鳥たちの哀歌
あるところに鳥がいました。
ある鳥は美しさを求めました。
ある鳥は更なる自由を求めました。
だから、鳥は美しさを受け取る代わりに自由を渡しました。
だから、鳥は自由の代価に美しさを捨てる事を決めました。
美しい鳥はうぬぼれや。
柵の中で育ち、真の美しさを知る事が出来ない。
自由な鳥は臆病者。
美しい鳥に何も伝えられなくて、それがやがて哀しみの歌を育てる。
世界は急に渇きだした。
各地では次々と、
惨劇が、
悲劇が起こった。
自由な鳥は全てを見ていた。
そして、愛しいものを食い殺せる現状に、あろうことか歓喜した。
自由な鳥は美しい鳥を愛していた。
けれど、うぬぼれやの美しい鳥は彼を軽蔑していたから、彼はせめて彼女を食い殺して、自らの一部としておきたかった。
なんて狂った解釈。
けれども狂いは、それだけでは終わらない。
狂ってしまった狼は、誰かれ構わず食い殺す。
柵の中にいた美しい鳥は、狼に食い殺された。
うぬぼれ鳥は勘違い。
愛されていたと勘違い。
美しい彼女は兎を知らなかった。
美しい彼女は愛らしい彼の兎を知らなかった。
美しい彼女は自らが一番だと思いこんだ。
実際には二番でさえ無かったのに。
美しい鳥は狼に一目惚れ。
迷わず狼を追いかけた。
自由な鳥はどこまでも自由だった。
彼は狼を憎み、美しい鳥に復讐を誓う。
そしてそして、
狼は全てを忘れてしまい、
美しい鳥は今でも勘違い。
自由な鳥は己の感情を見失い、
兎は絶望を抱いたまま、全てを抱きしめる。
美しい鳥―孔雀と、自由な鳥―鴉による、
喜劇から始まった悲劇を歌う哀歌。
拙くて単純な、可愛らしい恋の物語。
―なんてわけはないけれど。




