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ログアウトして身体を起こす。
サロユさんの所から戻ってホームで換気用の魔道具を魔水晶で作ってみた。
噴水にある結界珠に登録して効果を確認してみた。
使ってみると何となく空気が循環しているように感じるようにはなった。
飾りだと思っていた羽で何となくだけど感じれたんだけどね。
一応入り口はドアがあるけど密閉してる扉じゃないから元々空気は出入りしてたみたい。
今回換気用の魔道具を起動させて変わったのは、部屋のある方から外に向かって空気が流れるようになっていた感じだろうか。
ただそこで問題になったのが最近小部屋の出入り口に取り付けた扉だ。
魔道具を設置しても扉で遮断されちゃうみたいで部屋ごとの換気も必要そうだった。
これから部屋を増やす事も考えると換気用のきちんとした設備なんかを作った方が良いのかな。
地下で匂いの原因になるのはカビなんだそう。
湿度に関しては世界樹が、室内温度は少しだけど私がコントロールしているから大丈夫だとは思うんだけど。
そういえばここ数日で広間に少し緑が増えてきた。
以前から蓮花ちゃんが色々育たないか試してはいたんだけど、光葉さんがワジオジェ様に聞いて種子や苗を入手してきたみたい。
日光のあまり当たらない日陰で育つ植物なんだそうだ。
室内で育てやすい観葉植物みたいな感じだと言う。
まったく光がなくてもいいワケではないけど幸い魔水晶の照明で問題ないようだった。
今はゴロゴロしながら端末で地下の換気について調べていた。
蓮花ちゃんは光葉さんと話しているようだったので私だけ先にログアウトしたのだ。
那月はまだ帰ってきてないようだった。
しばらく寝転びながら端末を見ていると玄関の方で音がする。
「ただいまー」「お邪魔します」
那月だけかと思ったら穂風ちゃんも一緒だったみたいだ。
買い物を終えてそのまま来たのかな。
「お姉ちゃんただいま!」
「おかえり。穂風ちゃんもいらっしゃい」
「お邪魔します」
「あれ、蓮花はまだログイン中なんだ?」
「うん、私だけ先にやめたんだよ」
那月は両手に有名な牛丼チェーン店の袋を持っていた。
「お母さんが食べたいってメールが着たからみんなの分も買ってきたんだよ」
2人が買った物は穂風ちゃんが持ってるみたいで部屋に置きに行った。
那月も買ってきた昼食をリビングに持って行った。
私は蓮花ちゃんにメールをして昼食が近い事を伝えた。
荷物を置いた2人が戻ってきて今日の戦果を話してくれるので聞いていく。
お目当ての物は買えなかったようでその話の時は少ししょんぼりしていたけど、他で色々買えたみたいで嬉しそうにしている。
話しているとゲームをやめた蓮花ちゃんが起き上がって機器を外していく。
「すみません。盛り上がってしまってあれこれ試していました」
「ううん、じゃあリビングに移動しようか」
私がそう言うと3人は頷いて移動する。
那月が買ってきたのは牛丼だった。
漬け物にサラダと味噌汁は母さんが用意したみたい。
私達はそれぞれ席について挨拶をし食事をする。
母さんは楓さんとキッチンで話をしているようだった。
私達の方は午前中ゲームで何してたかが話題になっている。
今は蓮花ちゃんに言われて考えないとーって思っていた内容だ。
世界樹の名前である。
と言っても本気で決めるつもりは無いからか適当な名前を挙げているだけに近かった。
最初に私が決めれば良いって言われてしまっている。
それは案は出すけど決定は私にって事だった。
嬉しいんだけど何となく世界樹は意思があるように思えるし案を伝えて反応見ながら決めようかな。
まぁ今話してる案は使えそうにないけどね…。
母さん達は買って来て貰ってすぐ食べたみたいだった。
なので食べ終わってもお茶を飲みながらゆっくりしていた。
3人がゲームの話をしてる間に私は楓さんに教わっておきたい事があったので母さん達の所へ行く。
スキンケアとかのやり方だ。
覚えきれてなかった可能性もあるので聞いてメモを取っておこうと思ったんだ。
母さんも気になっていたようで一緒になって楓さんから教わっていた。
この際だからとあれこれ聞いているうちに時間が経ち3時に近くなっていた。
「もうこんな時間ですか。すみませんがそろそろ私達はお暇させて頂きます」
「はい、ありがとうございます」「ありがとうね」
私と母さんがお礼を言うと首を横に振り。
「お役に立てたのであれば幸いです」
そう言って蓮花ちゃんの方に行って時間を告げる。
それを聞いて寂しそうにするが頷いて荷物を取りに行く。
ログイン前に荷物をまとめて帰る準備はしてあったけどさっきまでやっていたゲームの機器がまだだからだ。
私達が部屋に見に行ったときにはもう帰るだけになっていた。
「私の我が儘で年末からお世話になりました。ありがとうございます」
「気にしなくて良いのよ。楽しかったしお世話になったからね」
お礼を言う蓮花ちゃんに母さんが返事をする。
もう車は下に来ているそうで楓さんは挨拶をして先に降りていった。
「また今度遊びに来ますね」
「うん、楽しみにしてるよ」「蓮花、またゲームで遊ぼうね~」「気をつけてね~」
「そうですね。またゲームで」
笑ってそう言うと蓮花ちゃんは玄関を出て行った。
