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第81鮫 巌流鮫の戦い

 そこで、タイラントの大剣型青蟹刀の強化アタッチメントとして毛ガニ型の重力操作軽量化装置、"軽量蟹(けいりょうか)"となりそちらのサポートへ入った。

 この状態になった武器は紙のように軽く振り回すことが可能で、その上本来の重量以上に力を込めて振り回す独自の質量保存の法則で動く状態となるのだ。


『爆発するのは自由自在〜♪』

「ボス、強化感謝しますぜ!」


 タイラントは3mの背を持つ巨人種で(それでも巨人種としては低身長)、貧困が産んだ悲劇か子捨て山に放棄されていた赤ん坊だった。

 その頃は〈ビーストマーダー〉として活動していたので、仕事ととしてそのような土地に向かう機会もあり、少し気が乗って育ててみる事にした。それが出会いだ。

 以後は半場親子に近い関係で、主従関係と並行して奇妙な絆がある。

 まあ、少し自立するようになってからは育児放棄同然で命懸けの仕事を任せているというのも如何なモノとは思うが、お互いに不満がない以上はそういう関係もこの世に存在するということだ。


「『我が魔の力よ、担われし武具に更なる力を!』俺も忘れるなよ、セカンド・フレイムエンチャント!」


 そして、アタッチメントだけでなくサンタナが魔法を唱えた。

 大剣型青蟹刀は豪炎を纏い炎のカニ爪と化し、タイラントの準備は完了したのだ。


「三を束ねて一とせし斬撃ザンゲキ、トリニティ・キャンサーブレイカー!」


 タイラントは大きくジャンプしながら青蟹刀を振り下ろす。

 その斬撃は縦に大きく飛び、炎が地を砕く一撃だ。


「ひのきのさめ、戻どるんじゃ」


 ――いや、そのはずだった。

 刹那、離れた場所でスペイカーを咥え続けていたひのきのさめが急バックをして鮫沢の目の前に戻ると斬撃を全て受け止め爆散していた。


「いやぁ危なかったぞい、即席でそのような攻撃を防げるサメは造れんからのう」

「し、しぶとすぎデース」

「そういうお前さんらは仲間のことは言う程気にかけてはおらんようじゃな」


 煙が立ち込めるが、去った先では鮫沢がピンピンしており……その足元でスペイカーが倒れていた。


「てめぇ!」


 タイラントは仲間を利用された事で怒りを顕にする。

 そして、激情に身を任せ、地上に着地して次の攻撃へ移ろうと試みるが……。


「異世界サメ8号"サメ・ボルグ"!」


 どこからか刃がサメの頭部の槍を取り出して投擲。

 見事にタイラントの顔にクリーンヒットした。


「な……」

「ふぅ、念の為に廃集落から槍を拝借して半分に折った状態で携帯しておいたのじゃよ。これでワイヤーも解けた、自由に動けるぞい」

「タイラントー!」

「石頭で何とか耐えてますが、噛み付かれたまま出血多量で死にかねマセン、戦線続行は諦めまショー……」


 結果、一瞬でスペイカーとタイラントがリタイアしてしまった。

 いくら何でも呆気なさすぎる。

 どんどんサメを許せなくなってきた。

 ただ、現状は完全な消耗戦ではあるが、ここまで派手にやっている分鮫沢の〈シャークゲージ〉は制限時間内すら持たなそうな様子ではある。悪いことだけではない。

 具体的には、ひのきのさめのような大型のサメは造れてもあと1匹が限度。

 つまり、消耗戦VS消耗戦、相互に同一条件で戦ってると考えればいい勝負だ。


「よそ見はよくないわよ」


 それに、拘束されたレールの横を回ってクレハがリーフ・シャークネークを伐採していた。

 流れから考え、彼女のアタッチメントに変形しよう。


「距離は取られているけど、やり方はいくらでもあるかな」

「同感ね。お、気付けばハンチャン様が私の羽根になっていたわ!」


 ロケットタラバガニの応用蟹、ウイングタラバガニ。

 これは、対象の背中に張り付きながら脚先からブーストを細かく吹かしで移動をサポートするモノだ。


「このスピード感、たまらないわ」


 彼女は放浪の剣士で、鎖国前に国から離れていた東の国出身者達の末裔のヒト種だ。

 元々二刀流の達人として〈ビーストマーダー〉級に強く、道場荒らしの常連。

 忠誠心があるというよりは、ハンチャンというアイドルの熱心なファンだ。

 今回の戦闘では落ち着いているが、公私混同はしない分オフで参加するライブ中は誰よりも声が大きい。


「僕は援護射撃に入ろうかなっと!」


 なお、レールは手元から自前のクナイを取り出して投擲、近付きすぎるのも悪手な相手である以上は丁度いい援護だ。


「『今こそ天を歪める我が魔の力よ、雷雲を呼べ!』セカンド・バットウェザー! 重ねて唱える、我流創作魔法"デンプシーサンダーボルト"! 準備完了、あとはみんなで好きなだけ暴れてくれ」


