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サメ・ファンタジー~混沌異世界サメVS混沌生物! 建築物も、クトゥルフも、ペンライトも、彼の前では全てサメになる!~  作者: リリーキッチン
第三章三節 アリゲーター・オブ・ザ・カジノ〜イン・ザ・シャーク〜
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第106鮫 イレギュラーサメファイト

 よりにもよって彼女まで〈中間点イレギュラー〉だったとは、私自身の謎に迫るヒントが増えてきている一方、敵に回すとなると骨が折れる。

 噂には聞いている、1対1の勝負としてはあのムーン・ルーンを倒したと言える功績に加え、優雅にして華麗な武人の2つ名を持つ女。

 それが今から誰にも見せたことの無いであろう本気で襲いかかってくるのだ、これまでの敵の中でも最強と見ていい。


「『我が魔の力よ、大いなる海を生み出し大地を浸せ!』 サード・ウォーターフィールド」


 まずい、変身に動揺したせいでサード級の魔法の詠唱を許してしまった。

 鯱三郎も似たような緊張が走ったのか、今やっと状況を飲み込めている様子。

 お互いに制限時間のある能力で己を強化しているのだ、次に同じようなことがあれば、死は免れない。


「ですが助かりました、彼女が仕掛けるのは水中戦のようですよ」

「ええ、そうね」


 しかし、幸いにも敵の唱えた魔法は、地面を大きなプールに変質させるウォーターフィールドだった。

 噂ではその水を利用して全範囲を狙った氷結魔法攻撃を行うようだが、それを踏まえた上でもサメにシャチという水中戦なら誰にも負けないペアなのが私達だ。


「セカンド・アイスロック! ですわ」


 早速攻撃を仕掛けてきた。

 私のいた位置を軸に半径3mを氷結させる魔法。

 その魔法を唱える一言目が聞こえた時点で2人合わせて水中を蹴り、緊急回避を行った。


「あなた、中々やるようね」

「昔、医者を目指していた頃に対魔法使い戦のイロハを教えこまれてたんですよ」


 初めて手を組む割には息が合っている。

 ある意味同族なのがこういう所で相性を産むとは。


「あらあら、ボディがお留守ですこと」


 だが、その分油断も激しかった。

 今の回避した一瞬で、彼女は私に肉薄していたのだ。

 そこから繰り出されるボディブローは腹に思い切り炸裂し、一瞬の身動きを奪われてしまった。

 痛みも激しい、これが普通の攻撃と言うなら必殺の一撃をモロに喰らえば即死は免れないだろう。


わたくし、1対複数の戦いにも慣れていましてよ。名を偽ってギャング狩りをした賜物ですわ。あとはトドメを刺すだけです」


 しかも、体を動かす意識が戻って来たところで、長い口を大きく開けていた。

 ワニの咬合力がサメに匹敵するのは見て取れ、食らった時の負傷は後に響くレベルなのは安易に予想がつく。

 はっきり言って避けられない、なんという手際のいい動きだ!?


「サメを囮に使うのはシャチらしい戦術です。ポイズントリガー・"エレキスズラン"! 重ねてセカンド・ライトニングフィスト!」


 恐怖を感じたその一瞬、ルーイダの頭部に鯱三郎の拳が直撃していた。

 腕に弾丸を装填する必要のある時間を、私に攻撃が炸裂する寸前から活用して確保したとでも言うのか。

 彼も中々に侮れない。悔しいが、ここは素直に囮だったことにして己の立場を受け入れよう。


「水中での電撃魔法は、広範囲に拡大します。つまり威力は倍ですよ!」

「ぎゃあああああああああですわああああああああ!!!!」


 この一撃で倒れるような奴ではないと分かっているが、見事に炸裂してくれた。


「はぁ、はぁ、この痺れはエレキスズランを濃縮したものも混ざってますわね」


 よし、ここで出来た怯みによる隙を逃すつもりは無い。


「サード・アイレイ!」


 追撃に、アイからドラゴンをも一撃で覆い尽くし葬り去る大きな光の線を放った。


「これで、トドメだ!」


 この魔法は何がどうあれ一撃必殺だ。

 勝ちを確信してしまうのも無理はないだろう。


「甘い、セルフアイスブロック! ですわ」


 瞬間、被弾の寸前にルーイダ自身を中心に水中が氷結し、彼女が中に入った大きな氷塊が生み出された。

 加えて、巻き込まれる訳にもいかないので、鯱三郎は追撃のチャンスを逃して後ろへ下がっている。

 そして、その氷塊にサード・アイレイが激突するとドロドロと溶けていくが、光の線が消えると同時に完全な溶解が成されると、彼女は氷塊から脱出した状態になった。

 まさか、自身を氷結させて魔法を防ぐ創作魔法か!?


