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転移装置でホームに戻ってきた。
相変わらず明かり代わりの魔水晶が丁度いい加減で照らしてくれている。
転移装置のある大部屋を見渡すがメールをくれたシキ姉さんの姿はなかった。
「お嬢様、ルナ様お帰りなさいませ」
帰ってきた私に気づいてエミリーが声をかけてくれた。
「ただいま」「ただいまー」
「お嬢様、シキ様は外のテーブルの所にいらっしゃいます」
エミリーがそう言ってきたという事はシキ姉さんに頼まれていたのかも。
「ありがとう」
お礼を言うとお辞儀を返された。
その時、外から野菜を籠に入れた光葉さんが入ってきて近くまで来た。
「ユキさんとルナさんお帰りなさいー」
「ただいま」「ただいまー、こんな時間に野菜の収穫?」
「野菜がちょっと少なかったので取ってきたんですよー。シキさんの提案でー、外でバーベキューの予定ですけどお二人も食べますかー?」
「食べる!」「食べます」
「はーい、お二人追加を伝えてきますー。ベルさんもいればみんな揃ったのに残念ですー」
ルナと一緒に答えると光葉さんは笑顔でそう言った。
「ベル先輩、何かあったのかな?」
「お仕事の関係でー、やっておかないといけないことがあるとかー?」
私が気になって口にすると光葉さんが首を傾げながら聞いた事を教えてくれた。
「そうなんだ。お祭りの時はみんな集まれそうだって言ってたし、みんなで楽しめると良いね」
「はいー、楽しみですねー。あ、私は準備の途中なのでこれでー」
光葉さんは野菜の入った籠を持ち直して調理場のある通路に歩いて行った。
私達は外に出る通路の方へ移動する。
「そういえば誰が食事の準備してるんだろ?」
ルナがそう言うと後ろからエミリーが答えてくれる。
「調理場で光葉様と闇菜様、ミナ様と妖精達が準備しております」
「おー、ミナちゃん帰ってきてるんだ?」
「今日はもう皆さんお戻りのはずです」
エミリーの話を聞きながら扉をくぐって外に出るとテーブルのある方を目指す。
少し離れたとこにある窯の方をみるとボルグさんが何かをせっせと作っているようだ。
多分ピザトーストかな?
ピザ生地は苦戦してたみたいだしね。
ボルグさんが作業してるのを横目にテーブルのところに着くとシキ姉さんがお茶を飲んでいた。
「お帰りなさい、2人とも」
「ただいま」「ただいまー」
「ユキに頼みたいことがあるのよ」
シキ姉さんは私を見てそう言うと、足下から机の上に箱を持ち上げ置いた。
中に何か生き物が入っているようで、ごそごそと動く音がする。
箱を見てみる。
木箱なのだが茶色に塗られており私から見える箱の側面にはミカンの絵と文字が書かれていた。
何となくそれを見て中で動いている生き物を予想する。
ネコかな?
シキ姉さんは箱の蓋を開ける。
けど、その木箱良く作られていて蝶番を使い段ボールと同じように開くようになっていた。
地味に凝った作りだね。
中から出てきたのは3羽の鶏…ではなくてコッコだった。
「この子達飼っても良いでしょ?」
シキ姉さんが子供っぽくそんな事を言う。
段ボールっぽい木箱を抱えてコッコ達に顔を寄せ、ルナの肩に座っていた私を見上げる形となる。
1人と3羽が一緒になって私達を見ている。
シキ姉さんのキャラは可愛いと言うより綺麗な感じだけど、私的にはコッコが思った以上に可愛い。
こっちを潤んだ目で見ながらコケとかコッコッコなんて鳴いているのだ。
「どこで拾ってきたの!うちは広くないんだから鶏なんて飼えないでしょ!」
私が何も言わないでいるとルナがそんな事を言った。
ちなみにホームはそこそこ広いから飼う余裕はあると思う。
「そんな、ルナは捨てられてたこの子達が可哀想だと思わないの!?」
「厳しいかもしれないけどうちはペット不可の物件だから飼えないんだよ!」
ペット不可の物件って、今ある建物ってボルグさんが作ってる鍛冶場予定の小屋だけだよね。
ある意味ペット不可だけど…。
そもそもコッコが捨てられてることなんてないよね。
「でもお隣さんはもっと大きい芋虫飼ってたわ!」
それってアエローちゃんが妖精達と世話してるワツシワのことかな?
