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凄まじい暑さを感じて目を開く。
眩しいくらいの日の光に思わず手を顔の前にかざす。
ハッとここに飛ばされる前に言われた事を思いだした。
急いでメニューを開きステータスと書かれている所をタッチする。
「メニュー」
名前:ユキ
種族:スノーフェアリー
性別:女性
HP: 94/100
MP:250/250
SP: 50/50
とりあえずHPの項目を見ると減ってる!
街中だよね?
関係なく減ってるよ!
5秒に2ずつぐらいかな。
どうしよう、どうしよう。
暑さに弱いって事はとりあえず移動しなきゃ。
人が多い中、宙に浮き周りを見渡す。
後ろに噴水があったので迷わずそっちに飛んだ。
噴水の縁で日陰になってる所へ下りる。
ちょっと体感温度は下がった気はするけどまだ暑いしステータスを見るとHPも減ってる!
開いていたメニューのページを戻し魔法の項目を選択する。
そのまま迷わず氷魔法を選んで氷生成を使う。
消費MPは1で形状はぱっと浮かんだかまくら。
できたかまくらっぽいのは1センチぐらいの薄い氷でできていて私が座って入れる大きさだ。
入ってしばらくステータスを見るとHPの減少が止まってる。
ふぅ、助かった…。
改めてステータスを確認しよう。
名前:ユキ
種族:スノーフェアリー
性別:女性
HP: 38/100
MP:249/250
SP: 50/50
STR:5
DEX:11
VIT:5
AGI:14
INT:13
MND:17
LUK:10
スキル
・氷雪妖精
・氷属性魔法
・風属性魔法
・水属性魔法
・空きスロット
・空きスロット
・空きスロット
・空きスロット
・空きスロット
・空きスロット
ボーナスポイント:20
所持通貨:2000G
通貨の単位はガルらしい。
スキルの空きスロットって何だろう。
ボーナスポイントも使い道がわかんない。
それに飛ぶ能力と念力はチュートリアルで教えて貰ったんだけどどこにあるんだろ。
ここに移動するのに飛べたから無くなってはいないと思う。
とりあえず聞いた事もないのがスキルの一番上にあるから説明を見ておかないと。
氷雪妖精
・飛行移動
・念力
・氷属性魔法を初めから使用できセットスキルから外すことができない。
・氷属性魔法を使う時の消費MPが減少し効果が上昇する。
・周囲の氷や雪が溶けなくなる。(範囲は変更可能)
・暑い場所では5秒間で2%HPが減っていく。
・装備や手持ちの重量が5になった時点で飛べなくなる。
・肉類を食べると一定時間飛行移動が無効になる。
・効果は状況により変化する。
飛行移動が飛ぶ能力みたいで念力も一緒になってた。
うーん、暑い場所って曖昧すぎる。
もしかして私が暑いと思ったらダメージ受け始めるとか…?
怖いから試したくない。
体感温度が高いのは確実にダメージは受けそう。
そうなると砂浜はきっと照り返しとかで熱そうだしまずいよね。
街中もできる限り日陰を移動した方が良いのかな?
重量制限の5って単位がないけど、どれくらいだろう?
お肉がダメって事は野菜とかフルーツがメインになるのかな?
うーん、わからないことばかりだけどゲームって色々制限があって大変なんだね…。
そんな事を考えながらも時間が経ってくると落ち着いてくる。
周りの事が気になってきたのでキョロキョロと辺りを見渡す。
いろんな人がいるけどプレイヤーと住民の区別つかないかも。
ヒューマンが1番多い印象かな。
エルフやドワーフが次いで多い気がする。
犬耳や猫耳の獣人も見かけるけど人それぞれ毛色や耳の形、尻尾が違って個性がある。
二足歩行の顔がイノシシで体も毛深い人がいる。
あの人も獣人なんだよね。
獣人って思った以上に見た目変えられるんだね。
他にもいろんな人がいて見ているだけでも飽きないなぁ。
街は木造の建物が多いみたいだけど石造りの建物もあるね。
露店なんかも色々あるみたい。
ここから見た感じ服屋に武具が飾ってあるお店にアクセサリー屋さん、串焼き等の食べ物屋に海辺の街だけに海産物も多そう。
時々吹く海風が潮のかおりを運んでくる。
海かぁ、惹かれる気はするけど暑そうだし昼間に行く事はなさそうだね。
氷のかまくらの中で涼みながら辺りを見ているとメニューの上に手紙のマークが。
メールかな?
選択してみると妹の那月からだ。
こっちではルナって名前でやってるんだ。
月の女神の名前だっけ?
