襲撃と出会い
私は同僚のマークとスベインと共に王都レヴィエラから公都レリウスフィートへと向かう道中を旦那様の護衛として同行していた。
旦那様は公都レリウスフィートにおいて一番大きなロニージョ商会の会長であり、商業ギルドの理事の1人でもある。
今回王都に赴いたのもこの国の商業ギルドの全理事による会合に出席する為で、馬車で片道六時間の王都~公都間の街道は、常時騎士団の警邏隊による治安活動により盗賊と魔物が駆逐されており、本来ならば其れなりには腕に自信のある私やマーク、スベインの様な戦士が三名も護衛に付くのは些か過剰なはずだったのだが…。
旅程は順調に進んでいたのだが、森の中を突っ切る街道に入り暫くした所で左右から盗賊と思われる奴等に襲撃された。
「ちぃッ!何故こんな場所に盗賊がいる!」
「マーク!私とスベインで道を拓く!馬を全力で走らせて中央を突破しろッ!」
「わかった、頼む!」
私とスベインは即座に盗賊達に突撃し1人づつ切り伏せ道を切り開く。
御者を勤めるマークも私が命じた様に開かれた道を全力で走らせて、旦那様方の乗る馬車を先へ先へと進ませたのだが、盗賊達も全員馬に騎乗し追い縋ってくる。
「なっ!バトルホースだと!」
盗賊達が乗る馬を観て私は驚愕した。
通常の荷馬なら盗賊達が乗っていてもおかしくはなかろう。
馬が高価なものであっても荷馬なら金貨一枚も有れば買えるし、嫌な話だが商人の荷馬車を襲えば盗賊にでも手に入れる事は可能だろう。
だが軍馬として用いられるバトルホースは違う。
そもそもバトルホースは飼い慣らされているが魔獣の一種だ。
バトルホースの調教は専門の調教士にしか出来ず、売値は一頭で金貨50枚は超える。
それが襲ってきた盗賊達全員がバトルホースに乗っているなど本来ならあり得ない事態だ。
「どこかの手の者か!」
スベインも私と同じ結論に至ったのだろう、問いかける声は怒気に溢れている。
不味い、私とスベインの騎乗するのは賊と同じバトルホースだから、逃げようと思えば逃げ切る事が出来る。
しかし旦那様達が乗る馬車は箱馬車で襲撃者達の放つ矢なある程度防ぐことは可能だが馬車を曳くのは通常の馬だ。
一応軍馬としても用いられるタイプの馬だが、バトルホースと比べれば明らかに馬力が劣る。
しかも二頭立てとはいえ人が四人乗った箱馬車を曳いている、先制して先に抜け出したとわいえ追い付かれるのは時間の問題だろう。
私達は馬車の左右後方に陣取り何とか盗賊達を前方に抜けさせ無いよう防戦で手一杯になる。
「くっ、このままでは…」
1人1人の腕前は私達の方が上だろう。
その証拠に馬上で後方から襲われる不利な形で防戦に手一杯とはいえ、更に1人づつ盗賊を倒し追っ手の数は六人にまで減らす事が出来た。
しかしスベインも私も、致命傷とは言わないが軽くはない傷を幾つか負っている。
このままでは私達は倒れ、直ぐに旦那様達も囲まれ無惨な事になるだろう。
彼が現れたのは、私が内心でそう判断し、でも手を施せないでいた時だった。
最初は何かしらの魔法だった、目に見えない衝撃波の様な魔法が、追い縋る盗賊を同時に三人吹き飛ばした。
そして直ぐに街道脇の森の繁みから人影が飛び出し、高々と跳躍したかと思うと回し蹴りでまだ馬上にいた内の1人を蹴り飛ばしその馬を奪ったのだ。
ここまで一瞬の出来事で私達だけでなく盗賊達も、目を見開き呆けてしまっていた。
「助勢する、指示を!」
「!感謝するスベイン回頭だ反撃する!」
「了解!てめえら散々ヤってくれた借りは返すぞ!おらぁ!」
盗賊達は謎の青年…いや少年か?に更に1人を無力化され、残り1人を私とスベインが切り伏せて何とか襲撃から旦那様達を守り抜く事が出来た。
私達は少年の攻撃で気を失った者四人を縛り上げ、私達が撃退し切り伏せた者は念のために止めをさして回った。
その間少年には盗賊達の乗っていたバトルホースを集めて繋いで貰い、全てが済んで一息ついた所で旦那様達を交えて助けて貰った礼をする事になった。
◇
いやぁ間に合って良かったわ、盗賊達を撃退した後に見たら矢面に立っていた護衛の二人は身体のそこかしこに結構な傷を負っていたし。
正直不意をうてなくても、もっと早く繁みから飛び出せば良かったかもとは思った。
少し負い目を感じたので傷を癒す手段が無ければポイントを使って回復系の魔法を取得して治療して上げても良いかもな。
護衛の隊長さん(?)は綺麗な女性だった。
目の前で盗賊に止めをさした時はちょっと引いたけど、まぁそうゆう世界なんだよなこの世界は。
多分俺が盗賊に止めをさしたのを観て顔色を悪くしたのに気付いたのだろう、彼女は盗賊達の乗っていた馬を集めて欲しいと頼んできたので、もう1人のスベインさんという護衛と集めて回った。
