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 着けていたVRヘッドセットとグローブを外して上半身を起こして伸びをする。

 んー。

 ゲームと現実で自分の大きさが違うから戸惑うと思ってたけど保冷バッグの中にイスとかベッドを用意したからかそこまで違和感ないな。

 ただゲームで不自由なく動いてた下半身が思ったように動かせない事に胸が苦しくなる。

 とりあえず隣で寝ている那月を起こさないように注意しながらベッドから車椅子に移り座る。

 これが思った以上に重労働でキツい。

 一応壁側に那月に寝て貰って正解だったな。

 もし逆だったら確実に起こしてしまっていたと思う。

 起こして補助して貰うにしても負担をかけてしまうし何より楽しみにしてたゲームを中断させるのは気になるしね。


「あら、雪菜はもうやめたの?」


「うん、ちょっと休憩にね」


 私が車椅子に移動する音で母さんが気づいて見に来たみたい。

 最近は扉を閉め切らずに少し開けておき音がリビングにいても聞こえるようにしている。


「那月なんてVRゲームやってる時は朝から始めてご飯のメールするまで絶対にやめなかったんだから」


 うん、それはちょっとやり過ぎだと私も思うな。

 ちょっと気にかけておこう。


「それでどうだったの?楽しかった?」


 母さんが車椅子を押してリビングに連れて行ってくれる。


「うん、楽しかったよ。風景も綺麗だったし人も本当に生きてるみたいで凄かった」


「へー。那月が言ってもあまり信じられなかったけど雪菜が言うと気になるわね」


「ぁ、少しだけゲーム内の写真撮ったりしてたんだよ。端末に保存されてるはずだけど…」


「端末ってあのタブレットみたいのよね?取ってきてあげるわ」


 母さんも気になったみたいで端末を取りに行ってくれた。

 持ってきて貰った端末を操作して画像データを表示する。

 森の風景やホッピンラビットにスモールボア、コッコ等私が撮っていたモノを見せていく。


「へー、ホントに綺麗ねぇ。雪菜が写ってるのはないの?」


「あるけど…」


 ルナやシュティナさんが送ってくれた画像を見せる。


「あら、可愛いじゃない。これがゲームの雪菜なのね。ふーん、この一緒に写ってるのは那月かしら?」


 髪色とか髪型に違いはあるけどお母さんもやっぱりわかったみたい。


「うん、こっちの男女がさっきまで一緒に遊んでた人」


「へー、それにしても比べると雪菜かなりちっちゃいのね」


「そういう種族を選んだからね」


「他にはどんな種族があるのかしら」


 そう言うと母さんは自分の携帯端末を持ってきてゲームを調べ始める。


「色々あるけどこれとか可愛いと思わない?でも私は運動するのとか苦手だからこういうゲームはできる気がしないのよね」


 種族の画像で気になった種族を私に見せてくる。

 しかし途中で戦闘の画像や動画が流れているのを見ながらそんな事を言う。


「ルナが言ってたけど戦う以外にも色々できるみたいだよ。私だってこの大きさだから戦闘中はあまり動かずに魔法撃ってるだけだったし。せっかくだし気になったらやりたい事あるか調べてみたら?」


