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「「ふわぁ…」」
朝食の用意されているテーブルについて欠伸をする。
ちょうど同じタイミングで欠伸をするのが聞こえた。
横を見ると那月も同じようにこちらを見たのでクスッと笑いあう。
朝起きると決めたので目覚ましをセットしたから起きれはした。
けど落ちた後に端末で調べ物をしてたらついつい遅くまで起きてしまったんだよね。
「アンタ達、私より早くゲーム止めたんじゃなかったの?」
「部屋に戻ってスキル見てたら、面白そうなの増えてて試してみたくなっちゃってさー」
どうやらルナは私と別れて部屋に戻った後もゲームで何かやってたみたいだ。
私は言いにくくて朝食のサンドイッチを口にする。
「那月、今日から部活あるんでしょ?寝不足は事故や怪我の元なんだから気をつけなさい」
「はーい」
「雪菜はどうせ花火の事でも調べてたんでしょ。夢中になるのは良いけど体調の事も考えなさいよ」
「うっ…、気をつけるよ」
見事に起きてた理由を当てられてしまい言葉に詰まった。
1人暮らししてる時は母さんから電話がかかってきても面倒だ、なんて思ってた。
けど、今は母さんが口うるさく言ってくれるのは心配してくれてるのをわかってるから嬉しいと同時にちょっと申し訳ないと思える。
ただ申し訳ない気持ちは有るモノの自然と口角が上がってしまう。
「何笑ってるのよ。ちゃんとわかってるの?」
「うん、わかってるよ」
「どうだかねぇ…」
疑うように目を細めて私の方を見るのでつい顔を背けた。
「そういえばお母さんが朝食にパンって何かあったの?」
那月が話題を逸らすように朝食について聞く。
今朝の朝食はサンドイッチだった。
楓さんの影響でパンを家で食べる事が増えてきた気がする。
「雪菜のお昼を考えるとサンドイッチが手軽かなって思っただけよ」
「種類が多いのも?」
「サラダ用意しなくても良いように野菜の種類を多めにしたわね。後は卵サンドにチキンサンドね」
そう言って私用に皿に盛ってあるサンドイッチを見せてくれる。
種類が多いけどそこまで1つの量は多くないから食べ切れそう。
「おー、豪華だ」
「雪菜はそんなに食べないだろうから量は少しずつだけどね。余った分は…、お弁当に持って行く?」
「持って行く!」
那月の返事を聞いて母さんは台所に行って余っているサンドイッチを弁当箱に詰めていく。
「お母さんは持って行かないの?」
「私はいいわ。朝食を決めた時点でお昼はお米を食べるって決めたから用意もしてないのよね」
「そうなんだ?私の分作ってあったのは…」
「アンタの事だから雪菜と一緒が良いかと思って。足りなければ何か買って食べなさい」
「お母さんありがとう!」
那月は私と一緒なら何でもいいのかな?
好き嫌いはない子だし美味しければ何でもいいのかもしれない。
そう言う私も朝昼とパンでも気にしないけどね。
食事を終えた那月はお弁当を持って部屋に荷物を取りに戻った。
制服に着替えた那月がリビングに顔を出す。
「学校行ってくるね」
「気をつけて行ってきなさいよ」「行ってらっしゃい」
「はーい、行ってきまーす」
パタパタと玄関に向かっていった。
ガチャンと扉が閉まる音がした。
「いつも那月ってこれぐらいに出てるの?」
「昨日ほどじゃないけど今日は遅い方ね。朝練行ってた時はもっと早かったわよ」
「全然気にしてなかったな…」
「あの子、アンタが話すようになってからは朝練出てないからね」
それを聞いて思わず母さんの方を見る。
「アンタが朝起きてくるのが遅かったからね。一緒にご飯食べようとすると朝練なんて絶対間に合わないのよ。アンタが遅すぎて食事は滅多に一緒に食べてなかったけどね」
「そうだったんだ…。早く起きた方が良いかな?」
「それは那月と相談しなさいな。ただ早く起きるならその分早く寝なさいよ?」