「工夫に工夫を重ねてこそ魔法使い。あなたの使い方は二流、いえ、良くて三流ですわね」

「そんなことを言われてもねぇ!」


 余裕を持ちながら煽る、戦闘経験の多さも含めて、彼女の強さはあまりにも桁外れだ。

 だけど、そう言いながら相手にヒントも与えている。

 彼女はただ戦いたいのではない、相手の全力を引き出させて拳を交えたいのだ。


「じゃあ、私の工夫を見せてやるわ。サード・アイレイ! 重ねて、オーバーレイ・フリント!」


 私は自身の右腕に鋭く生える曲剣状のヒレに魔法を放ち、エネルギーを1箇所に収束させた。

 思えば、これは来るべきフレデリカとの再選で勝つために欠かせない勝負なのかもしれない。

 何せ、相手は王クラスの強さを持つ武人。もはや王位継承は約束されたも当然の力を持っている。

 それを倒すことが出来れば、私は()()()()()に生まれ変わることが出来るだろう。


「サポートします。もう一度、ポイズントリガー・エレキスズラン! 重ねて、セカンド・サンダーシュート!」


 私の動きを見た鯱三郎は、少し距離を離したルーイダに向けて拳を振るうとそこから高質量の電撃が圧縮された拳を射出した。本来はただ電撃を飛ばす魔法だが、あの右腕は魔法の常識を軽く逸脱するモノと言える。


「この姿は基礎的な身体能力の恒常と咬合力の強化以外はあまりありません。ですがそれを生かすのが、お母様との約束!」


 挟み撃ちで飛びかかる2つの攻撃に対して、ルーイダは一気に下へと潜ることで回避行動を取った。

 恐らくオーバーレイ・フリントは物理的に氷を砕いて刃を通しかねないと判断し、先程と同じ手を使うのは避けたのだろう。

 だが、この技は1度や2度で終わらない。

 通常のサード・アイレイと違い、30秒は力が持続するからだ!


「このまま長期戦に持ち込んでも勝ち目がない相手なのはよく理解出来ましたわ、この手で行きましょう。『我が魔の力よ、己が肉体を氷結し、強靭なる肉体を授け給え』サード・アイスロックアーマー!」」


 その魔法で、彼女は全身を顔まで覆う氷の鎧で固めた。

 あれは徒手空拳全てに氷魔法の魔力が乗り、防御力も底上げされる魔法だ。

 避けて耐えてでは無い攻防一体の状態に持っていったと見える。

 移動の目的はサード級魔法の詠唱時間確保が目的だったか!

 それにしても妙にフレデリカと似た戦術をとってくるのは偶然という運命の女神のイタズラと割り切って向き合うべきなのだろう。

 だが、それらを踏まえた上でもこのまま私だけで押し切るのは厳しい。

 これを最後の一撃と考え、鯱三郎と手を合わせよう。


「どうやら大技を使うみたいよ、だったら、私達も本気の一撃をぶつけてやりましょう」

「でしたら、初撃をお任せします。ポイズントリガー・"ライトニングスコーピオン"」


 言っている間に、彼は腕に弾丸を装填し始めた。なら、その行動と発言を信じてやるべきだ。

 それに、目の前にルーイダが迫ってきている。


「決めてやるしかありませんわね、アミキナ流古武術・アメリカンブレイク!」

「マーシャルシャーク・潜航斬!」


 私は、ヒレ()を構えて水中を蹴り、敵へと向かって突撃した。

 同時にルーイダは頭突きの姿勢で突進。


「顔ごと斬ってやるからね、死んでも文句言わないでよ!」

「ここで死ぬようなわたくしではありませんわ!」


 2人のサメとワニは衝突する距離にまで近付いた。

 頭部を引き裂くヒレ()が振るわれる。

 だが……。


「これこそが真の狙いですわ!」


 彼女のとった行動は、ヒレ()を噛むという奇行であった!

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