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短編

作者: 牧田紗矢乃

 よく切れる(はさみ)を買った。これであなたとの縁も切れるかもしれない。

 白く光る刃は冷たく、あなたの瞳のようだった。


 手始めにあなたに関係するものを切った。


 もらった手紙、ツーショットの写真、愛用のギターの絃。

 全部呆気なく切れてしまった。

 笑ってしまうくらいあっという間だった。


 これで縁も切れただろう。

 安心して眠ったのに、今日もあなたは夢に現れた。あなたはいつも通りに笑って、私の愚行をたしなめる。ただそれだけの夢だった。


 まだ切り足りなかったのだと少しでも関係がありそうなものを切り刻む。

 貸し借りしたノート、漫画、文房具。連絡を取り合った携帯もスポンジのように簡単に切れた。


 今度こそ切れたはずだ。祈りにも似た思いで布団にもぐった。

 あなたはやはり、笑いながら冗談みたいな説教をする。


 手あたり次第に切り刻んでも、あなたはまた現れる。

 相変わらずの笑顔で、忘れることが出来ないあの声で。


 もしかすると私たちの間には切るほどの縁もなかったのかもしれない。

 もっと悲しければいいのに。もっと悔しければいいのに。

 私はいつも通りにため息をついてあなたの説教を受け流した。


 鳴らないギターを抱えて、切り屑の山に埋もれて。

 今日もあなたと夜空を渡る夢を見る。


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― 新着の感想 ―
[一言] 全体を通して、女性の心のわだかまりが描かれていて面白かったです。 彼との縁を切るための鋏にすら彼を重ねてしまうほどに彼女は彼に取り憑かれてしまっている、この感じは現実的でかつ非常に女性的な心…
2016/02/07 21:59 退会済み
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