19.忘れてた。
「お前と友達になる!」
とは言った。
あぁ言ったさ。
だけどな、とても重要な事を忘れていたのだよ。
今思えば、あいつの連絡先も住所も知らない、珍獣だった事に。
そして何より…今日から夏休みだ。
現在、七月一日、夏休み。
俺は、神無月式ノと友達になると決意した。
この珍獣と。
一応説明しておくと、神無月式ノは昔俺をいじめてたいじめっ子だ。
そしてつい先日、式ノと友達になると決意した。
ん?訳わかんない?あはは、俺もだよ。
なんであんなこと言っちゃったんだろ。
あいつと、友達とか。
いや、きっと大丈夫、これは奴にとっては一番つまらないシナリオのはずだ。
今からあいつの顔を見るのが楽しみなんだけども、あいつと会うすべがねぇ…。
「うわぁ…積んだ」
俺はベッドで項垂れた。
と、そんなエアコンが効いてる中でかなり快適に過ごしていると部屋の扉が、ガチャリ、と開いた。
「お兄ちゃんや~おるかい?」
と、アイスキャンディを片手に入ってきたのは花菜だ。
「どした?」
俺はベッドから起き上がる。
「アイス食べる?」
「またお前の唾液がいっぱいついたアイスか?」
「違うよ!今度は新品、はい!」
花菜はそう言うと右手に食べかけのアイスキャンディを持ちながら左手に掴んでるピンク色のアイスを俺に渡す。
イチゴ味だろうか。
「サンキュー」
俺はアイスを受けとる。
「…」
花菜は何故か無言で俺を見詰めてきた。
なんだい妹よ、兄の事でも好きになったのかい?
おいおいダメだよ、禁断の恋は不幸しか呼ばない!それに兄は普通に青春をしたいからな。
と、んまぁ冗談は置いといて。
「どした?そんなに見つめて」
「お兄ちゃん、何か悩んでるでしょ?」
「うっ…!」
彼方の肩がピクンと動く。
「うわぁ…分かりやすいなぁ…」
と、花菜は苦笑い。
「…」
彼方は自然と視線をそらした。
彼方は知られたくないのだろう、式ノの事、そして今の状況、これらを花菜には知られたくない。
その理由は彼方には一つしかない。
心配させたくないのだ。
家族に、自分の大切な家族には。
そして、花菜はその彼方の姿を見てすぐに悟ることが出来た。
心配かけまいと言うのが既に彼方の態度から出ているからだ。
花菜は優しく微笑む。
「たまには私にも心配かけさせてよ、バカおにぃ」
花菜は左手を優しく彼方の頭に乗っけた。
「俺って、情けないな…」
自然とそう口が動いた。
妹に心配かけさせて、しかも兄がもはや兄とは呼べないほどに情けないこの図。
本当に、助けられてばっかりだよ。
「お兄ちゃん、他に言うことあるんじゃない?」
花菜はそう言って自分の顔を俺の顔の前に持ってきた。
そう、今花菜には言わなきゃいけないことがある。
「その…ありがとな」
「どういたしまして!」
花菜は優しく微笑んだ。
俺の不安はもう何処かに消えてしまっていた。
俺にとっての花菜と言う妹の存在の大切さが再確認できた。
本当にありがとう。
そして彼方の決意は更に固いものになっていた。
必ず、式ノと友達になると。
なんと!青春しないのに青春出来ない俺の日々。
が、pv5000 ユニーク1300、を突破致しました!本当にありがとうございます!
これからも頑張って書いていきます!
それではまた!