「あー…。相談してみよう……かな?」
言葉を濁した私の方を見て、笑いながら食器を洗っていく。
早く寝る自信は無いんだよね…。
ついゲームやってそうだし。
洗い物を終えると母さんも仕事へ行く支度を始める。
「今日は遅くなりそうなの?」
「どうかしらー。そんな事は無いと思うけどね」
「那月は部活が始まるから遅いんだっけ」
「この時期なら17時頃には終わって帰ってくると思うわよ。私は早くても6時過ぎるわね」
「夕ご飯はどうした方が良いかな」
「帰る時間わかったら連絡は入れるけど、先に済ませちゃっても良いわよ」
母さんは話をしながらも準備を済ませると、私に返事をしながら玄関へ向かう。
私も見送りに付いていく。
「わかった。母さんも気をつけてね」
「えぇ、行ってくるわね」
「行ってらっしゃい」
バタンと扉が閉まり鍵がかかる。
1人になった私はリビングへ戻り、テレビを見ながらストレッチをする。
8時を過ぎた所で止めて、出来る範囲で片付けをするとテレビを消して部屋に戻る。
着替えをしてベッドへ移動する。
寝転んだら機器を付けていきゲームを立ち上げた。
ゲームの目覚めはサクヤの繭がある洞の中。
フレンドの一覧を開くがPTを組んでいるメンバーはログアウト状態だ。
まぁ、平日だしね。
ミナちゃんがいるのは予想ができてたけど…。
他にチームメンバーの1人がログイン状態だった。
私は起き上がるとサクヤに挨拶をする。
「おはよう、サクヤ」
すると淡く繭が光り、蔦を振って反応してくれる。
「出掛けてくるね」
そう言って繭を撫でるとまた淡く光った。
蔦を振るサクヤに手を振って洞を出る。
「お嬢様、おはようございます」
「おはようエミリー。ずっと待ってたの?」
出てすぐの所にエミリーがいたので驚いた。
「いえ、契約した相手とは繋がっていると言いますか…。離れていてもやり取りができるのです」
あー、確かシュティも言ってたね。
うんうんと頷いて続きを促す。
「私達の場合はちょっと特殊なようでサクヤ様とお嬢様のお2人と契約をしています。しかし宝石を持っていらっしゃるのはサクヤ様なので、やり取りができるのはサクヤ様になるのです」
つまり契約すると個人チャットみたいな事ができるようになる。
それは宝石を持ってる契約者が対象になる。
今回の場合、宝石を持ってるのはサクヤだ。
私が起きた事をサクヤが伝えたって事かな。
それを聞いてみると。
「私達は現状、サクヤ様とのやり取りがまだ上手くできておりません。先ほどはサクヤ様から嬉しいという感情のようなモノが伝わってきたので、ユキ様が起きられてお声をかけたのかと思ったのです」
「できない事なんてあるんだ?」
「私も契約をした事がなかったので他がわかりませんが。ファエリと話をしての推測ですが、言葉はある程度理解しているけど扱えないような状態なのではと」
なるほどー。
話ながらも移動していた私達は地下の広間に到着した。
テーブルの所へ着くと。
「お嬢様のお食事をお持ちします」
そう言って調理場のある方へ飛んでいった。
私はテーブルにいる人に挨拶をすることにした。
「ボルグさんおはようございます」
相変わらず挨拶は返ってこないけど手を上げて反応してくれた。
「何してたんですか?」
作業してるように見えたので聞いてみると手元の紙を見えるようにしてくれる。
これは…。
見てみると円の中に四角などの図形がある。
それらには線が引かれ、それがなんなのか名称が書かれていた。
ボルグさんは拠点を作るのに必要な建物の配置を考えてくれていたみたいだ。
メモ用紙のようなモノが幾つかあってそのうちの1つはみんなの希望が書いてあるようだった。
昨日のうちに食事しながら聞いてまわったことをまとめてくれていたみたい。
ただ、あまり広い拠点にはできないだろうと昨晩ガイさん達と話をしていた。
