17.俺って最低だ。
「お兄ちゃん…」
「何だ?」
「なんでそんなにニコニコしてるの?」
「そうか~?あはは」
「お兄ちゃんがおかしくなった…」
俺は妹との夕飯にニコニコしていた。
いや違う、蓮野の告白を思い出す度にこの笑顔なのだ。
仕方ないではないか、今まで青春に飢えてた俺が告白をされたのだ。
妹との夕飯に集中出来るはずもない。
そして俺は夕飯を食べ終わった後自分の部屋へと戻りベッドの上で改めて考える。
俺と蓮野の関係。
それを一言で表すなら、友達、だろう。
最も親しい友人と言ってもいいかも知れない。
けど、蓮野は俺を友達としてじゃなく…その…す、好きなひ…男として見てた訳だ。
俺はと言うと…まぁ友達としても、女の子としても見てた。
そりゃ蓮野は普通に可愛いと思う。
いつも見せる笑顔を見ると楽しくなるし、一緒にいると落ち着く。
けど…恋愛の対象として俺は蓮野を見てたのか…?
俺が蓮野といて芽生えた感情って…。
あぁ…俺って、最低だ。
俺は蓮野との関係、自分がどう思っているか、理解した。
俺が蓮野の笑顔を見て芽生えた感情、蓮野と一緒にいて芽生えた感情…それは…それは…。
「ッ…!」
楽しいって気持ちだけだ。
蓮野と過ごした日々…掛け替えのない思い出だ。
青春したいのに青春出来ない俺の日々に光がさしたようだった。
そんな蓮野に対して俺が答えられる回答は一つ。
これを俺は六月二十九日、屋上で伝えなければならない。
退屈に学校を通う。
そんな中俺の心の中は未だに迷走していた。
蓮野に何て伝えればいいか、俺たちの関係は変わるのか。
そんなことばかり考えていたせいで期末試験ではいつも通りとはいかなかった。
そんな日々がずっと続く訳もなく、時間は流れているのだ。
いくら拒もうとも時間はお構いなしに迫って来る。
終業式が終わった後、俺の足は屋上へと向かっていた。
まだ俺の頭の中の準備は出来ていない。
そして俺は、屋上の扉を開けた。
扉を開けると、そこには知っていたかのようにこちらを見ている人影。
「か~な~た~くん♪」
靡く長い黒髪、右側につけてるうさぎのヘアピン。
俺はその姿を、形を、声を、知っている。
「式…ノ…?」
神無月 式ノが、そこにいた。




