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青春したいのに青春出来ない俺の日々。  作者: あだち りる
第三章「いじめっ子といじめられっ子の友情は成立する。」
21/44

21.初めての日。

私の名前は蓮野余波。

普通の高校生だ。

友達とそれなりに楽しくすごして、それなりの人生を送っている。

そんなある日の事だ。

私は、出会ってしまったのだ。

彼女に、神無月 式ノに。


あれは今でも鮮明に思い出せる、放課後。

私が廊下を歩いていると、突然と、彼女は現れた。

彼女が私に最初にやったこと。

それは、挨拶でもなんでもなく、ただ一枚の写真を私に、見せたんだ。


「へ…それ…なんで…」


私は、動揺を隠しきれなかった。

それは、誰かに知られるはずも、知れたくもない、そんな写真だったから。


「ねぇ、蓮野さん、私に協力してくれないかな?」


彼女はニッコリと、その笑みを私に向けた。

彼女の最初の印象、それはたった一つだ。

不気味…と言う単語だった。

こうして、彼女と私の、秘密の関係が出来た。

そして私の、友達も、神無月式ノに脅されている一人だった。

私、春、歩の三人は、神無月の命令にただ頷くしかなかった。


そして、その命令は、泉 彼方、を一日でいい、いじめてくれ、そんな命令だった。

泉彼方、私と同じクラスの男子だ。

特に目立った事をしてるやつには見えなかった。

ただ、頭がいい、と言う情報しか私達は知らなかった。

そして私達は、それを実行した。

机をボロボロにした。

とても古典的ではあるが、私だったら立ち直れない程の出来事だ。

やってて心がすごく痛んだ。

だけど、一日だ。

今日一日だけ、私は悪人になればいい。

だから、私は演じた。


そして、これが私と彼方の出会いだった。


彼方は机を見た瞬間、一瞬固まったが、その後の行為には私達も驚かずにはいられなかった。

彼方は机を殴ったのだ。

それはとてもいい音がなった。

そして、私が何より驚いたのは、その顔が、笑っていたことだ。

今思えば、彼方の性格なら有り得る、と言える。

だが、あの時の私には疑問しか生まれなかった。

だが、もしかしたら私は、この時から彼方の事が気になり始めてたのかも知れない。


そして、次は、頭からバケツいっぱいの水を被せた。

さすがにもう笑えない。

そう思った。

だけど、予想外な表情をしていた。

また、笑っていたんだ。

何で笑う事が出来る?

どうしてそんな顔が出来る?

その時はそんな事ばっかり考えていたせいで動く暇なんてなかった。


この日が、彼方との初めての会話の瞬間だ。

そして、確信してもいい。

私はこの瞬間、この優しい笑顔を見た瞬間に、恋に落ちたのだと。

自覚なんてしていないと思う。

だってこの時はただ、気になる、としか思っていなかったのだから。


けど、一回で終わるはずもなかった。

神無月式ノから、再び命令が下された。

だが、次の命令は、まったくと言っていい程、意図が読めない命令だった。

それは、泉彼方と友達になれ、と言う物だ。

訳がわからなかった。

だが、この時の私には断る理由もなかった。

まぁ、なんにせよ、断れないのだから一緒だが。


そして私と彼方は友達になったんだ。

ここからの日々が、私と彼方の日々が、私の思いが確信に変わる瞬間だったんだ。

私は…。


ー彼方の事が好きー


私は、好きになってしまっていた。

泉 彼方と言う人の全てが愛おしいと思えるほどに、彼への気持ちに嘘はなかった。

けどこの気持ちは隠しておかなければいけない。

けど、そんな必要はなかった。

神無月に命令されたんだ。


「彼方くんに告白して」


と。

この女は意図が本当にまったく読めない。

何度もそう思わされた。

そして私は、彼方に告白した。


ここからだったんだ。

私が、あの女の目的を知ることになるのは。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

これは、私が彼方に告白した後の事だ。

私と神無月は、とある公園で待ち合わせをしていた。

神無月は笑いながらベンチの側に立ちながら待ってた。


「あ、きたきた~で!どうだった?!」


「こ、告白したよ」


「ち~が~う~!そうじゃなくって、彼方くんのリアクション」


すごくニヤニヤしながらそう聞いてきた。


「すごく…その、動揺してた…」


「そっか~…あぁ~…残念、私もそこに居たかったな~」


「…?」


その答えに私は疑問を覚えた。

そして、今日の会話は、最後に神無月が、またね、と、言って終了した。


今のこの状況のなかで、私はふと思った事がある。

今まで、この女はなんの意図があって…と思っていた。

けど、もしかしたら意図なんてないのかも知れない。

そもそもあの女に、神無月式ノには読める意図が存在しないのかも知れない、と。


時と言うのは流れるのが早く、とうとう来た。

彼方の返事を聞く日が。

そして私は屋上へと向かった。

いち早く、誰よりも先に、彼方を待っていたかったから。

この時の私は、こんな事を思っていた。


返事はなにかな…。

もしかして付き合えたりするのかな?

