39.思考停止中。
学校に到着。
「で、先生。
何処に俺の制服置いたんですか?」
「泉の教室だ」
「何故に!?」
「わかりやすいと思って」
「逆にわかりにくいですよ…」
クソ…この先生は余計なことに余計なことを重ねるのが上手すぎる…。
仕方ない…この格好で行くしかないか。
「泉、私は少し保健室による。
制服を取りに行ったら帰れよ?」
「わかってます」
俺が先生にそう返事をすると、先生はそのまま学校の中へと入っていった。
勿論、俺は先生の後ろをコソコソと着いて行く。
何かこの格好だとすごく入りずらい…まぁ女装で学校を彷徨いた事は一回あるけど。
そして、俺は先生と別れ、二回にあがり、自分の教室へと足を運ぶ。
「うぅ…この格好で教室に入る事になろうとは…まぁいいや、さっさと制服持ち帰って、着替えるか」
てか何処に制服置いたのか聞いてねぇ…。
まぁ、机かロッカーかのどっちか。
俺はそんな疑問を残しながら、ガラリ、と教室の扉を開ける。
「…は?」
俺が何故、この一言を発したのか。
その理由を簡単に説明しよう。
俺の机に、椅子に、女の子が突っ伏して寝ていたのだ。
さぁ皆さん!気を取り直してもう一度!
「…は?」
いや、待ってこの状況の整理が追い付かないんだけど、脳の処理班頑張って。
俺は、脳の処理が追い付かないまま、その眠っている少女の近くによる。
廻はこの時の行動を、後悔することになる。
その後悔が何処に繋がるのか。
それは、この劇が語ってくれる。
「獅子野…!?」
「ん…?」
そう、そこに座っていたのは、君月獅子野だった。
俺の友達であり、俺の恩人であり、切っても切れない、腐れ縁である。
「え…?なんで?」
俺は疑問が頭に何個も浮かぶ。
だが、答えに辿り着く気はしない。
いくら思考回路を巡らせ、頭を回したところでこの状況の説明などつけようがない。
そして、獅子野は、眠そうな目でこちらを向く、その顔にはよだれが垂れている。
「ッ!?」
どうやらこちらの存在に気付いたらしい。
すると、みるみると顔が赤くなる。
そして慌てて獅子野は立ち上がり、ビシッ!っと俺に指を差す。
「誰だお前!?」
え?誰って…そうだった!
今の俺の格好…女装だった。
てか急いで誤魔化さねぇと!
「えっと!私は…」
俺は練習した女声で誤魔化そうと頑張る。
てかどう誤魔化せば…そうだ!
「私はこの学校の卒業生なの!
それで、少し笹塚先生に用があって」
と、俺は急いで弁解。
この学校では、卒業生の出入りは珍しくないからな。
先生に用事があったり、文化祭の手伝いとかで来たりする事があるらしい。
まぁ見たことはないけど…。
「そう…だったんですか。
失礼な事を言ってしまってすみません」
「いえいえ、いいんです。
それより、よだれが…」
俺は自分の口を指差して教える。
すると、獅子野は急いでよだれをふく。
「うぅ…みっともない所を見せてしまいすみません…」
「いや、いいんです。
えっと…そんな事より、ここって貴女の席じゃないですよね…?」
「ッ!?」
君月は、ビクリ、と体を震わせる。
「何で、この席で寝ていたんですか?」
いや、これに関しては本当に疑問でしかない。
獅子野が何で俺の席で幸せな顔してよだれを垂らしていたのか。
正直に言おう、俺の脳みそでは理解出来ない領域なのだ。
「えっと…それは…その…」
獅子野は、両手の人差指をぐるぐるさせ、もじもじしている。
そして、覚悟を拳を握りしめて小さく、よし、と呟いて言った。
「この席は、私の『好きな人』の席なんです」
「え…?」
獅子野は頬を染める。
夕日に照らされた獅子野の笑顔は、見たことのない、乙女の顔をしていた。
それに対しての彼方、思考停止中。




