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青春したいのに青春出来ない俺の日々。  作者: あだち りる
第四章「仲直りは青春への近道。」
27/44

27.こうして二人のデートが始まる。

「それじゃあ泉、頑張れよ!

夏休み明けに提出だぞ?」


と言う言葉を置いて笹塚先生は帰っていった。

俺は何を迷っていた。

何を恐れていた。

全てを犠牲にしろ。

自分の何かもを犠牲にしたって、守りたい奴がいるなら、守ればいいだろ。


泉彼方は決意する。

守りたいものを守ると。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

泉彼方はとある約束のため、学校に向かっていた。

歩く道歩く道、昼だと言うのに、人と会うことはなかった。

空は雲で埋め尽くされていた。

それが不気味で、これから会う奴を表しているようだった。

そして、校門前に到着した。


「お?来たねー彼方くん!」


「よぉ…式ノ」


さぁ…始めようぜ。

地獄のデートを。


こうなった状況を説明しよう。

昨日、夜に知らない番号からかかってきて、それに恐る恐る出てみたら、神無月式ノからだった。

用件を聞くと、デートをしよう、とのこと。

この誘いは、悪魔の誘いでもあり、俺にとってはチャンスでもあるのだ。

蓮野を守る、式ノとのこの関係を変えるチャンスなんだ。


「ちょっと彼方くん!」


「ッ!?」


式ノが下を向いてる俺に顔を近付けてきた。


親友・・とのデート中に何を考えてたのかな?」


「…」


その笑顔、言葉、行動、奴の全てがまるで、俺と言う存在の、人との関わりを、否定されている用な気がした。


お前には友達などいないんだ。

お前に人との関わりは持てないんだ。

そう…言われてるような気がしたんだ。


「ふ~ん…答えてくれないんだ。

まぁいいや、じゃ行こっか」


そう笑いながら式ノは歩く。

ここで追求してこないのがなんとも不気味だ…。

だが今は黙ってついていくしかない…。


「って…なんでプールなんだよぉ!」


「え?いってなかったっけ?」


「言ってねぇよ!」


今、俺と式ノはプールの入り口前にいる。

ただ黙ってついていけばこれである。

何処に行くかくらい聞いとけば良かった…。

いやまぁ季節的に間違ってないんだけどさぁ…。


「じゃあ水着は?」


「ねぇよ!」


「それじゃあこれを彼方くんにあげよう!」


と、式ノが満面の笑みで上に突き上げたのは、ブーメランだった。

しかも、それはわざとだろと言わんばかりの色、そう、肌色のブーメランだった。


「ってバッカじゃねぇの!?履かねぇよ!?

てかそんなもん履くんだったら今すぐ溺れ死んでやらぁ!」


「もう…仕方ないな。

ちゃんとこっちも用意してあるから」


式ノは肩に下げているトートバッグをごそごそと左手を探索させる。


「なんだよ。

あるなら先にそっち出せよな…たく」


って…何俺普通にツッコミとか入れちゃってんの?

相手はあの悪魔だよ?

何処までも人を絶望に落とす悪魔だよ?

てかこれじゃあ言うタイミング…。


と、彼方が心の中でモヤモヤと考えていると、彼方の視線にとある物が映った。


「はいこれ、もうひとつの水着!」


笑顔それを提示してきたお前の性格はよくわかった。


「ってこれただ柄が変わっただけでブーメランに変わりねぇじゃん!?」


「じゃあさっきの履く?」


「こちらを着させて頂きます」


彼方は察した。

このまま嫌々言っていれば、最終的あの肌色ブーメランを履くことになると。


そして、俺と式ノはプールの内部へと行くこととなった。

お一人様です、と言ったら足を踏まれた事は言うまでもあるまい。

俺は抵抗しながらも赤と黄色が半々になっている柄のブーメランを履いた。


「…てかあいつ遅いな…」


俺は女子更衣室から少し距離をとり、周りの視線を気にしながら式ノを待つこと十五分。

やっとその声は後ろから聞こえた。


「彼方くん!」


「たく…おせぇよ…っ!?」


俺が後ろを振り返ると、驚く光景がそこにあった。

式ノが着衣していたのは、黒ビキニだった。

それも何か少し露出が多い奴。

これに動揺したのも、これに少しドキッとしたのも認めよう。

てか…式ノって以外にスタイルがいいんだな…そ、それと…結構…むむむむむむ胸も…。


「あれ~?何処を見てるのかな~?」


「べべべべべべべべべべぇつぅにぃ~?

どこも見てねぇしぃ~??」


「ぷっ!彼方くん動揺しすぎ」


式ノは上品に少し口を右手で抑えながら笑う。

俺は恥ずかしさのあまり右手で口を覆い隠す。

てかなんだこれ…これじゃあまるで…ただのデートじゃないか。

普通の…普通の…。


そして、彼方と式ノの一日が、こうして始まるのだった。

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