結界珠で設定出来る範囲はそんなに広くないと言うのだ。
私の拠点は広いよね、って言ったらサクヤのおかげだろうとの事。
想定外のことを言っても仕方ないもんね。
とりあえずボルグさんは掲示板に上がってる広さを最大にした範囲で考えることにしたみたい。
必要な施設として役所、食事処、宿、ギルドが書かれていた。
役所は騎士が駐留?とも書かれているから用途は決まってないけど大きめの建物って事かな。
住居も幾つか作るみたいだけどアパートのような感じが良いのではと書かれている。
お風呂は住居と宿に併設するみたいだ。
試験的なのもあって大きめで作ってみることにしている。
「ボルグさんありがとうございます!今日は時間あるんですか?」
確認すると頷いてサムズアップをしてくれた。
「なら、新拠点作るの手伝って貰っても良いですか?」
ハッキリ言って私1人じゃいまいち不安だし相談できる相手がいてくれた方が助かる。
ボルグさんは迷わず頷いてくれた。
「そういえばミナちゃんはどこにいるかわかります?」
気になって聞いてみると、ボルグさんは私の後ろ…入り口の方を指さした。
「ユキお姉さん!」
丁度戻ってきた所だったみたいで私の名前を呼んで駆け寄ってくる。
その様子に思わず微笑んで。
「ミナちゃんおはよう」
「おはよーございます」
「ミナちゃんは何してたの?」
聞いてみると妖精達を手伝って、畑の作物を収穫していたみたいだ。
報酬として取れた野菜の一部などを分けて貰ったみたい。
薬草類は光葉さんが管理してるけど、野菜等畑の管理は現状誰と決まっておらず妖精達が行っている。
シキ姉さんがやりたそうに迷ってたけど、他にもやりたいことがあるそうでそっちからやる事にしたみたい。
話しているとエミリーが料理を運んできてくれた。
2人はもう食事は終わっているそうで私だけご飯を食べる。
楽しそうに話すミナちゃんの話に相づちを打ちながら食事を終える。
私はミナちゃんを誘うと、行くという返事を聞いて出発の準備をする。
エミリーに頼んで水の魔法が得意な妖精数名と土の魔法が得意な妖精を多めに集めて貰う。
スイセンとツクシは前日に声をかけてお願いをしている。
移動だけど多くの妖精はボルグさんの持つ籠に入っている。
二人の肩や頭に乗っている子もいた。
拠点を出て森の中を歩いて行く私達。
ボルグさんは話そうとしないけど、頷いたり身振り手振りで対応してくれるからかミナちゃんは普通に話しかけてる。
と言うか思ったより楽しそうだ。
時々歩きながらボルグさんの腕にぶら下がったりして遊んでるのを見ると親子のようにも見える。
メーアの巣に向かう道には出ないで北に進んでいく。
「メーアの所からじゃ無くて良いんですか?」
聞くとボルグさんは頷いてくれる。
「どこに向かってるの?」
「森を抜けた所にある荒地だよ」
「荒地!どんな所か楽しみー」
時折襲ってくるスラッシュマンティスは、ボルグさんが片手で持った盾で攻撃を防ぎミナちゃんがその隙に倒している。
ミナちゃんの動きは私から見ると初めて会った時とは比べものにならない気がする。
これはシュティのおかげなんだろう。
ボルグさんも感心しているようだった。
森を抜ける。
目の前に広がるのは緑の生い茂る木々から一転、草木が減りむき出しの地面が多く見える。
雑草や低木などがあるが隠れる場所はあまり無さそう。
日陰もあまりないみたいだ。
時々吹く風で砂が舞っているのか空気はすこし悪いような気がする。
2人を見るとボルグさんはマスクを付けていてミナちゃんにも渡していた。
そういえば来たことがあるからわかってたんだね。
教えてくれれば良いのに…。
水が少ないからか地面の表面はひび割れている所も見られた。
よく見ると茶色の鱗で頭から尻尾まで3メートルはありそうな蜥蜴が伏せている。
鑑定してみるとウェイストランドイグアナと出た。
荒地イグアナになるのかな?
