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さざめき  作者: min
第五章 そして終焉に向かう
28/34

君が塞いでいる理由

 見た目は可愛いが中身は正直いまいちな彼女が変わったのは最近だった。


 彼女を孔雀と呼んで好きだ好きだと叫びまくる男がいて、彼女はそれを毎回ウザいやらキモいやら言いながら蹴り返していた。

 …全く、末恐ろしい彼女である。

 しかし、近頃になってそのウザキモい男がぱったりと姿を見せなくなった。

 いや。

 その男はウザキモくなくなってしまったのだ。


 前の根暗ぐあいが嘘のようにきらきらになったその男は、元々の顔は中々よかったので、徐々に周囲と打ち解けていった。それと比例するように彼女の機嫌は悪くなり、ついに昨日、普段のあのマシンガントークはなんなんだ、と言いたいほどにしょぼくれてしまった。

 理由を聞いてみると、


「……中瀬奏と原谷由奈にいじめられた」


 と、ぽそりと呟いた。


 ……どういう風に?


 正直藍はいじめられて泣き寝入りするような女ではない。むしろ倍返し、…いや、十倍以上にして返すのが藍だ。その藍がどうしてここまでしょぼくれてしまったのだろう。

 と、いうわけで、理科室で偶然原谷由奈に会ってしまったので、接触を試みる事にした。


「こんにちは、原谷さん」

「こんにちは」


 こちらが会釈すると、向こうもぺこりと勢いよく頭を下げる。くるりと動く澄んだ黒い瞳はなんとなく兎のようだ。


「藍と知り合い?」


 聞くと、あい、…あい……、としばらく考えた挙句、九条さんのこと?と首をかしげた。


「私は知ってるけど九条さんは知らないかもしれない」


 と、言った。

 直接会ったのは一回だけ。話をしたりしたことはないらしい。


「なんで知ってるの?」


 そう聞くと、


「なんとなく気になったから」


 と、答えた。


「九条さんはいい子ね」


 見てたら分かる、と彼女は言う。あんまりにっこりと綺麗に笑うものだから、こちらが毒気を抜かれてしまって、気がつけば、彼女はいつのまにか去っていた。


 ―ははあ。


 確かにこれはある意味いじめだ。



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