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街の噴水に転移すると時間的に人通りも多いためかなり目立つ。
思いっきり注目を浴びてるね。
ガイさん達は気にはしてるみたいだけど、堂々と歩き始める。
「急いで移動しない?」
ルナが気にしているようでそんな事を言う。
「まぁ、目立つのは他のヤツらが転移装置を手に入れるまでだからそれまで我慢だな」
「堂々としてりゃあ良いんだよ。悪い事何てしてねえんだから」
「私もこんな格好してたから初日は大分見られたわね~」
私もルナと同じ思いだったんだけどガイさん達は早く移動する気は無いみたい。
逆に堂々としてる。
「確かに気にしすぎだったかもしれませんね」
「えー、私は注目されるのは慣れないし苦手だなぁ」
「よく考えたら私は避けられる方が多かったので悪くないかもしれません」
シュティはルナと話してるけど意見が分かれてる。
その原因はシュティが対人ばかりしてたせいみたいだけどね。
「当時は目を合わせたら狩られる、なんて噂もありましたからね」
楽しそうにそんな事を言うけどやり過ぎだからね。
普通そんな事にはならないと思うんだよ!
そういえば静かな後ろを見てみる。
アエローちゃんとスノウさん、リグさんがいるはずだけど…。
リグさんに買ってきて貰っているようで2人は串焼きを口にしてた。
私に見られたのに気づいたのかスノウさんはちょっと赤くなってる。
アエローちゃんは両手に肉串を持って交互に食べてた。
見られていても気にしてないようだ。
あ、リグさんが別のお店でまた買って来たみたい。
「ん、ユキさんもいるか?」
聞かれたけど首を横に振る。
さっき朝ご飯食べたばっかりだしね。
今持ってる肉串を渡そうとされても受け取れないし食べたらまずい。
飛べなくなっちゃうよ。
「ぁー、2人して美味しそうな物食べてる!」
ルナがリグさんの確認で気づいたみたいで声を上げた。
リグさんは余分に買って来ていてルナに1本渡している。
シュティは断って、ガイさん達はこっちを見て笑っていた。
ルナが食べ終わる頃にはギルドに到着していた。
元々転移装置になってる噴水からそこまで距離があるわけじゃないしね。
中に入ってカウンターを確認すると大分落ち着いてきたみたいで、並んでる人は多くない。
逆にテーブルの方は多く人がいてこっちを観察するように見る人、お酒を飲んでいる人、カードゲーム?をしている人もちらほらいた。
真面目そうな人はモンスターが載ってる冊子や薬草の載ってる冊子を開いていたりクエストの確認をしているようだ。
ぞろぞろと全員で並んでも邪魔になるのでルナと私が並ぶ事にした。
待ちきれないのか、ルナは忙しなく動いている。
ほっぺをペチペチと叩けば照れたように笑ってジッとする。
しばらくして私達の順番が来る。
「次の方、どうぞ」
「はい!」
ルナが勢いよく返事をしたため多くの人がこっちを見る。
返事をしたルナはそれに気づくと顔を赤くしてカウンターに進む。
「ふふ、元気が良いですね。今日は何のご用でしょうか?」
ルナはまだ顔を真っ赤にして俯いている。
私が言った方が良さそうだね。
「チームの結成をしたいのですけど」
「はい、チーム結成の申請ですね。係の者が向かいますので、他のメンバーの方と先に個室に行って頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい、わかりました」
他のメンバーのところへ説明して個室へ入る。
通された個室は普段私が案内されるテーブルに椅子が4脚だけの部屋でなく会議室のような広めの部屋だった。
部屋の奥にはボードのような物があり黒板みたいな使い方をするんだと思う。
普段通される部屋のテーブルを4つくっつけてあり広めに使えるようにはなっている。
イスは黒板のない面に4脚ずつ計12脚置いてあった。
適当に座って待つ事にする。
少しすると担当らしい職員が入ってきた。
「お待たせしました。この度はチームの設立でお間違いなかったでしょうか?」
「はい、間違いありません」
確認に私が答える。
一応チームマスターの予定だしね。
職員の方は嬉しそうにしながら書類を確認して記入していく。
書き終えたのか手に持って確認すると私の方へ差し出してきた。
見ると幾つかの項目が空欄だった。
「空いているところの記入をお願いします」
そう言われてペンをもっ…。
持てるかー!