閉じていた目が開きこちらを見るがしばらくしてまた目を閉じた。
目が合ったら襲ってくるわけじゃないみたい。
辺りを見渡してもルナが言ってた蛇や亀は近くにはいないのか見当たらなかった。
けど遠くの方でかなり大きなミミズのようなモノが何かを追いかけていた。
アレがワームなのだろうけど…。
大きすぎる。
追いかけられてるのが何かわからないけど、ワームの高さは追いかけられてる生物の3倍以上ある気がする。
全長は10メートルって言ってたけど、それより長い個体はいそうな気がする。
動きは蛇のように蛇行して進むのではなく一直線に進んでいるようだった。
口を開きながら追ってるのかな?
でもどうやって移動してるんだろう…。
「わー、長いねー…」
ミナちゃんもワームの方を見て驚いているようだ。
距離が遠すぎるのか鑑定はできそうになかった。
ボルグさんの方を見ると何かボードのようなモノを取り出した所だった。
そこに書かれているのは…。
「蠕動運動?」
動きもミミズと同じで多数の関節の伸縮を利用して進んでるみたい?
わかりやすいようにか、絵付きで書いてあるから何となくはわかるけど…。
説明を読んだ私達はここで眺めていても仕方が無いのでボルグさんの案内で移動することに。
ちなみにワームは巨体だから移動範囲も広いのか結構な速度で動いてるように見えた。
目的の場所は何度か来て良さそうな場所を探しておいてくれたみたい。
着いた場所はマップで見ると丁度メーアの巣を北東に進んだ所で、石や溝がありでこぼことしてて荒地側に少し低く段差になっている所があった。
段差と言っても階段で2段分ぐらいだろうか。
森からは段差は無さそうだけど木の根やら雑草で足下は悪い。
高くなってるエリアは思ったより広くここに拠点を構えるのは良さそうに思える。
みんなには相談したんだけど、場所や構造など決定は私に任せると言われてしまった。
完成した拠点はギルド管理になるはず?なのでみんなとしてはそこまで気にしてないのかも。
結界珠の拠点設定機能を使って設定していく。
設置した時の結界の範囲を確認しながら設置位置を考える。
段差の所は溝を掘るって話だったから地中5メートルぐらいは結界の範囲内にしておいた。
そのおかげで整地は自分たちでしないといけなくなったけどね。
上は初期設定だと上限がない、というか蓋がされてないようだ。
なので上空から襲撃してくる敵がいたら結界は素通りされてしまう。
その辺も後で対策は考えた方が良いよね。
それにしても私達のホームが規格外な所が多いのはサクヤのおかげだったんだね…。
そこに存在するだけで恩恵があるサクヤ様々だよ、ホント。
とりあえず結界珠の位置はこの辺で良いかな。
結界珠を使用すると空気が変わったように思える。
実際変わったのかさっきまで籠に引っ込んでいたスイセンが出てきた。
怖ず怖ずと近付いてきて。
「ユキ様…私達は何をすれば…?」
「ぁ、うん。指示していくからちょっと待ってね」
私の言葉にこくりと頷くと私の近くで待機している。
後ろには同じ水属性の得意な妖精達が数名いる。
ツクシや土属性が得意な子達はすでに散らばって土を見ているようだった。
「ボルグさんまずは地盤調査でしたっけ?」
確認するとこちらを向いて頷いてくれた。
ツクシを呼んで確認するとすでに魔法で土地の補強を始めているらしい。
何をするかわかってるからか言わなくても仕事を始めてくれるのは、指示出来る自信が無いので助かるね。
スイセンにこの辺りの水の流れを聞いてみる。
「えっと……、森の方からは…感じられます。こちら側は……、ごめんなさい。わからない…です」
事前に聞いた話だとそこまで深くなければ地中の水脈もわかると言っていた。
けどわからないと言う事は水脈は無いのかな?
もしくは相当深くにあってわからないか、結界が原因でわからないのか。
「そっか、じゃあ水場を作るとしたら?」
「泉を作る…、一時的なら可能だとは思います。ただここに維持し続けるのは…、マナがかなり必要になるので……」
「厳しいかな?」
確認に首を縦に振り頷くスイセン。
拠点の機能で魔力が見れたっけ。
確認してみると…。
「ここあまり魔力多くないね」
「ユキ様のホームはサクヤ様のお力がありますから!」
ここでもやっぱりサクヤのおかげ!
