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第35鮫 呪われたサメの魚介石

9kv8xiyi

 わしはまず、サメを安定して造るためにも酔い覚ましの薬をごくっと飲んだ。

 瓶に入った100mlの白い液体で、これが苦くまずいんじゃが酒を飲んだ贖罪と味と割り切るようにしておる。

 飲み終わると、工具箱から金槌かなずちを取り出し、テーブル席の彼らにこう話しかけたのじゃ。


「お前さんらや、喧嘩はやめておくのじゃ。それよりサメに興味はありゃせんか?」

「ああん? こちとら信頼に関わるところでやらかされてんだ、サメだかサルだか知らねぇが興味ねぇよ」

「それにこのクワレマセンは犯罪者だぞ、文句を言われる筋合いもないぜ」


 まずは話し合いで解決しようと考えたものの、そういうことにはならなそうで困るわい。

 サメで争いのない世界を生み出したかったんじゃがのう、仕方がない。

 それに、機嫌の悪い時の彩華よりは怖くない。手早くとっちめてやるのが一番じゃな。 

 そうして勝負をすると決めたわしは、金槌に対して手元のグラスにほんのり残り氷で薄まったウイスキーをぶっかけた後、〈シャークゲージ〉を注入した。

 しかし、すぐに姿が変わることは無い。これは少し特殊なサメで、見た目だけなら特に普通の金槌と変わらんのじゃ。

 

「そんな金槌に酒を注いだ所で何になるんだよ」

「ギャハハ、このジジイ本気かよ!」


 ひとまず、わしを煽ってくる奴の中でもサンマはサメとサルを勘違いしたのが気に入らん、真っ先に叩いておくべきじゃろう。

 そう思い、テーブルに手をつくサンマのてのひらに金槌を振るった。

 ガンッ! と痛そうな音が響いておるな。


「いでぇ!」


 もちろん、わしは鈍器で理不尽に人を殴る暴力狂人ではないのでこの行為には続きがある。

 そう、金槌を中心に、小さな爆発が起きたのじゃ!

 酒をガソリン代わりにして生まれる34cmのコバンザメの形をしたその爆発! まさしく爆裂するサメの金槌と言えよう!


「これがわしオリジナルサメ魔法、異世界サメ26号"爆裂鮫槌ばくれつさめずち"じゃ!」 

「このジジイ、とんでもねぇ魔法を使いやがる!?」


 ちなみに、最近はこちらの事情を知らぬサラムトロス人の前で〈シャークゲージ〉によるサメ製造を行う場合、全部わしオリジナルの固有魔法と言い張ることにしたんじゃぞい。

 例のセカンドだのサードだののランクは必ずしもどの魔法にもあるわけではなく、ランクのない固有魔法とやらがあるみたいでその設定を通しておる。


「げぇ!? 机が燃えてる!」

「と、とりあえず突伏したままのクワレマセンを一旦引き離さないと!」

「あっつ!? あっつ!?」

「「「手遅れだー!」」」


 おっと、間違って絡まれているマグロまで巻き込んでしもうたな。喧嘩両成敗と言われておるから多少は問題ないじゃろう。

 強いて言えば、彼らはある意味では同業者な仲間同士だったという事が今はっきりわかって気まずくなってきた。じゃが、多少の暴力は店主と話をするための犠牲として割り切るぞい。


「アッカシヤーの腕が燃えちまってる、水でもなんでもぶっかけろ! このジジイ、いわゆるホンモノだ!」

「ほれ、喧嘩はやめんか」

「「「はい、やめます!」」」

「サメを崇めんか」

「「「お断りします!」」」


 チッ、話の通じない奴らが。

 とはいえ、これで大人しくなったようじゃな。

 ……と、思った矢先、さっきから無言だったエビ魚人が口を開きだしたのじゃ。


「何がどうあれ、うちのメンツが傷つけられた事を黙って見過ごす訳には行かねぇ。その喧嘩、俺だけでも買わせてもらうぜ」


 おお、彼はやる気満々のようじゃ。それなら彼らに他の異世界サメ工具シリーズもお見せできそうじゃわい。

 それに、何というかワイルドな渋い声で、武人のような雰囲気も出ているこいつとサメを戦わせるのは楽しそうじゃ。

 早速わしは、工具箱からノコギリを2本と植木バサミを取り出し、〈シャークゲージ〉を込めた。

 すると3つの工具は一つの塊のように合体していき……。

 その姿は大きなサメの顔の形をしたハサミ! それもただの重なる2枚の刃ではなく歯のようにギザギザとしている! このサメこそはサメ工房が生んだ名作!


「異世界サメ27号"SA・ME・BA・SA・MI"じゃ!」

「ほう、ハサミが自慢の俺相手にその武器を選ぶとは面白い」


 わしは、サメを造ってすぐに動き出したのじゃが、180cmはあるエビ魚人はその体格からは考えられない速度でわしの眼前へと移動し殴りかかってきた。

 もちろん、そんな攻撃をもろに食らうわしではない。

 ハサミをそれぞれ剣になるような形で2本に()()させ、交差状態の盾にして防いだのじゃ。

 この変形機構こそが、サメ工房の真骨頂と言える。


「剣の腕も達者のようで、ますます気に入った」

「それなら、次はわしの番じゃ!」


 ハサミを2本同時に掲げ、そのまま勢いづけて振り下ろす必殺のシャークロスラッシュをお見舞いしたぞい。


「だが、経験は俺のほうが豊富なようだ」

「なに!?」


 じゃが、エビ特有の2本のハサミでわしの刃は両方とも綺麗に掴まれてしまった。

 本当に武人のようでワクワクしてきたのう。


「残念じゃったな、このサメはそれだけが武器ではないんじゃよ!」


 エビ魚人が反撃するために手を離した直後、わしは2本の刃を()()させた。

 これで最初の姿に戻ったが、手数が減る代わりに武器に加えられる力が増す。


「マズイ、力押しか!」


 そして、合体させたままの勢いで右腕を狙いバッサリ挟んで切断したのじゃ!


「ぐわぁあああああああああああ!!!!」

「イーヒヒヒ、これがサメの力じゃ、分かったかのう! サメの餌食になりたくないんじゃったらこの店から出ていくんじゃな!」

「こいつ、本当に狂ってやがる!」


 何を言っておる、サラムトロスの医療技術というか魔法の力は腕の溶接どころか文字通り消えた部位を再生させることすら容易なのじゃ。

 法律の専門家からこの程度やっても自己防衛として許されるとひっそり耳打ちされた。故に、これはただの賢い戦術じゃぞい!

 なので、ハサミを天井に向けてジャキジャキと斬る動作をすることで更に威圧感を与えておこう。


「……それぐらいでいいんじゃないかい? こいつらも店での喧嘩は金輪際よしてくれるだろうさ」


 すると、店主自らが仲裁に入ってきた。

 これだけの乱闘をしたのなら、今口出しするのが効果的だと動いたのじゃろう。


「しょうがねぇ。クワレマセン共々ここから出ていくぞ!」


 実際、全員逃げ出していったので万々歳じゃわい。

 それに、ここまでやれば彼らもサメの凄さを理解してくれたじゃろう。


「あんた、本当に強いねぇ」

「わしは強力な鮫使いストロング・シャークマスターじゃからな。お前さんもサメの魅力を理解してくれたのう?」

「う、うーん、それはさっぱり」


 こうして、ゴロツキ共をとっちめる事に成功したのじゃ。

 彼女の頼み事も片付けた、次は怪物についての情報を質疑応答していくとしようかのう。

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