頑張って持ち上げようとするけど重くて手放した。
ペンはコロコロとテーブルを転がる。
肩で息をしながら周りを見ると和んでいるような感じ…?
「お姉ちゃん凄く可愛かった」
そう言ってルナにサムズアップをされる。
何人か肩をふるわせているところを見ると、笑いを堪えてるんだろう。
「妖精さん、念力を使えば良いんですよ」
シュティに言われて思い出す。
そういえば今は氷像を浮かせていたから近くに下ろしてっと。
念力でペンを操って紙の上へ持って行くと入力画面が出る。
記入したい事を浮かべるとスラスラとペンが動き書いていく。
チーム名と代表の名前を書いた。
「チームの拠点は申請しておきますか?」
職員の方に聞かれて紙に視線を向けるとホームの名前や場所を書くところがあった。
「いえ、拠点はあるんですけど場所は秘密にしておきたいんですが…」
「わかりました。拠点があるのでしたら名前だけでも登録しておきますか?」
どうしたほうが良いんだろう。
『後でも良いのか確認しては?』
考えているとシュティがPTチャットで助言をくれた。
何も考えてなかったからそれに従う。
「今は思いつかないので今度にします」
「わかりました。では拠点がある事は記入しておいてください」
名前や場所の前に拠点の有無を確認するチェックボックスがあったので有にチェックした。
「はい、ありがとうございます。メンバーの方は今いる方々でよろしいければ記入させて頂きますが?」
「お願いします」
職員の方は用紙を手元に持って行き記入していく。
「これで問題は無さそうですね。後はお金の方をお願いします」
手に持って確認しているようで目が忙しなく文字を追っている。
問題はなかったらしく笑顔でこちらへ向く。
最後にお金の支払いだ。
リグさんから受け取ったお金を表示されたウインドウに入力して決定する。
「はい、確かに間違いなく頂きました。最後にギルドカードの更新をするので順番にかざしてください」
《チーム「雪月風花」を結成しました》
そう言ってギルドカードを作ったときの読み取り機を、取り出しテーブルに置いた。
私から順番にギルドカードをかざしていく。
かざしたギルドカードには新たに所属チームが表示されていた。
チーム名は同じのが使えないから私達だけのチームだ。
カードを見ていると嬉しくて笑みがこぼれる。
皆を見上げると同じだったようで嬉しそうにしていた。
「チームの結成おめでとうございます」
「「「「「「「「「「ありがとうございます」」」」」」」」」」
「ふふ、いえいえ。こちらこそお礼を言いたいくらいです」
お礼を皆で言ったら職員の方にそんな事を言われた。
「えっと、何でですか?」
「ギルドではユキさんの事を注目してたんですよ。もちろんルナさんとシュティナさん、ガイさん達の事も注目していました。そんな皆さんがチームを組む、そのお手伝いができるなんて嬉しくて!」
力強くそう言って拳を握る職員さん。
私はギルドでやらかした事が何件か有ったからそれで注目されてたのかな。
「それよりもチームの説明に移りますね。登録されたチーム名はギルドで掲示されるのでご了承下さい。冒険者ギルドで皆さんが利用されると思うのはチーム専用の依頼でしょうか」
へぇ~、そんなのあったんだ。
βの事を調べたときはそんな情報なかったんだよね。
『βの時にチーム専用依頼はあったの?』