盗賊達の乗っていた馬はかなり利口で、馬の扱いなどしたことの無い俺が手綱を取って引けば逆らわずに着いてくる。
馬は全部で10頭居た、最初襲撃された時に盗賊達も十人だったらしい。
馬車を護りながらで無ければ護衛の三人で余裕に蹴散らせたとはスベインさんの談だ。
馬を集め終わった時、残りの護衛二人で生きていた盗賊四人は縛り上げられ、死体は一纏めに集められ身ぐるみ剥がされていた。
盗賊達の装備品は二つに分けられ最初に連れてきた馬に載せられており、護衛達の主人であろう箱馬車内に乗っていた人達も外に出ていた。
「ご助力感謝します。私は公都でロニージョ商会を営んでおります商人のケルマ‐ロニージョと申します」
「クロウ…旅人です、助勢したのは偶然ですのであまりお気になさらないで下さい」
「いえいえ、レダから聞いたところクロウ殿のご助力無ければ恐らく我々の命は助からなかったとの事、命の恩人に頭を下げるのは当たり前の事ですよ」
「そうですか…それでは一つお願いがあるのですが」
「ええ、何でも仰って下さい。私共でお力になれる事なら何でも致しますぞ?」
「すいません…実は、私は遭難者の様で、更にどうも記憶喪失の様なのです。気が付いたらこの森の奥にある廃村のかろうじて部屋と呼べる所で寝ていました。その為、この場所がどの国のどこなのか、私は何処に住んでいて何をしていた者なのか自分でも判らないのです」
「それは…なんとも…」
異世界トリップの言い訳では定番だよね、記憶喪失って便利だわ。
「まぁ名前は覚えてますし、多少戦闘能力も備えているみたいなので廃村からは出て来たのですが…この先何処に向かえば良いのやら、生活していくにしても常識的な事も忘れているようで途方に暮れていたので、近くにある町の場所と最低限知っておいた方が良い事を教えて頂きたいのです」
「左様でしたか、それでは私共はこれから公都へ戻るところでしたので共に参りませぬか?道々必要な事をお教えしましょう」
「ご迷惑でなければ是非」
「迷惑などと、とんでもない!我等は貴方に命を救われたのですから…そうだ!この盗賊どもと持ち物はどう致しましょう?」
「…えっと?どうとは?」
「ああ、そうでした記憶を無くされておいででしたな。盗賊の持ち物は討伐した者が権利を持ちます。今回の場合はクロウ殿が撃退された五人の装備品と所持していた物品、それから騎乗していたバトルホース五頭はクロウ殿の物となり、捕らえた盗賊は犯罪奴隷として国に売却する事が出来ますな。この盗賊達の中に指名手配された者が居れば報償金も支払われる事でしょう」
「なるほど、私はどうやら一文無しの様なのでそれは助かりますね、他人の財産を掠めとるようで少し心苦しいですが」
「当然の権利ですから堂々と受け取れば良いのですよ、それで私からも一つお願いがあるのですが、生きて捕らえた盗賊を私に譲って頂けないでしょうかな?何故私共を襲ったのか、背後に誰か居るのかを知りたいので…当然ですが国に売却した以上の謝礼はお支払い致します」
拷問とかしちゃうのかな?まぁ盗賊だし仕方ないよね?
「私はそれで構いません」
「ありがたい、それでは…レダ!そいつらを馬に括ってくれ」
あっと、そうだレダさんとスベインさんの怪我の治療をしてあげよう。
「ケルマさん、護衛のお二人は怪我をされています、良ければ先に私が治療をしてあげたいのですが…」
「なんと!回復魔法を使えるのですか!?」
あれ?予想以上に驚いてないか?
「えっと…少しだけですが使えるみたいですね…」
「そうですか!是非お願いします、レダ、スベイン、クロウ殿が治療してくださるそうだ」
「助かります」
「恩にきるぜ、正直結構辛かったんだ」
まぁ剣で斬られたり槍で突かれたりしてるもんな、俺も正直早く治療してしまいたかったんだ、怪我をしたまま作業してるから居たたまれなくて…
えっとスキル一覧から魔法の回復系っと…此れが良いかな?
治癒魔法…MP消費で病気や外傷を癒す魔法。身体欠損は購えない。
回復魔法…MP消費で状態異常及び体力を回復する魔法。
名前:クロウ
種族:普人族
年齢:15
職業:旅人
レベル:1(0/10)
経験値:571
Sp100/100
Mp100/100
固有技能:
メニュー
戦闘技能:
魔操術Lv4
錬気術Lv4
MP回復速度上昇Lv1
SP回復速度上昇Lv1
状態異常耐性Lv1
浄化Lv1
治癒魔法Lv4
回復魔法Lv4
一般技能:
万能鑑定
共通言語
発火
水生成
健康体
残ポイント:41
うん、どちらも必要そうだからレベル4で取得して、ステータスで確認っと…あれ経験値が大分貯まってるな?…まぁいいや今は治療しないとな!




