ケース2 久松嘉人 18歳 高校生 の場合 ③
こんなジャンルも好きなんです
「嘉人〜用事終わったか〜」
「ひぃっ」
同じ部活の同級生に急に声をかけられ、こんな格好を見られたくないと身を竦める嘉人。
「何してんのお前?用事終わったんなら練習続けるぞ!」
「な、なぁ俺なんか変なことないか?」
「別に…体調でも悪いの?」
「いやそうじゃないけど…」
「ならつべこべ言わず練習戻るぞ」
強引にプールに連れ戻される。
プールに戻ると他の部員もいたが何も言われることはなく、そのまま練習を終えた。
更衣室に戻ってロッカーを開けるとこの学校のセーラー服が置かれていた。それだけでなくブラジャーやキャミソール、パンティにニーソックスと言った男には縁のないものがびっしりだった。
もちろんそう見えてるだけで実際は元々自分が着ていた学ランやシャツや下着なのだが。
ここまでのことを振り返りさっきの女が言っていたことは全部本当のことなんだろうと諦め着替えを始めた。
髪を解き、スクール水着を脱ぎ捨てる。
タオルで体を拭き上げるとパンティに足を通す。
男物のパンツにはない柔らかな感じと女には付いていないモノを無理やり押し込める感覚に興奮しそうになるが周りの男を見て心を鎮める。
続いてブラジャーを着けようとするが中々ホックが止まらない。
数分かけてホックを止め、キャミソールを着てセーラー服の上を頭から被る。
スカートを履くとかなりのミニ丈だった。
「なんかスースーするなぁ。なんでこんなに短いんだよ」
初めてのスカートに心許ない感じがして無意識のうち内股になって内ももをスリスリと擦り合わせていた。
最後にニーソックスを履いて着替えは完了だ。
ドライヤーで髪を乾かすと説明通り無意識のまま髪をくくっていた。しかも先程は部活中のためか黒の目立たないゴムだったのに今度はピンク色の玉が付いたかわいらしさを強調したようなヘアゴムになっていた。
靴もスニーカーからローファーに変えられていたがそんなことに気がつく余裕はもうなかった。
更衣室から出ると他の男子部員に混じって彼女の翼が待っていた。彼女も同じ水泳部所属だ。
「やっと来た〜。よしくんが私より遅いなんて珍しいね」
「こいつ今日なんかおかしいんだよ。変にコソコソしながら着替えててやたら時間かかってたし」
「なんでもないよ。ちょっと考え事してたらボーッとしちゃってた」
「そ、じゃあ帰ろ♪」
嘉人の腕に抱きついてくる翼を見ると今の自分と同じ格好をしている。それなのに誰もそのことに異を唱えない。いっそのことおかしいと、女装だと言ってくれた方がよっぽど気が楽だと思いながら帰路に着いた。
家に帰り自分の部屋に入ると朝と同じ部屋だった。
ここまで変えられたわけじゃないのかとホッとしているとベットの上に置かれたピンク色の布が目に入った。
手に取ったそれはふわふわした女性物のパジャマだったがこれに嘉人は見覚えがあった。
去年の翼の誕生日にプレゼントしたものだった。もっとも翼にプレゼントしたのは水色のものだったが。
その後の嘉人の誕生日には男物のパジャマをもらって今朝もそれを着ていた。
「なんでこんなものが……あっ!」
疑問に思っていると一つの答えに行き着いた。
「脱いだのをここに放ってたな……ということはこれはあのパジャマってことか」
せっかく彼女から貰ったものも正しく認識できなくなっていた。
クローゼットを開けると見慣れない女物の服がずらっと並んでいた。それも同年代の女子より少し下の年代で流行っているような服ばかりだった。
タンスを開けても慣れ親しんだ下着はなく、色とりどりのブラジャーやパンティが並んでいた。
次がエピローグです