『βにあったチームは自称だったんですよ』
『だね、チーム毎に決めた目印を身につけてただけで実際のチームはなかったからギルドカードにチームはなかったんだよ』
シュティとルナが教えてくれたけどβの時はチームがなかったみたい。
「チーム専用の依頼はカウンターで直接受注して頂く事になります。内容は討伐、採取等変わらないのから開発と私達が呼んでる特殊な物もありますね」
「特殊って言うのはどんな内容なんですか?」
「そうですね…、少々お待ちください」
少し悩んでから職員の方は席を立ち部屋から出て行った。
すぐに戻ってくるとその手にはファイルのような物があった。
「実際にお見せした方が良いかと思って持ってきました」
そう言ってファイルのような物から数枚の依頼書らしいのを抜き取ってテーブルに並べる。
ルナや気になる人が身を乗り出して覗き込む。
「今出したのは未到達地域へ続く道の整備、拠点の構築に地図の製作になります」
「おぉー」「面白そうだな」
ルナやガイさんが声を上げて反応してシュティやラギさんは専用依頼を見ながら何か考えているようだ。
私も見てみると必要予想人数や期間が書いてあるし必要な材料はギルドからも多少は出るみたい。
人手が足りない場合は職人を雇うのを仲介してくれる事が書いてあった。
「見て頂くとわかると思いますが冒険者ギルドだけじゃなく商業ギルド、職人ギルドが関わってくる事もあります」
物資に関しては商業ギルド、人手は職人ギルドから出るんだね。
何かちょっとリゾート開発っぽい感じになってきたかな。
「理想としましては拠点を構築して警備を常駐させ転移装置での行き来ができる事だとは思うんですが…」
「そ、そうですね…」
「ぁ、ユキさん達は悪くないんです。どのギルドも予算不足で領主様も頑張ってくださっているのですが中々難しいようで…。どこかで鉱物が採れれば変わると思うんですけどね」
困ったように職員さんは笑った。
転移装置の材料になる魔鉄と思われる素材はアイテムボックスにそれなりにあった。
多分これを取り出すとまた問題になるんだろう。
シュティの方をちらっと見ると首を横に振っている。
やっぱりまだ言うのはやめた方が良いみたい。
「おう、もう終わったか?」
そんなとき扉が開きルガードさんが覗き込んでいた。
「ルガードさん!ちゃんとノックはしてくださいよ!」
「悪い悪い。嬢ちゃんが来てるからまたとんでもない案件持ってきてるんじゃないかと思ってな」
ルガードさん鋭い!
用事があったから来てくれたのは丁度良いかも。
「お、その顔は当たりか」
「今は私が担当ですよ!」
「わかった、わかった。終わるまで壁際にいる」
そう言って中に入り壁際にイスを持って行き座った。
「むー。チームに関してですが何か質問の方はありますか?」
ルガードさんを睨んでいたがすぐに笑顔に戻ると質問があるか確認された。
「チームは異人だけで組むんですか?」
「いえ、普通に住人も入れますよ。転移装置も使う事ができますね。ただ転移装置があると言う事は聞いていても使った事がある住人が殆どいないのでユキさん達が目立ってしまっているんだと思います。すみません」
住人も転移装置の事は知ってたんだね。
「補足すると今あるギルドが把握している転移装置は噴水のと遺跡にある2つだ」
ルガードさんが教えてくれる。
アレ…?
