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・・・・・・。
それから。
とっても楽しい日々が続いた。
彼女は、名前を波乃というらしい。
波乃、とかいてハノ。
彼女とは、とてもよく話があった。
たくさんしゃべって、たくさん笑って、物凄く仲良くなった。
だって、彼女は兎だもんね。
僕と話が合わないはずがない。
僕と仲良くならないはずがない。
でも、架坐都くん、という他人行儀な呼び方は変わらない。
ねえ、兎。君は、僕のことをロウ、と呼んだよね。
狼と書いて、ロウ。
でも、最初は警戒してなのか信用してないのか、おおかみさん、って呼んだよね。
君の細い声がハノの声にかぶる。
「架坐都くん、」
―おおかみさん…?
訝しむような目。
窺うような動作。
ああ、兎。
やっと君に触れられたのに。
やっと君と結ばれたのに。
けれど、ここではそれは意味をなさない。
ああ、兎。
君に会いたい。
君に会えない世界なんてもう嫌だ。
君に会えない世界なんてもう嫌だ。
今度は、君に会いたい。
今度こそ、君に会いたい。
だから。
僕の暴挙をどうか許してほしい。