貴族の次男に生まれたらいきなり旅に出させられた~陰キャな俺がダンジョン攻略!?~
第一作目
「アレン、お前旅に出ろ」
「は?」
麗らかな春の日差しが差し込むこのおんぼろ屋敷で俺の父は真面目な顔で突拍子もないことを言った。
聞き間違いかと思って一回ごくごくと水を飲んでからまた父の顔をみると残念なことに何も変わっていない。
「いやいや、ちょっと待ってよ、なんで俺が突然旅に出るって話になってんの!?可愛い子には旅をさせよってか!?無理だから!こんな物騒な世の中で無理無理!」
「アレン、父さんも母さんも苦渋の判断なんだ」
慌てて無理だとわめくが父の顔は変わらない。隣に座っている母もしくしくと泣いている。
え…これ…もう覆られないんですか、決定事項なんですか!?!?
「拒否権ないの!?屋敷から一歩出れば盗難、殺人が横行するこの国一治安が悪いこの地方を?このクソ陰キャで家族以外と目が合わせられない俺が?旅!?!?」
「自分で言ってて悲しくならないのか、、、」
俺はアレン・ルシファー。
曲がりなりにもこのレティア国の外れにあるこのポテチホーの当主の次男坊である。
この地域は外れのド田舎であり、治安がすこぶる悪い。そのせいかこの屋敷は破産寸前であった。
兄が首都に行って騎士として頑張ってくれていたが如何せん焼け石に水であった。
まあ貧乏なのは両親が詐欺に引っかかったり友人が困ってたらすぐに金を貸すってのも要因のひとつだけどな。
「そもそも、旅に出て何するんだよ。俺がこの家で出食費浮かせてもそんな程度の事でこの家は建て直せないだろ」
「お前は、ダンジョンってのを知ってるか?」
「ダンジョン~~?なんだよそれ」
ダンジョン。見知らぬ単語に思わず眉間にしわが寄る。
お人好しの両親の事だ。また騙されているのではないか。
「これはダンからの情報だ」
「へえ、兄さんが」
ダンとは俺の兄さんであり、家の為に過酷な騎士になってくれた人だ。
真面目で正義感があり、信用できる兄さんだ。
「まだ騎士にしか情報が回ってなく、来月には貴族に情報が送られるらしいんだが、この国の様々な場所でダンジョンってのが発生してるらしい」
「だからそのダンジョンってなんだよ」
「ダンジョンは最深部にお宝があるらしいんだ。その姿は様々で洞窟みたいなものから奇妙な建物であったり様々だそうだ」
「お宝ねえ…どうせうまい話にはからくりがあるんだろ?単にお宝を生み出すだけじゃ国王直属の部下にしか話さんだろ」
俺の言葉に父は苦虫を嚙み潰したような顔になった。
「ああ、そのお宝を取るのが大変らしいんだ。騎士団の一部が探索に行ったらしいんだが、半分以上帰ってきてない」
「うわあ…真っ黒じゃん」
「帰還した騎士によると、ダンジョンに入るとお宝を得るまで脱出できないうえに、お宝を取るまでに様々な試練があるそうなんだ。中には奇怪な動物を見たものもいるんだ。」
「それで?ダンジョンってのが危険ってのは分かったが、まさかそこに行けって言うわけないだろうな?」
「言う」
俺の言葉に間髪入れずに父は言い放った。
「騎士団でも半分しか生還しないんだろ!?底辺貴族の何も鍛錬していない俺が出来るわけないだろ!!!」
「苦渋の決断だと言ったろう…!国王は騎士団だけでなく、貴族にもダンジョン攻略を認めるらしい。"女性と当主、そして次期当主の長男を除いてだ"」
「それで俺にやれってか」
「国王は宝を取ったものには長期的な援助や報奨金を送るそうなんだ」
「そうなんだって言われても…」
父の真剣な顔にどんどん言葉が尻しぼみになっても俺は抵抗をあきらめなかった。
「お前はなんだかんだ昔から勘が鋭く、運動神経も悪いわけではない」
「そりゃあ、屋敷から一歩外に出ればアウトローな世界ですからね」
皮肉を返しつつもう一度父を睨む。
「アレン、、、すまない、不甲斐ない俺を許してくれ…」
「父さん…」
どれだけ詐欺られても、友人に裏切られても、闇金に追いかけられても、泣かなかった父が泣いていた。
どれだけ辛い判断だったんだろうか。
自分の今までの行いのせいで実の息子を死ぬかもしれない危険な場所に送り出さないといけないんだから。
「んんん、分かった。行くよ。行ってお宝をかっさらってやる!!!!」
父さんの気持ちに胸を打たれて思わず誓ってしまった。
そうしまったんだ。
「お、そうかそうか、荷物はまとめるからすぐ行ってくれ」
父は涙をすぐに止めてけろりとした顔で言った。
「てめえええええええええ!!このクソオヤジがああああ!!!」
実の息子にこんな酷い仕打ちができるならいつも騙されるなよ!!!
俺は怒りに顔をゆがませながら荷物を取って屋敷を出た…
不安しかないが無事にダンジョン攻略出来るのだろうか
続く!