でもルナとシキ姉の部屋ってアエローちゃんの隣じゃないよね。
確かアエローちゃんは木の上の方に自分用の小屋があってそっちに住んでるはず。
「シキ姉…芋虫はペットじゃないから良いんだよ。でもその子達はペットになるでしょ?」
あれ、カブトムシとか昆虫を飼ってる人いるけどペットに入るんじゃないかな?
むしろ鶏の方が家畜でペットとして扱われてないような…。
2人して寸劇をしながらこちらをチラチラと見ていた。
「えっと、もう良いの?」
「ユキ、私達は突っ込み待ちよ」
「お姉ちゃん早く止めてよ。ほら、あそこの農民がこっち見て笑いながら録画してそうなんだよ!」
ルナが指差した方を見ると農民と呼ばれたラギさんがオーバーオールに麦わら帽子をかぶってこっちを見ていた。
「農民言うな!こっちだってやりたくてやってるわけじゃねえんだよ!」
「おい、サボってないで作業しろ」
「そうですよ。荒地で色んな植物の種を取ってきて栽培したいって言ったのはラギさんなのですから。ぁ、動画は後でくださいね?」
「へいへい、わかりましたよ。あぁ、動画は後で送ってやるよ」
ラギさんは同じような格好をしたガイさんとシュティに注意されて作業に戻った。
最初はどういう状況下わからなかったけどシュティのおかげで理由はわかった。
とりあえずシキ姉さんの方に向き合う。
「えっと…、コッコを飼うのは構わないと思うけど、どこで飼うの?」
「場所はユキが帰ってきてから相談しようと思ってたのよ。鶏小屋も買ってきたからアイテムボックスに入ってるわ」
そう言うってシキ姉さんがウインドウを1つ可視化して見せてくれる。
そこには小屋の大きさが書かれていた。
「そんなに大きくはないんだね」
「まだ3羽だけだしね。増えてもある程度は大丈夫な大きさはあると思うわ」
「それよりシキ姉さんの話ってコッコのことだったの?」
「そうよ。可愛いでしょ?テイムスキルで私の言う事を聞いてくれるから世話も楽そうで良いわね」
確認してちょっと頭を抱えた。
てっきりインする前に言ってた私の事だと思ってたから。
いや、まあ木箱見たときからなんかおかしいとは思ってたんだけどね。
「コッコは可愛いけど…。私の事じゃなかったんだね」
「ユキ…。そんな真面目な話を他の人もいるここでする訳ないじゃない。でも話はちゃんと通してきたから安心しなさい。詳しい話は明日の朝するわ」
私の言った事に対して少し呆れた様子を見せたけど真面目な顔で言ってくれた。
「うん、ありがとう」
「いいのよ。それよりこの子達を飼う場所なんだけど…、あそこでも良いかしら?」
シキ姉さんはそう言って枝の1つを指差した。
サクヤの枝の中で一番低い場所にある枝だ。
とは言え、それでも十分高いところにあるので落ちれば飛べないコッコでは命に関わるんじゃないかと思った。
「あんな所でどうやって飼うの?」
「妖精達が言うにはワジオジェ様って言う木でも高い枝に足場を作って住処を作っていたらしいのよ。もちろん、ダメなら空いてるあっちの方に小屋を置くつもり」
あぁ、普段ワジオジェ様のところの妖精達がどこにいるかわからなかったけど木の上で生活してたんだね。
と言うか今も上の方には妖精達の住処があるんだろう。
寸劇で言ってたワツシワも上の方に棲んでるね。
「木の上で生活ってちょっと憧れるかも!エルフみたいだよね!」
ルナはそう言って目を輝かせる。
最初の頃は地下でも何も言ってなかったけど、最近は私と別で寝てるから不満そうにしてたもんね。
すでに上の方には妖精の住処やアエローちゃんの家があるんだろうから聞くのは今更な気がするけど。
「サクヤ、貴方の枝の1つでコッコを飼いたいんだけど良いかな?」
私がホームの中心にある世界樹にそう聞くと、突如地鳴りがして地面から幅が1メートルはあるだろう太い蔓が現れた。
それはサクヤの本体である世界樹に巻き付き上っていく。
まるで螺旋階段の様に巻き付いた蔓はかなりの高さまで上がっていったのだろう。
見上げるけど蔓の先端がどこかわからなくなってしまった。
わかることは枝がある幹の所で1周ぐるっと巻き付いているので、枝のある所が1つの階層のような感じに見える。
