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青春したいのに青春出来ない俺の日々。  作者: あだち りる
第四章「仲直りは青春への近道。」
34/44

34.台風の後の。

俺と余波は、屋上から立ち去っていた。

今は学校の教室にいる。

学校の中は結構綺麗で、余波は、懐かしそうに見ていた。


「彼方、びしょびしょ」


「そう言う余波こそびしょびしょ」


椅子に座り、お互いに背を向け会う。

今、顔を会わせるのは恥ずかしい。

あんなに泣いて、泣き喚いて、子供みたいに。

そんな後の顔なんて、見られたくない。

だから背を向け会う。

背を向けて、これからに向けて話すんだ。


「ねぇ彼方」


「ん?」


「私、彼方の親友でいていいの?」


当然の台詞、当然の流れ。

余波が疑問に思うのも当たり前。

だが、彼方にとってもそれは当たり前の様に返せる言葉。


「こっちから土下座でお願いするよ」


俺は笑いながら言う。

輝く月が、教室を照らす。


「…彼方。

私ね、彼方の事が好き。

どうしようもなく好きなの」


「うん…知ってる…」


知ってる。

けど俺は…その気持ちには…答えられないんだ。


「けど、思ったの。

私にはまだそんな権利はない。

だから、やり直そうと思う」


「やり直す?」


「そう!」


余波はそう言うと、椅子から立ち上り、彼方の前に出る。

その姿は、月に照らされていて、とても輝いている。

眩しくも、清々しい笑顔。

胸に両手を持ってきて、ぎゅっと、優しく抑える。

その姿を見て、俺は思った。

これからの余波はきっと、大丈夫だと。

そして、余波は口を開く。


「私のこれからの人生は、人に、一人一人の人に、優しくするんだ。

助けてあげるんだ!絶対に一人ぼっちにさせないように、彼方見たいに、全力で友達を助けられるような人に…これからの私は、そうでありたい…うんうん…」


余波は首を横に振る。


「そうでありたいんじゃない。

そうなるの、そうやって、人と関わって行きたい」


「…そっか」


ほらな…こういう奴だから。

こういう奴だから、俺はこいつを守りたかった。

親友に戻りたかったんだ。

あぁ…今はこの時間が、心地いい。

いつまでも二人で、こうやって話していたい。

いや…きっといつまでも、こうやって、楽しい日々が送れるのだ。

本当の…本当に…親友に…なれたんだ。


彼方は、上を向いて、余波を見詰める。

その目には、安心と、信頼と、そして、優しさが詰まっていた。


「どうしたの?」


「いや…何でもない…。

なぁ、余波、俺さ、お前と出会えて良かった」


「…私もだよ」


二人は、微笑んだ。

その笑顔が、二人の未来を表しているかのように、そう思えてしまう優しい、笑顔だった…けれど、そんな笑顔を知るのは、彼方と余波だけだった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

翌日。

俺と余波はこっぴどく怒られた。

余波はお母さんとお父さんに。

俺はと言うと…。


「彼方くんって本当に馬鹿っ!」


「お兄ちゃんはなんでそうやって心配ばっかかけるの!?

私がどんな思いで…本当に馬鹿っ!」


とまぁ…こんな感じで、式ノと花菜から怒られた。

正座をしていたせいで足が痺れる始末。

何か色々と疲れた…。

けど、これで先生に出された宿題を提出出来そうだ。

美月先生には夏休みが終わったらお礼しに行かないと。


こうして、日々が流れ、俺の夏休みは終わった。

この、波瀾万丈な日々。

色々とありすぎて纏めるに纏めきれない。

初めて出来た女の子の友達。

初めて女の子から告白されたこと。

けれど、断ってしまったこと。

けれどまた仲直りしたこと。

ずっと恨んでいた相手と友達になったこと。

けれどその相手が本当はただ友達になりたかっただけだった、と言う事。

本当に、色々あった。

悲しくも、楽しくもあった日々が、終わりを告げる音がした。

さぁ、新しい日々の幕開けである。

青春したいのに青春出来ない俺の日々はまだ続く。

友情面では青春をこれから謳歌できそうだが、まだ『恋愛』と言う面では、俺自身に好きな人がいない。

だから、全力で俺は探す、運命の相手を!


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

始業式当日。


彼方が学校に向かっていると、そこには夏服の制服に包まれ、純白の肌をさらけ出している長い黒髪の少女がいた。

少女は、後ろを振り返る。

右につけているウサギのヘアピン。

風で靡いている黒髪を左手で抑える。

その姿を見たとき、四月の桜を思い出した。

そこにいたのは…。


「彼方くーん!」


手を振る、神無月式ノだった。


「おう、式ノ、おはよう」


俺は笑顔で挨拶をする。

この友達と。

何の違和感もなく…違和感も…なく…ん?

あれ?式ノなんで制服を着て…しかも通学路に…あれ?


彼方はとんでもない違和感に気づいてしまった。


「どうしたの彼方くん?」


「お前…なんで鞄もって制服着てるんだよ…?」


俺はプルプルと震えながら式ノを指差す。


「え?それはそうでしょ。

私も学校に通ってるんだから」


「は?だって…先生にお前の名前を聞いたとき…そんな生徒はいないって…」


「あ!そっか!彼方くんに言ってなかったね!」


「どういう…」


「私が引っ越した理由ってのが、親の離婚が原因なの、それで私はお母さんに付いていって、で!お母さんが再婚を決意した訳」


「つまり?」


「つまり!私の名前は、神無月・・・、ではなく!

月野宮つきのみや 式ノになりました!」


「あぁ…なるほど…」


別にこいつは、珍獣でもなんでもなく…ただ苗字が変わっただけで、家の学校の生徒だった、と言う訳だ。

なんだか、本当に新しい日々の幕開けって感じがする…では神無月式ノ改め、月野宮式ノと言う友達と、蓮野余波と言う親友との生活を、謳歌しようじゃないの!


そして、泉彼方は再び青春の一歩を踏みに行くのだった。

読んでくださりありがとうございます!

これにて!第四章は終了とさせていただきます!

いやぁ…なんか第四章色々ありましたね。

本当に色々…とまぁ!お次は第五章となります!

ここで!やっとあの子がメインの章となります。

では、次の章でお会いしましょう!

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