「ちょっと寂しくなるわね~」
母さんがそんな事を言うので私達は頷いた。
お見送りをした私達は部屋に戻る。
「良い子だったね~」
「そだね~。下まで見送りに行けば良かったかな」
「断られちゃったし仕方ないよ」
私達が玄関でお見送りをしたのは蓮花ちゃんがここで良いと何度も言ったからだった。
私を気遣ってくれた部分もあったんだとは思うけど荷物を取りに行ったときちょっと泣いてたみたいだった。
もっと遊べればと思うところはあったけど蓮花ちゃんの御両親が今日帰ってくるそうで夕食を一緒に食べるのだそうだ。
「またゲームでは一緒に遊べるからね」
「そうだね~」
2人とも泣いてたのは気づいてたみたいだけど言うつもりはないみたいだった。
言う必要のない事だしね。
「それよりも…」
2人が買ってきた物を広げているけど結構いろいろ買ってきていた。
その中には私が頼んだ物もあってそれを受け取る。
楓さんが使っていたスキンケア用品を聞いて買って来て貰ったのだ。
「頼まれたの買ってきたけど、揃えるとそれなりにお値段するね~」
「上を見るともっとキリがないけどね」
教えて貰ったのは価格抑えめだったのだそうだ。
日々のお手入れが大事だと念を押された。
何もしてなかった時期が続いてただけに耳が痛かったよ。
「ぁ、そういえばお姉ちゃんはゲームで貰ったお年玉どうした?」
年明けにチーム内で胡散臭いと言われ続けている創使さんの株がちょっと上がった事が1つあった。
それがゲーム内でのお年玉だ。
掲示板ではゲーム内通貨と予想されて期待されていなかった。
しかしメールを開けるとそこには課金通貨が入っていたのだ!
ちなみに金額は3000。
コレには多くのプレイヤーが歓喜の声を上げたのだそうだ。
それを見た住人は痛い人を見る目を向けてたらしい。
那月の質問に私は…。
「うん、もう全部使ったよ」
「「えっ!?」」
2人に驚かれてしまった。
「何に使ったの!?キャラクタークリエイト券は見た目変わってなかったはずだから使ってないけど持ってるとか?」
「ううん」
「初心者用補助装備ですか?課金のアイテムはサイズがプレイヤーの状態で変わるし重さも変わるから一部の種族に人気らしいですし」
「へー、そんなのあったんだ?」
私がそう言うと2人とも頭を抱えていた。
「お姉ちゃんいつ使ったの…?」
「貰ってすぐだよ」
「すぐ!?」
「勿体ない勿体ない……」
穂風ちゃんは驚き那月はテーブルに突っ伏して呪詛のように呟いていた。
「ホントに何に使ったんですか?」
「今度見せてあげるよ」
買ったのはもちろんドレスやアクセサリーだ。
以前見てた物で気になってたのを覚えていたんだよね。
貰った課金通貨を見た瞬間についショップを開いて買ってしまいました。
誰にもお披露目してないけどみんな揃ってるときにって考えてる。
ちなみにドレスの性能は初期装備と同じでアクセは見た目以外に何も変化はないみたいだった。
一度装備してみたけどアクセサリーの枠を使ってたからホントに見た目だけみたい。
もちろん買ったのは全部雪を連想する物ばっかりだ。
でもまだ気になるのが何点かあったからいずれ買いたいなーとは思ってしまう。
「あー、じゃあガチャチケは?」
突っ伏して那月が起き上がってそんな事を聞いてくる。
何のことだろうと首を捻っていると。
「ゲーム初日に宿で泊まったら貰えたヤツだよ~」
「ぇー、なっちゃん私貰ってないよ!」
「だって穂風が始めたの初日からじゃないじゃん!」
そう言われて思いだした。
「まだアイテムボックスにあったと思うよ」
「あれ、そうなんだ。てっきりもう使ってるのかと思ってたよ」
「どこで使うかわからなくて…」
「水着ガチャのメニューで使えるからインした時に見てみるといいよー」
「わかった」
そんな話をしてゲームの話を一旦やめた。
穂風ちゃんは機器を持ってきてるわけじゃないから何をしようかという話になる。
那月が持ってたボードゲームをやろうと提案してきて面白そうだからやり始めたんだ。
最初はやった事のなかった私がルールを覚えながら3人でやってた。
しかし楽しくなってくると笑い声が大きくなるよね。
そして母さんが降臨した。
「何か面白そうな事やってるわね。混ぜて」
そう軽いノリで参加してきたのだった。
いざゲームを始めると母さんの無双ゲーだって那月が言うくらいだった。
楽しくなかったかと言われるとそうではなく逆により白熱していた感じだった。
しかし白熱しすぎたため遅い時間まで遊んでしまった。
穂風ちゃんが帰るときにはご飯の準備もお風呂の掃除もしていなかった。
「今日はピザにしましょう」
「私お風呂掃除してからお湯入れてくる」
2人は真面目そうな顔でそう言うと部屋を出て行った。
私も一緒になって騒いでたので否はなかった。
ゲームの片付けは私がやっておいた。
ちなみに夕ご飯はピザと野菜スティックにコーンポタージュと言う内容だった。
流石にMサイズでも3枚は多かったようで残ってたから明日の朝ご飯になるのかな。
食べてから休憩をして、久しぶりに那月とお風呂に入る。
途中でまたも母さんが乱入してきて姦しくなった。
お風呂から出ると3人でスキンケアをした。
そうしているとつい笑いがこぼれ、こういうのもたまには良いかなと思った。




