表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さざめき  作者: min
第二章 兎
8/34

出逢い

閲覧数もうすぐで200を突破!ありがとうございます!!

 季節は冬。


 全ての、生きとし生けるものが、ゆっくりとその体を休める季節。

 それは、人間も例外ではなく、この季節には、比較的のんびりと毎日を過ごしている。


 時間など自らを縛る鎖にしかすぎない。


 けれど、そんな忌まわしい鎖がなければ、誰かと笑い合うことさえできないというのだから、私たちは愚かしい。

 自らを縛り、制限して、そしてやっと誰かと繋がりあえる。

 なんて私たちは不自由なんだろう。

 私たちは、なんて虚しい生き物なんだろう。

 ふう、と吐いた溜息が、白く染まった。

 そこで、あなたに会った。


 惹きつけられた。


 その姿に。その横顔に。

 白い、時を止めたような街に、浮かびあがる黒い髪。

 かみしめた唇。ひそめた眉。

 あの、と私は呼びかけた。


「綺麗な髪をしていますね」


 そう言うと、彼は笑って言った。


「…。ナンパしてるの?」


 返す言葉が見つからなかった。

 だって、私がしているのはそういうこと。

 たぶん、と答えると、彼はくすくすと笑った。


 ***


 今思えば、それが全ての始まり。

 けれど、ここで私がちゃんと選べていたなら。

 綺麗な気持ちであなたを思えていたなら。

 もしかしたら、今もあなたは傍で笑っていたのかもしれなかった。

 ―いや。

 傍じゃなくても。

 私以外の誰かと、笑ってこの世界で過ごせていたのかもしれなかった。


 ごめんなさい。ごめんなさい。


 謝りたいけれど理由をうまく言えません。

 理由なんて、いっぱいありすぎて。


 縛り付けてごめんなさい。

 自分勝手でごめんなさい。

 今までごめんなさい。

 今、ごめんなさい。


 けれどもう止まれない。

 どんなに謝っても、もう、どうにもならない。

 だから。

 どうか、次の世界では私に見つからないでください。

 どうか、次の世界では私を遠ざけてください。

 私から逃げてください。

 お願いです。どうか、私に殺されないでください。

 私から、逃げてください。

 逃げてください。

 逃げてください。

 逃げてください。

 にげてください。

 にげてください。

 にげてください。


 ―逃げてください。


 どうかどうか、私に捕まらないでください。

 そして、幸せになってください。

 私には、たぶん無理ですから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