「これは凄いわね…」
シキ姉さんが思わずといった様子で見上げながら呟いた。
周りを見るとルナだけじゃなく畑作業をしていた3人にボルグさんも見上げていた。
プリメラさんにスノウさんリグさんも外に出てきて上を見上げている。
「あっ!」
しばらくすると大きな声が聞こえたのでそちらを見ると、ボルグさんが焦って窯の中からモノを取りだしていた。
それはこんがりを超えて黒くなっていた。
間違いなく見上げていて焼きすぎたのだろう。
珍しく上がったボルグさんの声で畑組も話をしながら作業に戻った。
「ユキちゃん凄い音がして出てきたんだけど、これ何があったの!?」
プリメラさんがスノウさんやリグさんとこちらに駆けてきた。
バサッバサッと大きな羽ばたき音が聞こえてくる。
「ユキさん!なんかいきなりぶっとい蔓が上ってきたんだけど!」
慌てたようにアエローちゃんが下りてきてそんな事を言った。
「あー、えっと…。サクヤが上に登れるように蔓で通路を作ってくれたのかな?」
確信はないけど多分そういう事じゃないかな。
私がそう言うとプリメラさん達やアエローちゃんも蔓が巻き付いた世界樹を見上げた。
「まぁ、ユキちゃんがそう言うならそうなのね…」
しばらく上を見ていたプリメラさん達は作業が途中だそうで地下に戻っていった。
何を作っているかは教えてくれなかったけど、服飾関係なんだろうと言うのはわかる。
リグさんが一緒なのは珍しいと思ったけどね。
アエローちゃんはシキ姉さんの隣のイスに座ってコッコを見る。
そして触ろうとしたのか指を出して突かれていた。
ちょっとスケールが大きすぎてまだドキドキするけど、コッコ達を飼っても良いって事だよね。
「シキ姉さん、コッコは上で飼っても良いみたいだよ」
「流石にこんな歓迎は見たことも経験したこともないわね…。まぁ、あったらそれはそれで怖いけど」
シキ姉さんはまだ上を見上げてそんな風に言った。
コッコの1羽はシキ姉さんと同じように上を見上げていて、残りの2羽は触ろうとするアエローちゃんを突こうとしていた。
上を見上げてる1羽を見てるとやっぱり可愛いと思う。
動物エリア1にいたコッコは襲ってきていたからじっくり見る余裕なんかなかったんだよね。
卵取ったのが原因だったけどさ。
「そういえばシキ姉はどこでそのコッコ捕まえてきたの?」
ルナに声をかけられて、シキ姉さんは顔を私達の方に向けた。
「捕まえてきたんじゃないわよ。買ってきたのよ」
「ぇ、コッコって買えるの?」
「畜産農家で取り扱ってる人がいるんだから交渉すればできるでしょう」
なるほど。
そういえばコッコを保護して繁殖させてるって話を聞いた事があったような気もする。
養鶏場?の人と交渉して購入してきたんだろう。
「沢山いるコッコの中から選んでテイムさせてくれたのよ。雄鳥が1羽に雌鳥が2羽ね」
「名前とか付けてあるんですか?」
アエローちゃんが名前を聞く。
「雄がトサカで雌の温和しい子がセセリ、トサカと一緒に突いてる子がササミね」
ちょっかいを出してるアエローちゃんを突いてる片方が雄のトサカでもう片方が雌のササミ、可愛いと思ってた子が雌のセセリらしい。
「シキ姉、アウトだよ!食べる気なの!?」
「ぇ、でももう名前決定しちゃったわよ。変えれるのかしら?」
ルナが名前を聞いて反対しているがもう決定した後みたいだった。
2人でやんややんやと調べてたみたいだけど課金しないといけないみたいだった。
それを見て不満そうだったけどルナは諦めたようだ。
「トサカはまだしもセセリとササミはその名前で良いのかね」
ルナは納得できないようでテーブルに顎を乗せて3羽のコッコを見る。
当のコッコ達は気にした様子もなく、ちょっかいを出すアエローちゃんの指を突いたり毛繕いをしている。
「それにしても…、どうやって登ろうかしらね」
シキ姉さんが蔓の方を見て呟いた。
釣られて見ると蔓は太いが円柱の為、登って行くには滑りそうな感じだった。
「階段みたいな感じだったら登りやすかったかな?」
私がそう言うと後ろから声がかかった。