「そうしてみようかしら。さーて、そろそろ夕食の準備するけど何か希望ある?」


「特には無いけど。お願いがあるの」


「んー?何かしら」


 冷蔵庫の中を見て献立を考えながら聞いてくる。


「少しずつ今の私でもやれること考えていこうと思って」


「良いんじゃないかしらー。手伝えることは手伝うから言いなさいね」


「うん、ありがとう」


 それからは母さんの料理してるのを見ながら話をして過ごす。

 ご飯がもうすぐできる時間になってもやめる様子がない。

 仕方ないから那月にメールをしておく。


「ホントにメールするまでやってるんだね」


「言ったでしょ?去年の夏休みがそうだったんだもの」


 そう言われてこのゲームのβテストが行われていたのは去年だったっけと思いだした。

 でも母さんの言い方的に他のVRゲームはやってなかったようにも思えた。


「その時はちゃんと寝てたの?」


「ゲーム内で寝るとリアルでも寝てるからとか何とか言ってたわね」


 あー、シュティナさんも言ってた。

 ゲームで寝るとリアルでも睡眠は取れてると…。


「でもずっと寝っぱなしだと動けなくなりそうだね」


「そうなのよ!だから運動しないとVR機器を捨てるって言ったら毎日軽い運動するようになったわ」


 流石にVR機器を捨てられるは怖いなぁ…。

 モノがモノだしね~。

 買い直すにも学生のお小遣いじゃ買えないだろうし。


「ご飯を食べに私帰還!」


 噂をすればなんとやら。

 那月がようやくログアウトしてきたみたいだ。

 母さんができた料理を並べていく。

 それを那月も手伝っている。

 私も手伝おうと思ったけど邪魔になりそうだった。

 運び終えて3人いつもの席に揃ったので手を合わせる。


「「「いただきます」」」


 那月に泣かれたあの日から夕食は一緒に食べるようになった。

 母さんが仕事でいない日以外は三人揃う。

 朝は母さんが早く出る事があって揃わない日があったし平日だとお昼は基本的に二人ともいない。

 その時は母さんが作ってくれた弁当が私にも渡されてそれを食べていた。

 一人暮らしをしていた時は自炊していたから料理はできるんだけど車椅子の生活になってからはやっていない。

 その為母さんが早く出ていて弁当がない時はインスタントや冷食も少なくない。

 あまりお世話になっていなかったインスタントや冷食だけど食べてみると意外に美味しいし便利だ。

 冷蔵庫のあるところまではいけるし電子レンジとポットは手の届く位置に移動させてくれた。

 移動だけならキッチン内も何とか移動できるけど料理をするには立ち上がらないと高さが厳しい。

 車椅子がギリギリ通れる幅だから向きも変えられないしね。

 お皿は流しに置けるから良いけど蛇口を操作できないからホントにおくだけになってしまう。

 今日のご飯はオムライスとスープにサラダだった。


「那月、今やってるゲームって戦闘しなくても遊べるの?」


「んー?珍しいね、お母さんがそんな事聞くなんて」


「良いから答えなさい」


「遊べるよ。生産職って言われてるかな。でも素材集めたり道具揃えたりするのにもお金掛かるから一人でやるとやっぱり戦闘しないとダメな気がする」


「ふーん。やっぱりダメなのねぇ」


「お母さんもやるの?動けなくても固定砲台みたいに立ち止まって魔法撃つのも有りだと思うけど」


「雪菜に見せて貰った写真が綺麗で気になったのよ。でも運動は苦手だし戦ったりするのは好きじゃないからやめておこうかしらね」


「もしお母さんやるなら協力するよ?」


「どうするの?」


「私達が素材とか集めて母さんに装備作って貰うんだよー。作って貰えればお金は払うから道具とかはそれで揃えていけば良いんじゃいかな?」


「なるほど、それなら私でもできそうね。問題はVRヘッドセットね」


 もぐもぐ。

 もし母さんがやるなら手伝うけど私はゲームの説明とか詳しくないしできないからね。

 黙って食べてますよ。

 んー、久しぶりに母さんのオムライス食べるけど美味しい。


「那月も写真とか撮ってるんでしょ?後で見せなさいよ」


「ふふ。私達が集めたお姉ちゃんコレクションを堪能させてやろー」


「何、アンタ雪菜のストーカーなの?」


「お母さん言い方!」


 流石の那月も反論している。

 私としては移動するときは那月に運んで貰っていたから荷物になってる気分だったけど。

 考え方を変えると私が荷物だったのではなくて那月が乗り物だったのでは。

 流石にそれは酷いかな。

 言わないけど心の中で那月には謝っておこう。

 乗り物扱いする酷いお姉ちゃんでごめんね。

 私がそんなくだらない事を考えながら食事をしてる間にも那月が母さんに生産職について説明しているようだ。

 母さんも気になっていたからか頷きながら質問したりしている。

 今話している内容は素材集めの事みたい。

 内容としては敵からのドロップ品は知り合いと取引して集めてきて貰うとか採取で欲しい素材がある場合は護衛を頼んで自分で取りに行く方法もあるって事を伝えていた。

 確かにその方法なら景色が良い場所等も自分で見に行けるね。

 そんな話をしながらも皿に盛られていた料理は綺麗になくなった。


「「「ごちそうさま」」」


 食事を終えると18時半頃に。

 お風呂は那月と一緒で手伝って貰いながら済ませる。

 恥ずかしいんだけどね。

 手伝うって言って聞いてくれないんだよね。

 助かるのが本音だから断りきれないけど…。

 何て言うか私を洗おうとするのは必要ないと思うんですよ。

 それ以外にも何かと触ってくるんだけど手つきがね…。

 それはさておき、お風呂から出たので髪を乾かしたりして着替えも済ませる。

 母さんに挨拶をして部屋でVR機器を付けて起動させる。

 那月は母さんにまた捕まってたからすぐには来れないだろうな。

 何も言ってなかったし私の部屋でやるって事は無いと思うからベッドの真ん中で横になってる。

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