[早く合流したいよー。どこー?(T_T)]
[噴水の縁でかまくらに入って涼んでます]
これでよし、送信っと。
待ってれば来てくれるでしょ。
私が探して回るとHP無くなりそうだもんね。
しばらく待つこと数分。
「えっと、お姉ちゃん…?」
しゃがんでかまくらの入り口を覗き込んでいる女性。
髪は金色で肩ぐらいまでの緩いウェーブのかかったセミロングで碧眼。
綺麗と言うよりは可愛いという風貌。
んん。
当たり前だけど現実と容姿は違うし体の一部は盛ってあるみたいだけど妹の面影がある。
「ルナー?待ってたよ」
「どうしてそんなに可愛くなっちゃったの!?と言うかそんなに小さいと抱きつけない…」
抱きつけないって…、最近よく抱きついてるから良いじゃない。
「選択できる種族見たとき私の中で選択肢がなかったんだよ」
「ぇ、そんなに酷かったの?でもヒューマンは絶対選べたはずだけど…」
うーん、とうなって考えだすルナ。
「種族名がスノーフェアリーなんだ」
「あぁ!なるほど、それなら仕方ないね」
ヒントを出すと理由に納得できたようで嬉しそうに頷いている。
那月も私と同じで雪月風花から一文字とってつけられてる。
その為母さんに名前の由来をよく語られてた私達は意識する様になってたんだと思う。
私は雪に関係するのを好むし那月は月に関係する物が好きになってる。
お互いそれがわかってるから通じた。
「それより移動するんだよね?」
「ぁ、うん。出てきて移動しよう」
やっぱり出なきゃダメだよね。
移動するんだもんね。
「ゴメン、無理」
「えっ?何で!?もしかして私と一緒に遊ぶの嫌になっちゃった?」
そう言って悲しそうな表情になるルナ。
言っちゃって良いのかな。
「そうじゃなくて…、説明したいんだけど、ここで内緒話しても大丈夫?」
確認の為に聞いてみる。
ルナにゲームではあまり自分の能力とかはあまり口にしちゃダメって言われた。
なので聞くとルナは周りを確認する。
噴水の周りにはプレイヤーと思われる人が今も沢山いる。
「あー、今からPT飛ばすから入ってー」
そう言うと効果音が鳴ってメニューの上に握手してるアイコンが出る。
これを押せば良いのかな?
押すと、《ルナがPTに招待しています。参加しますか?》と表示された。
yesとnoが選択肢で出たのでyesを押す。
『これでよしっと、お姉ちゃん説明って?』
頭に響くように声が聞こえてくる。
ルナの口は動いてない。
どうやったかわからないけど周りの人には聞こえないみたい。
『あー、てすてす。できてる?』
声には出さずに考えを思い浮かべる。
できてるかわからないから確認だ。
『できてるできてる。と言うかチュートリアルで教えて貰えたよね?』
『ううん、特殊チュートリアルって言うのを受けて妖精のできる事と魔法の練習しただけかな?』
『え、普通の飛ばしちゃったの?』
『んー、いきなり特殊なのを受けるか聞かれたよ?』
『えー、バグか何かかな…。後でやり方教えるから運営に確認しよう』
『お願いね。それで話戻すけど移動できない理由だけどね』
『うん』
『スノーフェアリーってスキルの1つに書いてあったんだけど暑さでダメージ受けるの』
『えっと、暑さでダメージ?昼間の活動ほぼ無理?』
『この中ならダメージが止まったよ。5秒で2%のダメージみたい』
『結構極悪だぁ…。それって今みたいに日に当たらない様に覆ってないとダメなの?』
ルナに言われて試す為に上半身だけ出てみる。
かまくらの中でもぞもぞと動いてうつ伏せの状態で外に出る。
外に出てステータスのHPを見ているが減ってる様子はない。
時より吹く風がかまくらの影響か涼しく感じる。
『問題無さそう。氷が周りにあれば良いのかな』
そう言ってルナに手を振る。
嬉しそうに手を振り返してくる。
試しにかまくらの外に出てみるけどHPは減ってない。
『みたいだね。そうなるとお姉ちゃんが入れて首からかけれる鞄みたいなのが欲しいな』
『氷入れるから重くなるよ?』
『お姉ちゃんといる方が大事。探してくるから待ってて』
そう言うと走り出すルナ。
露店を巡って探すようだ。
『露店巡り良いなー』
『私もお姉ちゃんと見て回りたいからまずは一緒に行動できるようにしないとねー』
数分後、戻ってきた妹が持っていたモノは肩掛けできそうな紐の付いたバッグだった。
中は何の素材かちょっとわからないけど銀色に光ってる。
何となく魚の皮っぽい感じもするし現実にある素材では無さそう。
『このサイズの保冷バッグなら蓋しなければ良さそうじゃない?』
『保冷バッグなんだ…。移動できるなら何でもいいけどね』
良いけどこれは扱いとしてどうなんだろう。
キャー、食べられちゃうー。
なんちゃって。
ふざけたことを考えながら保冷バッグの中にぴったりサイズの水槽みたいな薄い氷を作る。
氷生成はこれで三回目だけどコツ掴んだんじゃないかな?
さて、ルナが噴水の縁に寄せてくれたけどふわりと浮かび保冷バッグの中に入る。
移動してる間に家具とか作っちゃおうかな。
あ、重くなるからやめておこう。
『お姉ちゃんとったぜー!』
『キャー、食べられちゃうー』
くだらない事考えてたと思ったけど言う事になるとは思わなかったな。
『うへへへ』
笑い方と言葉遣いでせっかく可愛いのに台無しになってる。
と言うかちょっとエロ親父っぽい?
残っていたかまくらはルナが噴水の中に入れたから溶けて無くなるはず。
『それよりも移動は急がなくて良いの?』
『あっ。やばい、待ち合わせしてるんだった。急いで移動するね!』
宣言通りルナは人混みをかき分け抜け出すとそのまま走り出した。