯱二郎を覆う砂で出来た球体型のバリア空間になった。

 こうすれば、炎なんてへっちゃらシャチ。


「いや、敵の攻撃は終わっていないオルカ!」


 だが、追撃とばかりにその巨体のしっぽで叩かれると、バリアは一瞬にして粉砕。

 そのまま鯱二郎も炎の塊に物理的な痛みと炎による燃焼が入り交じった薙ぎ払いが直撃してしまう。


「オルカァ!」


 何とか耐えているようだが、悶絶する弟は見るに堪えない。

 しかも、俺は俺で実際のところ魔獣の遺伝子による変身は不安定であり、大きなダメージを受けた事でたちまち変身が解除されてしまう。


「イカン、防御に回れないシャチはこの場では不利シャチ」


 急いで俺は魔獣遺伝子注入銃に次の遺伝子を注入。

 これは、大きな盾を構え攻撃を仕掛ける人間の手鼻をくじくタンク型の魔獣"シールド・ガードナー"の遺伝子。

 それを注入した俺の右腕には……シャチをデフォルメしたデカールが中央に貼られた半径1mはある丸い盾が装備された!


「魔獣シャチ7号"キャプテン・シャチリカ"シャチ!」


 直後、しっぽによる薙ぎ払う攻撃がまた飛んでくるがそれを受け止めることに成功。


「ナイスガードオルカ!」


 更に、隠された機能によって盾をダイヤモンドカッターの要領で高速回転させ、受け止めた尻尾をそのまま2mほどバッサリ切断してやった!


「一芸隠さずして何がシャチだシャチ!」


 よく見れば、縦の持つ俺の手に鯱二郎は自分の左手を重ねていた。

 やはりお前は、自身の〈百年の担い手ハンドレッド・マスター〉としての強みを最後まで忘れない最高の弟だオルカ。


「ナイスフォローだ鯱二郎シャチ」

「これぐらいは御鯱の子(おしゃちのこ)さいさいオルカ」


 攻撃に転用したのが原因か、盾は一瞬でボロボロと崩れ去った。

 なら、次はこの"犬使い"の遺伝子を注入しよう。

 それによって、俺はシャチの骸型ヘルメット&骨を削り取って作った双剣へと変身。即座に鯱二郎の装備アイテムとなった。

 加えて、ホワイト・シャチオットの馬シャチ部分をゴールデンレトリバーサイズに縮小した通称"犬シャチ"が2匹配置。こいつは骸型ヘルメットで脳波コントロールが可能な優れものの遠隔攻撃兵器だ。


「魔獣シャチ9号"鯱頭ノ悪魔(しゃちとうのあくま)"シャチ!」

「オールカァ!」


 それによって、鯱二郎は犬シャチを陽動役として突撃させながら飛び上がり2本の剣をクロスさせる。


『キシャ、キシャ!』


 後は、犬シャチの駆除に集中し地面に向かって火を吹いているボルケーノ・スネークに斬撃をお見舞するだけだ!


「これでトドメシャチ!」


 鯱二郎は肉薄した瞬間にクロスした2本の剣を振り下ろした。

 この一撃は、敵の首を斬り裂く!


『キシャ!』

「そ、そんなのありかオルカ!?」


 ――はずだった。

 なんと、攻撃の瞬間、トカゲの尻尾切りの要領で全身を脱皮させ攻撃を受け流したのだ!


『キシャー!』


 更には、隙を見せず火球を放って追撃。

 それには鯱二郎も見事に直撃してしまった! 剣と骸型ヘルメットと化している俺も同様!


「クギャアアアアアアシャチィィィィ!」

「死ぬ! 死んでしまうオルカァ!」


 兄弟揃って悶えているが、明らかに油断していた相手が全力を出しても厳しい戦力差を持っていたのだから仕方がないだろう。言い訳でしかないなシャチ!

 敵はそれこそ攻防一体で、押し切って勝つ以外に勝算を見いだせない。


「くっ、これはやりたくなかったシャチ」


 ならば、奥の手を使うだけのこと!

 実はマコトの腕を改造するついでに、魔獣遺伝子注入銃に改造を加えた。

 それは、2つの遺伝子を同時に注入する事でシャチ・魔獣A・魔獣Bの3体合体を果たすスーパー兵器。


「兄上の覚悟、しかと受け止めたシャチ!」


 ぶっつけ本番で命を賭けた実験など科学者としてあまり褒められたものでは無いかもしれない。

 そして、注入する1つ目の遺伝子は天使の羽根を生やす鎧だが、それは聖職者を油断させる罠でしかない呪いの装備魔獣"エンジェル・アーマー"!

 もう1つの遺伝子は、断頭台の形をしており敵の首を拘束して切断する"要塞ギロチン"!


「兄上、本当にそれをやるオルカね」

「神が賽を振るのであれば、その目を歪ませるのがシャチだシャチ! 博打上等シャチ!」


 2つをシャチに注入し、完成するは三重鯱オルカ・トリニティ


「か、体がぐちゃぐちゃしてきたシャチ!」

「兄上は自ら押し付けられる側になるだなんて……応援することしか出来ないオルカ」


 体全体がグチャグチャとスライムのように変質していくが、それと同時に周囲を囲む大発光が発生しボルケーノ・スネークの視界を奪うことに成功。変身時間は確保出来た。

 白く発光するスライムは、最終的に鯱二郎の体にまとわりつき、姿を象っていくとそのシャチ魔獣は完成する!


「こ、これはァオルカァ!」


 一見すれば銀のフルプレートアーマーだが、背中には大きな天使の羽根が生えている! 鯱人オルカマンである鯱二郎がそれを纏えば、鎧を着込んだシャチの天使だ!

 加えて、手にはチェーンで紡がれ先端にギロチンの刃が紡がれた鎖鎌ならぬ鎖ギロチンが装備!

 それを縦横無尽に振り回す鯱二郎こそは……!


「魔獣シャチ10号"エンジェル・シャチル・オルカソン"! これこそ究極のシャチ!」


 なんと、このシャチはギロチンを振り回すフランスの力を持っており、フランスオルカなのだ!

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