第一章 第一話続
やっと放課後になり、私は生徒会室に向かって歩いていく。
廊下のど真ん中を。
大和撫子と謳われるようになってから、私が廊下に出て歩くと、こうして、生徒らが私に道を譲り、こんな異様な光景になってしまうのだ。
どうしたものかと考えていると、「時雨」、と私を呼ぶ声が聞こえ、歩みを止めて後ろを振り返った。そこには、同じく高等部二年で、生徒会書記の一ノ瀬柊太がいた。
「柊太。貴方も生徒会室に?」
「ああ。一緒に行こう」
「そうね」
私は微笑みながらそう言って、柊太と共に並んで歩き始めると、周りからは騒がしいほどの話し声が聞こえた。たとえ小声でも、人数が多くなれば、騒がしい。
「ね、大和撫子と一ノ瀬くんが歩いてるよ!」
「うわぁ、お似合いよね、あの二人」
「でもでも、雁屋先輩ともお似合いよね!」
「大和撫子はいいなぁ。周りがイケメンだらけで!」
「それにそれに、家柄なんて文句無しだもの!!」
そこ、丸聞こえですが?
そうとも言えず、私はため息をつく。
家柄を重視、成績を重視するこの学園では、クラス分けでその子がどこの家柄かも表示されてしまう。
私は編入してこの学園に入ったためにそれを自分で言わなきゃいけなくなり、言った瞬間、クラスでは叫びが迸った。私はその時、家柄を隠すべきだったと今更ながらに思う。
それを思い出しただけで、またため息が出た。
「どうかしたか?時雨」
「な、何でもないから」
私は慌てて両手を振ってなんでもないと表した。
ため息を二度もついたことで、柊太に余計な心配をさせてしまった。
そうこうしているうちに、生徒会室に着いてしまった。