それもそうか…。
「まぁ、やっぱり水は当初の予定通り魔道具かな」
そうなるとどこへ設置するかスイセンや妖精達に相談しながら検討していく。
大まかな位置を決めたらボルグさん達の所へ行って伝える。
ボルグさんが書いている図に建物の建設予定位置が書き変えられていく。
「そういえば防壁ってどうするんですか?」
以前聞いた話だとエリア内に拠点を立てる場合襲撃される場合があるって言っていたはずだた。
その為防壁を作る予定ではいた。
「ユキお姉さん、森の木を伐採しちゃって大丈夫なの?」
「あー、どうなんだろう…」
結界の範囲は森エリアを跨いでしまっている。
勝手に伐採してしまっても良いモノか…。
私達が悩んでいると丁度一匹の蜂が飛んできた。
スレイブワスプの様だ。
「丁度良かった。ちょっと待ってね」
やってきたスレイブワスプを待たせてボルグさんから紙を貰い手紙を書く。
封はないけど魔力で込めておけばわかるかな?
「これを女王様に渡してきてくれるかな?」
そう言うと頷きやってきた方へ戻っていった。
伐採に関しては返事待ちで良いだろう。
とりあえず今できることは…。
「荒地側に掘る予定だった掘と決めた位置に建物の基礎工事かな?」
「はーい」
私の言葉に元気よく返事をするミナちゃんと頷くボルグさん。
妖精達は相変わらず一部が変な返答をしているが反応してくれる。
掘る作業は私を中心に土魔法を得意とする妖精が行い、出た土は水妖精達がボルグさん達の所へ運ぶ。
その土を使って基礎の形を作っていく。
堀の幅は2メートルほどで深さは4メートルぐらいの予定だ。
話によると理由はわからないがワームは水を嫌うそうなので水を張りたい。
「うーん、何とかならないかな…」
現状思い浮かぶのは魔道具を使うことか、妖精の泉と呼ばれてたモノだ。
前者は使う人がいる。
後者はここだと水脈もない為、必要な魔力が多く維持し続けれないそうだ。
できるとすれば前者だろうか。
ただ魔道具も人の持つ魔力を使って起動するので使い続けるのは難しい。
燃料式にすると魔石の消費が馬鹿にならない気がした。
「とりあえず水を張るのは今後の課題かな」
「そう…ですね」
スイセンや妖精達も良い案はなかったようで少し申し訳なさそうにしている。
「今はやれることをやっていこう。ね?」
私がそう声をかけると妖精達は顔を上げ頷いてくれた。
-はい-
-へい、らっしゃい-
-がってん-
-承知-
しかし、相変わらず巫山戯たというかそもそも使い形違うよねって思える返事も混ざっている。
突っこむと疲れそうなのでスルーして作業に戻る。
と言っても作業自体はホームでやっていた部屋作りとたいして変わらない。
違うとすれば土を水でまとめたら石にしないで運んでいるぐらいかな。
運ぶのには以前遺跡で使った荷車を利用する。
あの後、改良を加えて頑丈になっている。
荷車を念力で操作するのは水属性の魔法が得意な子達が中心に交代しつつやっている。
運ばれた土はボルグさん達が基礎を作るのに使って、妖精の土属性魔法で石に変えている。
普通コンクリートを使う所を石化の魔法で作っている。
「ユキよ!妾が来たぞ!!」
何故だろうか。
返事は待ってたけど本人が来るとは思わなかった。
私は妖精達に作業をお願いしてやってきた人物の所へ向かう。
お供にガードを一体付けたメーアがいた。
「こんにちわ。えっと、わざわざ来なくても…」
「うむ。これはなんじゃ?」
「え、確認したかったこと書いた紙ですよ」
「フッ、愚か者。妾が人間の使う文字をわかるわけ無かろう!!」
そう胸を張って答えるメーアに呆然となった。
そういえば普通に会話してたけどメーアって人間と接触したことは今までなかったって言ってたっけ。
言われるまで気づかなかった。
「して、何用だったのじゃ?」