「以前遺跡で見つかった転移装置は機能が停止してるって言ってませんでした?」
「見つかったのは停止してるぞ。動くのは後付けに決まってるだろ」
なるほど、解析して作った魔道具を設置したって事かな。
職員の方を見ると不満そうにしていた。
それを見たルガードさんは肩をすくめただけだ。
「私はチームの事で他に気になる事はないです。気になったときは聞きに来れば良いですか?」
「はい、その時は言ってくだされば空いてる職員が対応します。基本的にチームに入った事で変わるのは拠点と専用依頼ですので」
「みんなは聞いておきたい事ある?」
確認すると今は思い浮かばないよう各々首を横に振った。
「ないみたいです。ありがとうございました」
「いえ、これからもよろしくお願いしますね」
「「「「「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」」」」」
さてと…。
「とりあえずあの件を話そうと思うんだけど時間掛かるかもしれないし別行動にする?」
「そうですね。各自の判断で解散にしましょうか」
「だな。すまんが俺は年明けまでインしないと思うからイベント不参加になる。俺の分まで楽しんでくれ」
シュティが同意するとガイさんが拠点で言っていた通りイベントの不参加を告げる。
「私も31日は予定があるから参加できるのは明日かな」
「このリア充が!」
「はいはい、早くルナも相手を作りなさいよ」
アエローちゃんが現実で31日の不参加を言うとルナが噛みつくように言う。
軽く流して勝ち誇ったように反撃している。
以前ルナがアエローちゃんに対して言ってたのは彼氏との予定で買い物がずれてサービス開始してからだったからなんだね。
「私もちょっと予定が決まってないので決まったら連絡します」
シュティもまだ予定が不確かみたいだ。
「んじゃ、俺は戻るな。後はよろしく頼む」
私が礼を言うとガイさんが立ち上がって私達に声をかけてくる。
それに頷いたのを見るとガイさんは部屋を出て行った。
「みんなは大丈夫?」
「どうなるか気になるしな」
「私も大丈夫よ」
「私はお姉ちゃん待ち。終わったら買い物行こうよ」
「ユキ様と買い物ですか!お供しても?」
「もちろん!」
他のメンバーは急いでないようで残るみたい。
それにルナとスノウさんを中心に買い物に行くのが決まったみたい。
「とりあえずお前さんはチームの説明終了だろ?戻って良いぞ」
「何でですか!?私も気になります!」
ルガードさんが戻るように言うが、職員の方は話す内容が気になるようで残ろうとしている。
「口は硬いですか?」
「外に言う事は無いだろうが中では言う可能性があるな」
私がルガードさんに聞くとそんな答えが返ってきた。
職員の方は私の方を見てくる。
「すみません」
私はそう言って頭を下げる事しかできなかった。
「わかりました…」
職員の方はがっくりとした様子で席を立ち扉の方に向かう。
途中で止まってこちらをちらっと見る。
「良いからサッサと行け」
ルガードさんにそう言われて部屋からとぼとぼと出て行った。
ちょっと申し訳ない気がするけど内容が内容だからね。
ルガードさんは扉の方に近づき何かを操作する。
そしてテーブルの方にイスを持ってきて座った。
「さてと、嬢ちゃん今日はどんな案件だ?」
何か私を指定して聞くのはどうなんだろうね。
大体私が原因だから間違ってはいないんだけど…。
「それよりさっき操作してたのはなんですか?」
「防音の魔道具だな。嬢ちゃんの持ち込む案件には使えって上から指示が出たんだよ」
「へー、そんなのがあるんですか。でも何ででしょうね」
私が返事をすると半眼で睨んでくる。
話題を変えるために話を切り出す。
「今回持ち込んだのは拠点で撮れた景色です」
「ああん?どうやって持ってきたってんだ?」
「テーブル使わせて貰いますね。《イリュージョンベール》」
拠点で使ったときと同じように机の上に景色が映し出される。
今回はスノウさんが撮ったのではなくて、アエローちゃんが撮ってきたのだ。
「おいおい…。これはまたとんでもないな。だがこれが事実だとどうやって証明するんだ?」
「それに関しては可能性を異人に伝えるだけでも違うと思います。可能性があれば準備をするのが普通です」
ルガードさんの質問にシュティが返事をする。
「ふむ、まぁそうだがなぁ…。一応大体のメモだけはしておくか」
そう言ってボードの方へ行くと書き込んでいく。
「これは街の東側であってるか?」
「東側だよー。後北側も撮ってきてる」
「おう。西と南はねえのか?」
「撮ってあると拠点の位置わかっちゃうでしょ?」