「お嬢様、木材を用意して頂ければ妖精達で蔓を登りやすいように足場を用意いたします」
エミリーがそう言ってくれたので。
「ホント?じゃあ、お願いして良いかな」
「お任せください」
振り返って頼むとお辞儀をして頷いてくれた。
アイテムボックスを確認するとイビルトレントがまだ結構残っている。
一時期結構伐採したからね。
どうやって足場を作っていくのか聞いてみると。
「木属性魔法でくっつけていくんだと思うよ」
とアエローちゃんが答えてくれた。
なんでもワツシワの小屋やアエローちゃんの小屋も魔法で固定してあるらしい。
へー、そんな事できるんだね。
「足場ができるまで、しばらくは地上の方が良いかしら」
「そうだね。登れるようになってから枝の上に設置し直せば良いんじゃないかな」
シキ姉さんに聞かれたので同意する。
コッコ達の小屋は一時的だけど地上に設置することになった。
シキ姉さんは木箱を持って仮設置場所に小屋をだして寝床を整えてくるそうで席を立った。
アエローちゃんも手伝うようで一緒に席を立つ。
「私達も何か手伝った方が良いのかな?」
「んー、ならバーベキューの準備でも手伝ってくる?」
そう言ってルナがボルグさんのいる方を指差した。
「そうだね」
頷いて浮き上がるとルナも席を立ち一緒に移動する。
窯の方は暑いので私達はちょっと離れた位置でコンロを用意することに。
材料はボルグさんが作っていたレンガだ。
私が運んでルナが組み上げていく。
ずらしながら積んでいるだけの簡単な作りだ。
ボルグさんが途中から指示してくれたので迷うことなく完成した。
1つでは足りないだろうからもう一つ作ったところで光葉さん達がコンロの近くに来た。
「準備できましたー」
「どこ…、置こう…?」
「ユキお姉さん、見て見て!たくさん用意してきたよ!」
3人が来たのを見てボルグさんがテーブルを出した。
用意されたテーブルに串に刺さったお肉や野菜が載せられたお皿が置かれる。
ルナはボルグさんの指示でコンロに炭を置いて火をつける。
網はボルグさんが用意してくれていた。
以前バーベキューをやったときに使ったコンロが無いと思って作ったけど、しまってあっただけのようでボルグさんが追加で設置した。
全部で4つになったコンロは3つに網、残りの1つは鉄板が敷かれた。
食材を準備してきた3人とルナが焼き始めていると他のメンバーが集まってきた。
妖精達が呼びに行ってくれていたみたいだ。
オーバーオールを着ていた3人は今は普段着に着替えていた。
全員に飲み物が注がれたコップと取り皿がいきわたる。
そしてみんなの視線が私に。
「えっと…。サクヤが登れるように蔓を用意してくれました。えー、枝の上も開発していくことになると思いますが協力していきましょう。乾杯!」
-乾杯!-
とりあえず、何を言って良いかわからなかったから思ったことを口にした。
幹事とかやったことなかったし乾杯の音頭なんて普段やってなかったんだよ。
コップが木なのでぶつけても音はしないけどぶつけたりしている。
これは気分だよね。
飲み物はお茶や果実水が用意してあるけど、後でお酒を飲むのは容易に想像できる。
今のところはまだ飲まないみたいだけどね。
焼けたお肉や野菜を取ってはまた網に食材をのせていく。
それぞれが近況の話をしたりわいわい騒いでいる。
1つだけ鉄板が用意されたコンロではボルグさんが塩焼きそばを作っていた。
ソースは作ってる人がいそうだけど、売ってるという話を聞いたことがない。
窯はシキ姉さんとプリメラさんが使ってるようだ。
見たところ入れているのは鳥肉かな?
事前に焼いていたピザトーストはテーブルに並んでいた。
出来たてをアイテムボックスに入れている為まだ熱々のようだ。
誰かが買っていたのか海鮮もある。
私は妖精達が用意してくれたモノを選んで食べていく。
妖精サイズの野菜串だから焼けるのも早いようだ。
「お、これうまいな。何の肉だ?」
「それはどこにあったお肉でしょー?」
「ミナわかるよ!おっきいとかげだよ」
ガイさんが美味しいといった肉が何の肉か確認したら予想外の答えが返っていた。
蜥蜴って…。
荒地にいるって言う蜥蜴かな?