「ぁ、ギルドの依頼でここに拠点を立てようと思って」
「うむ、そのようじゃな。人間が暮らすとなれば飲食店もできるだろうな」
すでに食べることを考えているのかちょっと嬉しそうだ。
と言うか来る気満々だね。
街の方は制限があっても拠点は大丈夫だろうと考えてそう。
余裕があれば街に通ってそうな気がするけどね。
「その為の手紙だったのか?」
「いえ、防壁を作ろうと思ったんですが…」
「結界の範囲を見るに…。ふむ、森か」
言い切る前に見渡したメーアは察してくれた。
私が頷くとメーアは言い辛かったことをあっさり口にした。
「結界内の邪魔な木は切ってしまえば良かろう?」
「良いの?」
「森を切り開くというのなら反対はするがな。これくらいなら良かろう」
ボルグさんを呼んで切った木の使い道とスペースをどうするかメーア監視の元で確認する。
森側には柵を作りその内側に畑、堀はなしで防壁の予定だ。
木を切ったのは高い木があると、そこから防壁に飛び移り侵入される可能性を考慮してだった。
畑は試験的で荒地に近い土地で作物が育てれるかの実験でもある。
「そういえばユキ達はしばらくこっちにおるのか?」
「ううん、夜はホームに戻るつもりだけど…」
ボルグさんを見るとどうするか迷っているようだ。
「まぁ、おるにしても起きておらぬ時間があろう?無人では問題があろう。ギルドに引き渡すまでガードとスレイブワスプ共を預けよう」
「ほんと!?助かるよ」
「その代わりじゃ!祭りというのに妾を連れて行くと約束せよ」
お祭りかぁ…。
人が沢山来るだろうから揉め事が起きた時ちょっと怖い気はする。
期間はゲーム内で4日間だっけ。
そのうち初日は深夜だし多分出られないだろうから3日の内1日連れて行けば良いかな?
「わかった。その条件でお願いします」
「うむ、任せるが良い。食事の方は適当に肉でも与えておけば良いじゃろ」
それなら食事の方も問題ないかな?
ガードが来てくれるみたいだし、誰かが来た時は対応もお願い出来るだろう。
「簡単な食事を用意しておくよ」
その後メーアはしばらく私達の作業を眺めていたけどガードに引っ張られ戻っていった。
こっちの警備兼管理を頼むガードも送って貰わないとだからね。
堀が終わった私達はミナちゃんに頼んで木を切って貰い、切り株を掘り起こしていく。
私が魔法で伐採しようとしたら全力で妖精達に止められたんだよね…。
アイスチェーンソーなら簡単に切れると思ったんだけどなぁ。
仕方なく掘り起こす方に参加した。
この時点で妖精達も休憩が必要になってきた。
昼時は過ぎてしまっていたのでちょっと遅めだけど食事休憩にすることに。
ミナちゃんの分はボルグさんが用意してくれていた。
妖精達の分は買ってアイテムボックスにしまっておいた物を出す。
チーズケーキだ。
私が好きなのもあるけどフルーツの有無で揉めたりしないからね。
分けるのはボルグさんにお願いする。
以前魔法で切ろうとしてテーブルやら木皿まで切って怒られたんだ。
ちなみにその時ケーキは魔法でクリームが飛び散るわ、テーブルが真っ二つになって地面に落ちるわと大惨事。
魔動核暴発事件と違って事故ですという私の主張は認められずシュティにたっぷり説教された。
攻撃魔法でやろうとしたのがいけなかったらしい。
妖精達に無理させるつもりはないのでゆっくり休憩して貰う。
1時間ほど休んだら私とボルグさんミナちゃんの3人でできることを進める。
2人は肉体労働だし私の魔力消費は自動回復で何とかなるレベルの消費量だからね。
しばらくするとスイセンとツクシも作業に加わってくれた。
サクヤと契約をしたからか魔力量が以前より多くなったのだとか。
私は契約前と変わってないんだけどなぁ。
それからは回復した妖精達やメーアの所から送られてきたガードやスレイブワスプ達に手伝って貰いながら作業を続けた。