「なるほどな。2方向でも十分な情報だ。予想するにもな」
そう言ってニヤッと笑うルガードさん。
ルナとやり取りしながらテーブルを見ながらボードに東側を書き終える。
「次頼む」
ルガードさんに言われて今かけてるのを解除してかけ直す。
「《イリュージョンベール》」
「ほうほう。森の先がわかってなかったからこれは助かるな」
そう言ってルガードさんは書き足していく。
「それにしてもどこからの風景だ。森だと大樹か?あー、何か嫌な予感がしてきたぞ」
書きながらもそんな事を呟く。
「よし。それで世界樹なんてもんあの森になかったはずだが、嬢ちゃんまたやらかしたんだな」
「お姉ちゃん!」
「この慌てよう確定か…」
ルガードさんが言った直後ルナが反応した。
あー、誤魔化そうと思ったけど反応しちゃったかぁ。
私達はルナの方を見る。
「え、えっ?…あっ、私やっちゃった?」
「ルナ、アウトー!」「これは昼食ルナちゃんの奢りね」「鎌かけてるのに気づけよな…」
アエローちゃんとプリメラさんは楽しそうに、ラギさんは呆れている。
シュティは溜息をついていた。
「とんでもない案件だったな。あいつ追い出して置いて正解だったぞ…」
ルガードさんは遠い目をしていた。
「この事は…」
「言えねえな。領主には一応伝えた方が良いかとは思うが…。商業はダメだろう。職人も微妙か」
ルガードさんはどうするか考えているようだ。
「やっぱりまずいですよね?」
「まずいなんてもんじゃねえな。王国内だけでも揉める案件なのに帝国にバレたら戦争になる」
「帝国って言うのは?」
「あー、本土の方にあるもう一つの国だな。ここの領主は王国の人間だからな」
仲は良くない感じなのかな。
いや、世界樹が自国にあるかどうかが益に繋がる思うのかな。
奪ってでも手に入れるって考えになるんだろう。
「嬢ちゃんは話してくれてないがな。一度世界樹の話を聞いていった事があるから、さっきの情報と合わせて鎌かけたんだ。悪かったな」
ルガードさんはそう言ってルナを見る。
当の本人は自分の失敗に責任を感じて泣きそうになっていた。
今回の事は予想をできるようにしてしまった私にも責任がある。
なのでルナの方に飛んでいく。
「大丈夫だよ。予想を立てられるようにしちゃった私のミスだよ。それとルガードさんにはいずれ相談するつもりだったから気にしないで」
「ご、ごめ…ごめんなさい…うぅぅ…」
零れていく滴を手で拭ってあげる。
こういう時小さい身体だと抱きしめてあげれないから不便だね。
そう思っているとルナの事をシュティが引き寄せて抱きしめる。
「妖精さんも大丈夫って言ってるでしょう。大事なのはこれからですよ」
そう言いながらも優しく背を撫でる。
「うわぁぁぁ…」
シュティに顔を押しつけ本格的に泣き出してしまった。
「あー、ほんとに悪かったな。やりすぎたか?」
「大丈夫ですよ。シュティ、ありがとね」
「ルナは大切な仲間ですので」
そう言って私がしようと思った事をしてくれるシュティがいるのは凄く助けられてると思う。
「とりあえず嬢ちゃん達の拠点は機密扱いだな。領主に話すかは…、面倒だし年明けに考えれば良いだろ」
「わかりました。ぁ、拠点でこんな物が採れたんですけど」
そう言って採れた鉱石を取り出しテーブルに置く。
「これは魔鉄か。なあ、嬢ちゃん自重って知ってるか?」
「一番ヤバイ秘密を打ち明けたのでコレくらいは良いかなと」
「どれくらいの量が採れてる?」
そう言うと買い取りのウインドウが表示されたので手持ちを全部入れる。
流石はルガードさん、一目見ただけで魔鉄と判断していた。
正直なところ私達は鑑定しても鉄鉱石としかわからなかったから予想していただけだったために助かる。
「ふむ、どれくらい掘った?」
聞かれて答えれなかったのでボルグさんの方を見ると察してくれたのか手持ちの紙に書いて渡してくれる。
それに目を通していくルガードさん。
「思ったより量は採れてないのか?そういや森の中だったか」
何やら考え込んでいる。
「現状は自分たちで使おうかと思ってます」
「それが良いだろうな。わかってると思うが世界樹の素材は絶対に出したりしてバレるなよ」
そう言われて頷く。
「これどこかで加工してもらう事ってできますかね?」
「なぁ、嬢ちゃん隠す気あるか?」
そう言って睨まれたので目をそらすが加工して貰えないと使い道がないんだよね。
加工したいけどうちのチームは鍛冶のできる職人がいない。
できる人に頼もうとすると魔鉄がとれる事が知られてしまう。
中々難しい問題になりそう。
「まったく。こっちでも信用ができる職人がいたら紹介してやる」
「お願いします」
うーん、用事は終わりかな?
