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さざめき  作者: min
第五章 そして終焉に向かう
26/34

私の思う「ふしぎ」 

訳:「どうしてあの子たちお似合いなのにギスギスしてるんだろう…?」

 この胸にある不可解な感情が不可解と呼べるレベルにさえ育っていない事に多少驚きながら、私は観察を続けていた。


 秋水架也は茶髪に茶色い瞳のノリノリな元気のいい男の子だった。

 過去に犯した暴挙の名残などかけらもなく、その為ドSなところは見当たらない。ただ、俺に任しとけ!的なリーダー資質は兼ね備えているらしく、いい子だという事は見ていて十分すぎるほど分かった。

 九条藍は可愛らしい女の子だった。

 やることはやる。やりたいこともやる。そして自分はめちゃくちゃ可愛い。

 そんな風に自分を評価しているようだ。

 しかし、目的を果たすための努力ならどんなに手間がかかろうが惜しむことはない。そんな彼女はとても可愛いと思った。


 結果。


 二人はとてもいい子だと思った。

 カップルらしい。そんなの見ていれば分かる。

 二人ともとてもいい子だ。心から応援してあげたい。


 けれど。


 どこかおかしい。どうして彼等は互いにいるときだけあんなに作りものめいた笑みを見せるのだろう。共に在る時こそ一番無理をしているように見える。

 ―謎だ。


 ***


「―…っていうことだった」


 と、観察の結果を彼に話すと、彼は特大の溜息をついた。


「由奈。君ってさあ、…ほんとに、…いい子だよねぇ……」

「…鈍い?悪い?……どこを直せばいいの?」

「鈍くて天然で正直すぎ。…でも可愛いんだよね。…もう、…全く……」


 そう言って彼はぎゅ、と私を抱きこむ。私はといえば何だか混乱してる。


「…そういえばさ、何で本読んでるの?」


 それはこの前も聞かれた質問。


「なんとなく。習慣化されてるし」


 ―けれど。

 ちょっとだけ笑った。


「でも、…好きになりつつあるよ?」


 まだちょっと、苦手だけど。


「そりゃよかった」


 抱き締めている腕が揺れる。聞こえる笑い声。

 なんだか温かいこの時間が、純粋に愛しかった。





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