付き合えたらデートとかしたいな!

初めてのデートはきっと楽しいんだろうな。

お弁当とかも作ったりして、彼方に食べてもらいたいな。

けど…断られたらどうしようかな…。

今まで見たいに接する事は出来るかな…。


「友達で…いられるかな…」


私は屋上の扉の前で立ち止まって、そう粒いやた。

そして、扉を、開けた。

けど、そこにいたのは彼方なんかじゃなかった。


「ん?って、蓮野ちゃんか~…彼方くんだと思ったじゃん!」


そこにいたのは、笑いながらそう言う、神無月式ノだった。


「どう…して?」


「どうしてって…彼方くんにはただ、憎しみに満ちた表情をして欲しいだけだよ?」


「それが何で貴女がここにいることと繋がるの?」


「それは簡単だよ、彼方くんは貴女に裏切られた、きっとそう思うからだよ」


「っ!!」


その時、私は全てを理解した。

こいつはただ、彼方を、いじめたいだけなんだ。

ただ彼方の困る姿を、憎しみに満ちた姿を、絶望に苦しむ姿を、見たいだけ何だと。

私は、怒りを隠さずにいられなかった。


「ふざけないでよ!!そんなの…そんなの彼方が可哀想じゃない!貴女は彼方の事を何だと思ってるの!?」


「ん~…そうだなぁ…強いて言うなら、私の性欲処理機、かな!」


そういって、そいつはニタァっと笑う。

私の頭の中はとある言葉で支配された。


ー謎ー


謎だった。

この女は一体なんなんだ。

この女は何を考えている。

この女は何故彼方に固執する?

何故…何で…どうして…。


この女は、謎過ぎたんだ。

だけど、そんな事は関係ない。

私は、彼方のそんな表情も、姿も、見たくない。


「帰って」


私は強くそう言った。


「は?」


「帰ってって言ってるの!そしてもう、彼方には二度と、関わらないで」


「へぇ…随分強く出たねぇ、本当に好きにでもなっちゃったのかな?この写真がどうなってもいいんだぁ…」


「ば、ばらしたければ、バラせばいい…」


私は、彼方を助けたい。

その時はその思いでいっぱいだった。


「はぁ…いいの?ついでこんな事もばらしちゃうけど…」


「…?」


けど、神無月の次の言葉で、私は、屋上から姿を消していた。

何故あれを、あの女が知っている、とか。

そんな事を私は気にしてはいなかった。

その時はただこう思ったんだ。

情けない、と。


その後の自分は、ただベッドで、泣いていた。

情けない自分に、どうしようもない自分に、彼方を救ってあげられない自分に、どうしようもなく…救えない自分に…腹が立った。


そして、夏休みに入った。

私は部屋から出て、顔を洗う。

見上げて鏡を見ると酷い顔をしていた。

やっと落ち着いた頃、私は、迷っていた。


彼方に会うかどうか。

こんなことをした私をきっと彼方は憎く思ってるはずだ。

裏切った私を、どうしようもなく、彼方の事が好きな私を。

そんな事を考えてるうちに時間は流れ、ようやく目の腫れが収まってきた所で家のインターホンが鳴った。


「っ…!」


私はドアの方を見つめる。

まだ姿は確認してない。

けどわかってしまった。

誰が来たのか、何でかはわからない…けど、絶対にそうだって、確信できた。


私は、玄関の扉を、開けた。


「よっ!蓮野」


やっぱり、彼方だった。


「っ…!」


なんで?なんでそんな顔してるの?

どうして?私は…彼方を裏切ったのに。

その時はそんな疑問ばっか生まれた。


彼方は、話をしに来た、と言った。

私は、場所を変える。

この公園を選んだ理由は特にない。

ただ、近かったから、それだけ。


彼方が少しこの公園に入るのを躊躇った気がした。

気のせいだと思う。

けど、今は彼方の些細なことまでもが気になってしまう。

それほどに、私は彼方に罪悪感を抱いているのだと、実感した。


私と彼方は、ベンチに座った。

当然の距離感を保ちながら。

そして、彼方は私に、言葉をかけてくれた。

それは優しくて、とても、とても、優しくて…自分を抑えることなんて…出来なかった。

私は、彼方に、すべてをぶつけた。


彼方の事が好きって事。

彼方とずっと一緒にいたいって事。

彼方ともっと仲良くなりたいって事。

彼方を裏切った事。

神無月に頼まれた事。

好きになって欲しいって事。

自分が…許せないって事。


「ごめんね」


そして、私は彼方に誤った。

この謝罪は、私がもう彼方とは関わらない、そう言う物だった。


だけど…なのに…なんで…彼方は、優しすぎるよ。

彼方は、私に言ったんだ。


「俺と、友達になってください」


そう言ったんだ。

涙が止まらなかった。


「はい」


その時の私は、そう答えるしかなかった。

嬉しかったから、嬉しすぎたから、涙で顔がぐちゃぐちゃの中、私は一つ、理解出来た事があった。


ー私は今、笑ってるー


今日、蓮野余波は、初めて、失恋をした。

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