移動するにもルナが落ち着いてからにしたい。
「もうちょっと此所使っても良いですか?」
「おう、構わないぞ」
「大掃除の7日間、わかる人だけどうするか決めておこうか」
ガイさん不参加、アエローちゃんとシュティが不明。
スノウさんとリグさん、プリメラさんとラギさんボルグさんに私とルナかな。
横からスッと紙が差し出される。
そこには1~7まで数字が横に書かれ、数字の間には縦に仕切りが入れてあった。
予定表かな。
「ボルグさんありがとうございます」
そう言うとボルグさんは23467の所を指で指した。
しかし手に持っていたペンを見て私を見た後、自分で指したところに名前を書いていった。
「ボルグ、私も同じで」
プリメラさんがそう言う。
「俺は1日目ちょっと様子見てから考えるわ」
ラギさんは予定はないみたいだけどはっきりとは決めれないみたい。
「私とルナは467になるかな。早く終われば3も来れるかな」
私達は1日目と5日目は深夜になるから寝てるし2日目は部屋の掃除をする予定だ。
「ユキちゃん達はお部屋の掃除かしら?」
「はい、その予定です」
「わたくしも23467でしょうか。お兄様はどうなさる御予定ですか?」
「俺もラギさんと同じで様子見て考えるつもりだ」
書き終えた紙はボルグさんがしまった。
「ボルグさん、予定表拠点のテーブルに置いて貰って良いですか?」
私が言うと頷いてくれた。
なのでインできるところは書き込んでいって貰えば良いかな。
「そういや嬢ちゃん」
「はい?」
黙ってたルガードさんに声をかけられる。
「遺跡の方にはいつ降りる予定だ?一応事前に決まってれば俺の方で申請書作っておいてやる」
あー、どうしよう。
考えてふと顔を上げるとみんなが私の方を見ていた。
ルナはまだちょっと涙を拭ってる。
氷を出すと察してくれたシュティが布で包んでルナに渡している。
目を冷やすためだ。
「一応4日目で予定してもいいかな?」
私が見上げて確認をするとプリメラさん、ラギさん、スノウさんは頷いてくれてボルグさんはサムズアップをしている。
反対意見はないようだったので現実だと明日の夜に予定を決めた。
「わかった、4日目だな。来たら声かけてくれ」
そう言って楽しそうに笑っているルガードさん。
「何か楽しそうですね」
「当然だろ。世界樹の主が遺跡で何しでかすか楽しみに決まってる」
「そんな簡単に何かあるわけないじゃないですか」
「そうだな」
にやにや笑ってるルガードさんは気にしない事にした。
「とりあえず大掃除の事はこんな感じでよろしく」
そう言うと返事をくれた。
まだルナは落ち込んでいるのかいつもの元気がない。
「ルナ、買い物行くんでしょ?落ち込んでないでよ」
そう言って指を引っ張ると頷いてようやく笑ってくれた。
笑ってる方が可愛いからね。
「ルガードさんありがとうございました」
「おう、嬢ちゃんまた…ってちょっと待て」
氷像を浮かせてルナの指を引っ張り部屋を出ようとすると待ったが掛かった。
「忘れもんだ」
そう言ってウインドウが開いてお金が表示される。
「これは?」
「情報料だ。確認ができ次第追加で払う」
「不確かなのに良いんですか?」
「まず間違いないだろうからな。何だかんだ言ったが嬢ちゃんは信用してる。川とかある程度地形が確認できたのは大きいんだよ」
そう言われてお金を受け取る事にした。
一応チームの資金と考えておいた方が良いかな。
メモしておこうっと。
「では今度こそ失礼します」
「おう、またな」
ルガードさんに挨拶をして部屋から出るとそのままギルドを後にした。