 更に、サンタナは後ろでじっくり時間をかけて魔法を唱えていたようだ。

 それにより、一気に景色が曇り空へと変化した。

 大雨が降り、無数の雷が鮫沢に向かって落ちる天候操作魔法の我流応用となれば流石に耐えられまい。


「二刀流の剣士……つまり敵は鯱本武鯱しゃちもと むしゃち! ならばこのサメで立ち向かうぞい」

「勝手に意味のわからない属性を押し付けるな!」


 この状況に対し、どこからが持ち運んでいた直剣を取り出すと、刃が2mはある刀……いわゆる大太刀へと変質した。

 水色の布で縫われた柄! 丸い鍔は2匹のサメが陰陽のマークになっている彫刻的デザイン! 刃の側面からは双方に胸ヒレ! 峰からは背ビレが大きく生える! これぞかの剣豪、鮫々木小判鮫郎さめめき こばんざめろうの刀!


「異世界サメ45号"物干し鮫"、これは悪天候での漁を手伝う中で生み出したアドリブの産物」

「鎧のせいで持っている姿が様になっているのがムカつくわね」


 しかも、地面が逆流するように盛り上がり、刃全体を覆うサメの形状として張り付いた。

 まさか、本当にひのきのさめ相当の大物サメをぶつけてくるのか!?


「異世界サメ40号"ガイアシャーク"、農業用の試作品で造ったのがここに来ていいサポートになりそうじゃわい」

「間に合った!」


 そして、クレハの持つ2本の刃が鮫沢の元へ振るわれた。

 カンッ! と鮫沢は物干し鮫で弾いて受け流したが、所詮は技量を武器で誤魔化している素人筋、追い詰めていくうちに押し勝てるはずだ。


「そろそろ雷が落ちる、喰らえ!」


 更に、サンタナの魔法の準備が整った。

 この魔法は周囲一帯を悪天候にし、対象に幾度と落雷を落とす魔法、発動前の詠唱が長く、発動後も本領発揮までいくらか時間がかかるが敵軍殲滅にはピッタリの強力な必殺だ。


「悪天候の時点でその手は読んでおったわ!」


 鮫沢は1歩下がってから飛び上がり、土を纏った物干し鮫を天へと掲げる。

 それと同時に彼の元へ大きな雷が落ちるが……サメ土がその全てを受けとめ、全身を雷電が覆っていくのだ!


「異世界サメ46号"雷電サメ"……土は古き時代から雷を受け止めてきた。つまり、土であり刀のサメは雷をコントロールするのに最適なのじゃよ」

「何がどうなったらそうなるのよ!?」


 そう言いながらクレハも殺られる前に殺るの精神で鮫沢に向かって飛び上がった。

 援護するようにレールもクナイを投擲する。


「ふはは、その程度造作もないぞい」

 

 対し、もはや落雷そのものを制御しているのか落雷のひとつが投擲したクナイを撃ち落とす。

 隙の無い防御手段で凌いだ彼は何かの技の構えをとった。


「予想通り、剣の道じゃあんたは素人みたいね」


 しかし、クレハがウイングタラバガニの加速力で肉薄。

 クナイを焼き払おうと意識を向けたことそのものが僅かながらの隙を産んだのだ!

 そして、振るわれる2本の青蟹刀が鮫沢を襲う!

 刃は一瞬にして全身を斬り刻み、鎧全体にヒビが入った!


「これで一太刀、あとは次で!」

「まだやられはせん、鮫秘剣さめひけん"鯱返しゃちがえし"じゃ!」

 

 抜刀術のように下ろした刀を振り上げ、雷撃がサメの形状と化してクレハの全身を飲み込み感電させる!


『時には逃げることもある〜♪』


 なお、ウイングタラバガニは直撃してショートする訳にもいかず、反撃を予期した時点で緊急脱出して地面へ不時着した。


「けど、十分追い詰めたわ、あとは任せた!」


 黒焦げのまま地へ落ちるクレハを上手くキャッチしたが、やはり既に感電済み。

 しかも、そのまま力尽きたのか失神してしまった、一旦地面で寝かせておくしかないだろう。

 かくになる上は、少し非効率的で避けていたサンタナのアタッチメントになるしかあるまい。

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