「ぁ、蜥蜴美味しいらしいね。鳥肉みたいな感じだって聞いたけど。どれどれ…。……ん、想像してたのより食べやすくて美味しいね」
「これですか?はむ……、確かにさっぱりしていていけますね」
ルナとシュティは逆に気になったようで食べている。
2人の反応を見た感じ味は良いんだろう。
それを期に他の人も食べ始める。
食事が進むとガイさん達とシキ姉さんはお酒を取り出して飲み始める。
お酒と言えば芋焼酎を造ろうと計画してたこともあったけど…。
ネットで調べたけど麹を作る段階でどうして良いかわからず詰まってしまった。
調べると種麹を作るのに麹菌が必要だけど、麹菌の繁殖ができていない。
現実と違って売ってないしね。
なので計画は中断している。
味噌や醤油ができたって事は麹菌は見つかってるんだと思うんだけどね。
やり方はわからないけど、作った人は色々試行錯誤したんだろう。
頼めば貰えるかな…?
貰った醤油や味噌は試作品だった気がするからまだ難しいかな。
「お姉ちゃんもお酒貰ってきたら?」
珍しくルナからお酒の許可が出た。
「いいの?」
「飲み過ぎはダメだからね?」
そう言われて嬉しくなって頷いてお酒を貰いに行く。
シキ姉さんが一瞬驚いた様子でルナの方を見てたけど特に何か言うつもりはないみたい。
その表情はちょっと笑ってるというか微笑んでる感じ?に変わっていた。
ガイさん達のところに行って注いで貰ったお酒をチビチビと飲んでいるとあることを思いだした。
「そうだ。ルナー、これいる?」
そう言ってルナがお皿を置いているテーブルの上に昼間作っていた物を置く。
手持ち花火だ。
「おー!手持ち花火だ。いいの?」
「あげるよ。私だと持てないから試してもいないんだよね。音はないと思う」
私がそう言うとルナは手にしていた肉串をパクパクと食べて手を洗う。
よく見るとルナが手を洗うのに使ったのは私が前に作った魔道具のようだった。
まだ持ってたんだね。
ルナは新しいオモチャを与えられた子供のように、手持ち花火を手にすると確認していく。
「魔力を常時消費する魔道具なんだ。おー、魔力操作で色が変化した。消費が増えるけどちょっと派手にもできて楽しいかも」
「ホントに音はならないんですね。ルナ、私にも後でやらせてください」
「うん、いいよー。って…、あれ?シュティこれヤバイかも」
「どうかしたんですか?」
「魔力操作スキルの熟練度増えてるんだよ!」
「ぇ、ホントですか?早く変わってください」
「まだダメだって」
なんか2人でかなり盛り上がっている。
2人の話が気になったのかアエローちゃんに光葉さん、闇菜さんも順番待ちをしていた。
熟練度が増えてるって言ってるけど、魔道具を使うと熟練度が入のは限界があるとか何とか言ってた気がする。
今まで私が魔道具を使っても入ってなかったから気にしたことなかったんだよね。
ルナの注意が逸れてる間に私は移動する。
それはもちろん。
「お、ユキさんも来たか。安酒だがいるか?」
私に気づいたラギさんがそう言ってお酒の入っているボトルを持ち上げる。
残っているお酒を飲んで注いで貰う。
容器が小さいから私にあげたぐらいじゃ大した量は減らないからね。
ただ注ぐときにどうしてもこぼれてしまうけどね。
そこは別の容器の上で注ぐことで解決している。
いつ用意したのか、テーブルの周りにはイスが用意してあり座って飲んでいた。
ガイさん達の話は荒地や荒地の拠点の話題が中心みたいだ。
シキ姉さんはその話を聞いてるみたいだけど気になるのは取れる皮等素材のようだ。
「あれ、プリメラさんがいない?」
普段はプリメラさんもお酒があると楽しそうに飲んでるのでいないことを不思議に思った。
「あー…。アイツらは自分たちで食べる分確保して、また作業場に戻ったみたいだな」
「珍しくリグも張り切ってたな。お祭り用の服を用意するからって俺達もサイズ確認されたからな」
プリメラさんがいない事を口にしたら、ラギさんとガイさんから答えが返ってきた。
言われて見渡すがスノウさんとリグさんの姿もなかった。
「シキ姉さんは良いの?」
服を作ってるならシキ姉さんも関わってそうなのにと思って聞いてみる。
「えぇ。私はデザインが決まったら教えて貰って小物を作る予定ね」
「そうなんだ」
話を聞くとシキ姉さんはしばらくトサカ達の世話をするつもりで、デザインからは参加しないのだそう。
どんな小物なのか聞いても革製品だと言う事しか教えてくれなかった。
わいわいと騒ぐガイさん達の話を聞きながら、のんびりつまみとお酒を口にする。
おつまみは魚介、野菜と色々種類がある。
シキ姉さんやガイさん達はお肉も食べてるけどね。
地下で食べてる普段と違い外での食事だけど、日が出てる時間帯は木漏れ日もあるし日が差し込む場所もあるから暗いとは思わない。
夕方で薄暗かったのも時間が経ち夜になっているので暗くなっている。
今は高い所にある枝葉の隙間から僅かな月の光が差し込んでいる。
それだけだと暗く思うんだろうけど、夜のホームは魔力のおかげなのか光る花があって幻想的。
私とはガイさん達の会話に付いていけないのもあって、目の前に広がるホームの景色を見ながらお酒を飲んでいた。
ガイさん達も無理に話しかけたりはしてこないで盛り上がっている。
そういえば、ミナちゃんはどこにいるんだろう?
