1.この人と青春をしたい。
前までの俺はこんな青春をしたいな。
こんな事ないかな。
何て妄想ばっかしてた。
けど、起きたんだそれは、ある一本の真っ直ぐな道に立たずむ一人の美少女。
靡く黒髪のストレートと、右側に付けてあるとても可愛い兎のヘアピン。
そんな彼女の姿は誰もが理想に思うほど美しかった。
彼女の瞳はまるで、吸い込まれるような、黒い瞳だった。
そして俺は決めた。
俺は…この人と青春したい!!
「あぁ…」
俺は学校の机で枯れたような声で溜め息をつきながら、項垂れていた。
「クッソ~…」
あの出会いから既に、一ヶ月がたっていた。
以来俺は彼女に会っていない。
つまり肝心の青春を謳歌できてないのだ。
「はぁ…同じ制服だったからこの学校のはず何だけどなぁ…」
いくら探してもあの人には出会えない…どうしよぉ…あんな人に会ってからじゃ他に好きな人なんて出来るかよ!!
「よし!!やってやるー!!」
俺は気合いを入れてたち上がる。
「泉~やる気が出たのはいいが今はテスト中だ、私語は慎め~」
「あ、はい」
俺はストンと椅子に座る。
とは言っても…テスト解答欄全部埋まって残り20分暇なんだよなぁ…
俺の名前は、泉 彼方
青春をしたい高校一年生。
特に趣味もないがしたい事はさっき言った通り、青春をしたい。
そもそも青春とは何処までが青春なのだろうか。
ま、1つわかるのは…
俺が全く青春をしてないって事だ。
「クッソ…青春してぇ…」
恋の方で…
そして、チャイムが鳴り、放課後。
やっと授業と言う鎖から解放されたので…やるか。
「よし、今日もあの人探すか…」
と、俺が言いながら立ち上がろうとした瞬間。
「てぃあ!!!!」
「ぐふぉ!!!!」
うなじに信じられない威力のチョップがかまされた。
「何すんだ!!君月!?」
俺はあまりの驚きにバッと後ろを振り返る。
「んー?彼方と私の挨拶はいつもこれだろ?」
「いきなりうなじにチョップする挨拶何て聞いたことねぇよ!!!!」
「そうか?」
「そうだよ!!」
たく…こいつは…
こいつの名前は、君月 獅子野
こいつとは中三からの付き合いだ。
偶然高校も一緒になり、今も友達関係は続いている。
高校からこいつは似合いもしないのに髪をちょっとだけ金色に染めてゆるふわウェーブにしてから、中三の頃以上に何故か俺に話し掛けてくるようになった。
黒色の瞳の中には紫色がちょっと混じっているような特徴的な瞳をしていた。
「んで、何の用だよ?」
「特にないが?」
と、君月はキョトンとした顔になる。
「特にないのに気絶させるほどのチョップを俺にしたの!?謝って!!たく…お前は本当に…俺は忙しいんだ…じゃな」
「…つれないなぁ…」
と、頬を膨らませる君月であった。
そして、俺は再び校門の前で待ち伏せをしてみた。
「…………」
二時間はまったがもう既に横切る生徒すらいない。
今日はテストだったから部活も休みだ。
そして、残るのは学校のチャイムの音と、教室の電気がチカチカと見える。
「はぁ…帰ろう…」
俺が帰ろうとした瞬間、また、それは起きたんだ。
「へ…」
俺の目の前にいたのは、あの人。
それは一ヶ月ぶりの出会い。
一ヶ月ぶりの運命。
一ヶ月ぶりの、青春。
あいも変わらずその靡く黒髪はとても綺麗だった。
夕陽に照らされた桜と彼女は、綺麗と言うより…美しかった。
綺麗と美しいは違う。
彼女は綺麗だが桜は美しい。
この二つを同時に見れる事などもうないだろう…そう思った。
「…………ハッ!」
見とれてる場合じゃない!
もしかしたらもう…会えないかもしれないんだから…!!
「クッ!!」
俺は彼女に向かい走る。
「あ、あの!!」
「ん?」
動揺を隠しきれないまま俺は彼女に話し掛けた。
「いや…その…覚えてますか…?」
俺の馬鹿ー!!!!
これじゃただの変態…
「え?彼方君こそ…私の事覚えてるの…?」
「へ……?」
「びっくりしたぁ…彼方君はすっかり私の事は忘れてると思ったのに!ねぇ!あの時の事覚えてる?あのときは…」
「…………」
何が起きてるんだ…?
俺は驚きすぎで、愛しの彼女の話が耳に入ってこなかった。
そして、俺は彼女を見て、とある奴と姿が重なった。
「あ…あ…」
俺はぷるぷると震えながら、さっき、までの愛しの人に指をさす。
「お前…式ノか…?」
「そうだよ?何で急に」
「あ…あ…嘘…だろ…」
俺の青春は、終わりました。