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さざめき  作者: min
第五章 そして終焉に向かう
21/34

鳥たちの哀歌

 あるところに鳥がいました。


 ある鳥は美しさを求めました。

 ある鳥は更なる自由を求めました。

 だから、鳥は美しさを受け取る代わりに自由を渡しました。

 だから、鳥は自由の代価に美しさを捨てる事を決めました。

 美しい鳥はうぬぼれや。

 柵の中で育ち、真の美しさを知る事が出来ない。

 自由な鳥は臆病者。

 美しい鳥に何も伝えられなくて、それがやがて哀しみの歌を育てる。


 世界は急に渇きだした。

 各地では次々と、

 惨劇が、

 悲劇が起こった。


 自由な鳥は全てを見ていた。

 そして、愛しいものを食い殺せる現状に、あろうことか歓喜した。

 自由な鳥は美しい鳥を愛していた。

 けれど、うぬぼれやの美しい鳥は彼を軽蔑していたから、彼はせめて彼女を食い殺して、自らの一部としておきたかった。


 なんて狂った解釈。

 けれども狂いは、それだけでは終わらない。


 狂ってしまった狼は、誰かれ構わず食い殺す。

 柵の中にいた美しい鳥は、狼に食い殺された。

 うぬぼれ鳥は勘違い。

 愛されていたと勘違い。

 美しい彼女は兎を知らなかった。

 美しい彼女は愛らしい彼の兎を知らなかった。

 美しい彼女は自らが一番だと思いこんだ。

 実際には二番でさえ無かったのに。


 美しい鳥は狼に一目惚れ。

 迷わず狼を追いかけた。


 自由な鳥はどこまでも自由だった。

 彼は狼を憎み、美しい鳥に復讐を誓う。


 そしてそして、

 狼は全てを忘れてしまい、

 美しい鳥は今でも勘違い。

 自由な鳥は己の感情を見失い、

 兎は絶望を抱いたまま、全てを抱きしめる。


 美しい鳥―孔雀と、自由な鳥―鴉による、

 喜劇から始まった悲劇を歌う哀歌。


 拙くて単純な、可愛らしい恋の物語。

 ―なんてわけはないけれど。



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