そう思って見渡すとボルグさんの影で気づかなかったけどミナちゃんも一緒にテーブルにいた。
まさかお酒飲ませてないよね。
「ガイさん、ミナちゃんにお酒飲ませてないですよね?」
「当たり前だろう。果実水だ。な?」
「うん…」
返事をしたミナちゃんは眠そうに目を擦っていた。
「おい、眠いならここじゃなくて部屋に戻れよ」
ラギさんにそう言われてミナちゃんは頷く。
「私もそろそろ寝ておくわ。お先に失礼するわね、おやすみなさい。ユキもあまり遅くまで起きてたらダメよ」
「うん、おやすみなさい」「ふわぁ……、おやすみなさい…」「おう、おやすみ」「お疲れさん」
挨拶をしたシキ姉さんはコップに残ったお酒を飲み干すと、ミナちゃんの手を引いて席を立つ。
戻る前にルナ達の方にも声をかけて部屋のある地下の扉をくぐっていった。
「ぁ、ルナ!明日朝練だから私達も早めに寝なきゃ」
「えー…。私はほら朝弱いから…」
「嘘言わないの。朝練出てたときは0時に寝て6時に起きてるって言ってたじゃない!」
「ルナは早寝早起きだったのですね。今日はもう寝るのなら花火は私が預かっておきますよ」
「ダメ!これは私が貰ったんだから!」
3人はあれこれ言い合いながらも仲よさそうに地下への扉をくぐっていった。
食べ物はきちんと食べたみたいだけど片付けはしてない。
そう思っていると光葉さんと闇菜さんが妖精達と片付けを始めた。
私も手伝おうと近くに行くと、やっておくと言われてしまった。
「そのかわりー、私達の分も花火作って貰えませんかー?」
「花火…お願い……」
2人にそう言われたのでどんなのが良いか聞いてみる。
光葉さんが線香花火、闇菜さんは絵型花火と言われた。
線香花火はわかったけど絵型花火と言われてピンとこなかったので聞いてみると。
「キャラクターや動物、銃なんかの絵に手持ち花火が付いてる奴ですよー」
言われてあぁと理解できた。
うろ覚えだけど小さい頃に買って貰った花火セットにも蛸とか銃の絵を持つ花火があったような気がする。
私は絵とか自信がなかったからどんなのが良いかメールを送って欲しいと伝えておいた。
それからまだお酒を飲んでいるガイさん達に挨拶をしてサクヤの繭がある洞に戻った。
「ただいま、サクヤ。登れるように蔓を用意してくれてありがとね」
迎えてくれたサクヤに改めてお礼を言うと、嬉しかったのか淡い光が部屋を照らす。
そして蔦が私の両手を取り上下に振る。
「でも嫌な事があったらちゃんと言ってね。無理はして欲しくないから」
私がそう言うと蔦の1本が伸びて輪を作った。
○って事は肯定してくれたんだよね。
んー、今日はそろそろ落ちておかないと。
「じゃあ、今日はこれでもう休むね。おやすみなさい」
私はそう言って寝床に横になる。
するとサクヤは光量を落としてくれる。
いつもと違ったのは私の手に蔦が触れてきた。
「甘えてるのかな。手を握るって言っていいのかわからないけど…、触れていると安心するね。サクヤ、おやすみ」
羽根があるからうつ伏せが多いけど横向きで寝転ぶ。
サクヤの蔦の1本を両手で包み目を閉じログアウトした。




