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告白

そして当日がやってくる。

登校中の高橋はいつもと変わらなかった。


「おい、本当にやるのか?やめてもいいぞ?」


勢いで言ってしまっただけなら別に強制はしないつもりだったが、本人は気持ちは特に変わらないらしい。


「ん?ああ、もちろんやるよ?って言っても結果は見えてるけど。な」

全く余裕の表情で答える高橋。

何か勝算でもあるのだろうか、いや、無いはずだ。


「で、誰に告白するわけ?」


自分的には相手は誰でも良く、ただ高橋が振られるところをみたかった。


「昨日の文学少女!あいつなら降られたところで噂が回ることはないだろうからな!」


やっぱり本人も降られる前提だった。

だが本人もこころなしか面白そうだった。

きっと降られても関係ないだろう。


「ああ、あの一番大人しかった子ね、運が良かったら行けるかもね!」

心にも無い励ましをする。


「そんなこと思っても無いだろ、まぁ見とけよ!」

そういうと高橋は昇降口の前で止まった。

どうやら例の文学少女がここを通るのを待つらしい。


「おい、そこで待っててももしかしたらもう教室に来てるかもしれないぞ?」

「それはない、あの子昨日も一昨日も俺たちより遅かったからな」

目は通学の学生を一人一人確認しながらシレッと答える。

なんだ、昨日の船木ってやつから話を聞く前からもう顔は覚えてたのか。

その後自分らの横をたくさんの学生が通り過ぎるがなかなか例の女の子は現れない。

通り過ぎざまの学生達の不思議なものを見るような視線が痛い。

「おい、もう、おれは先に行くぞ」

「まてっ 来たぞ」

先に教室にきてるんじゃないかと思いはじめてた時、やっと彼女の姿が見え始めた。

彼女はペースを乱すことなく徐々に、徐々に二人のもとに近づいてくる。

距離が縮まるごとにこの件に関係が無い助信にも緊張感がはしる。

やるのか、本当にやるのか高橋。

そう思っているのも一瞬、彼女はすぐに二人の横を通り過ぎるところまで来た。


「ねぇ君!君だよ」

高橋彼女の行く手を遮るように立ちはだかり、彼女の足を止めた。

「へっ私ですか!?」

目を丸くし、驚いた拍子にぶら下げながら持っていたバックを思いっきり両胸に抱き込む。

女の子らしい仕草だ。


「そうそう、大事が話があるからちょっとだけこっちに来てくれないかな?」


そういうと高橋はひと気のない場所を指しそこへ歩き始めた。

文学少女も戸惑い気味だったが高橋の後をついて行った。


俺もついて行くべきなのか?

いや、それは流石におかしいな。

高橋の降られた後の言い訳を楽しみにしながら、一人で教室に向かった。





………




「どうだったんだ高橋?」

二人は違うタイミングで入ってきた。どう見ても成功したようには思えないが。

しかし、高橋は何やらうれしそうな顔を浮かべている。

「ああ、いい感じだったよ」

想像してた二択の返答のどちらにもそぐわぬ返答が帰って来た。

一体どういう意味だ。


「いい感じ?いい感じってなんだよ。まさか成功したのか?」

「いや、いい感じだ。いずれわかる」

それだけ言うと高橋はニヤニヤしながら自分の席へ向かった。

相変わらず返事が返事になってないやつだ。

むしゃくしゃしながら授業開始の合図を待った。


……


チラッ チラチラ

チラチラ


授業中に先ほどから何やら視線を感じる。

その視線の相手は今日高橋が告った文学少女であった。

高橋を見るならわかるがこちらを見る理由が分からない。

今朝高橋と一緒にずっと立って待っていたから何かを疑っているんだろうか。

その後もたまに感じる視線を気にしながら授業を続ける羽目になった。


……

「おい高橋、お前一体何をしたんだ?そして昼休み何処へ消えてたんだよ」


授業中の視線の疑問と昼休み急にに何処かへ消えた高橋を問いただす。

だが高橋はまるで耳に入っていないかのようにそそくさと帰りの支度を済ましている。


「悪い助信!俺今日バイトなんだ!すまん!」

そう言い残し猛スピードで教室を出て行った。


あっという間に教室に取り残されてしまった。

「あいつバイトなんかしてねぇーだろ。なんのつもりだよ」

相変わらず意味不明の行動だった。

どうせ自分も学校に残るようもないし、すぐに帰ることにし、教室をでようした時。

トントン。

何かが肩を優しく叩いた。

指だ。誰かに指で突かれたのだ。

後ろを振り向くと、

「うぉっ!?」

そこには予想だにしなかった文学少女がいた。


「ちょっといいですか?」


上目遣いで申し訳なさそうに尋ねる視線。

肩を突かれたのを見ると話しかけられているのは間違いなく自分だ。


「あ。ああ、言いけど」


「じゃ、じゃあ、屋上にお願いします。」


そういうと彼女は自分とすれ違い教室を出て行った。

状況がつかめないまま自分も後からついて行く。

その途中でいろいろな考えが頭を回った。

何故今日告られたはずの文学少女が俺を呼ぶ?

今日朝高橋と一緒にいたからか?

高橋がどういう人なのかを聞きたくて俺を?

単純に俺に告白?いや、それはー100パーセントあり得ない。

いろいろ考えているうちに階段を何度も上がって行く。

あっという間に屋上についてしまった。

そして彼女が屋上の扉を開け、中へ入って行くそして助信もそれに続く。

入って3m歩いたぐらいのところで止まった。

彼女の後髪が風になびきとても綺麗だ。


そしてそのまま振り返らずに30秒ほど経過した。

「で、あの、俺に何か話が?聞きたい事とか?」

沈黙に耐えきれずにこちらから切り出す。

すると文学少女はクルッと回転しこちらを向き始め、頭を深く下げた。


「ごめんなさい!」


「へ?」

いきなりの不意打ちに呆気に取られていると彼女は話を続けた。


「高橋って方から全部聞きました。あの、お気持ちは嬉しいんですけどまだあなたの事何も知らないのでお付き合いするのは無理ですすみませんっ!」


「え…あの。。」

状況が全く読めなかった。

何故俺はこの子に謝られてるんだ。

どういう意味だこれは。

話の意味からするにこの子は俺と付き合えない。

俺と!?なんで俺がこの子と……

はっ!?

そこですべて理解した。

高橋にハメられてしまったのだ。

恐らく高橋は俺がこの子のことを好きだと言っているから今日その返事をしてくれとでも言ったんだろう。

もっと高橋のことを疑っておけば良かった。

明日覚えておけ高橋。

そんなことよりこの場はどうすればいいんだ。。

申し訳なさそうにうつむく少女。

こんな子に言えるか?

まさかここであれはあいつの嘘だからなんでもないなんて言ったらこの子も恥かくだろうし、余計ややこしくなってしまう。

ここは素直に振られておくしかない。。

「なるほど。わかったよ。きっぱり諦めるわ。サンキュー」

吹っ切れました。

もう未練がなくなりましたかのごとくスッキリとした口調で言った。

「時間取らせて悪かったな!それじゃ」


そう言い残し、閉まった屋上のドアノブに手をかける。

「待ってください」

予想外にも呼び止められる。

声の主はもちろん文学少女だ。


ドアノブにかけた手は離さずに振り返る。

「ん?」

すると先ほどの申し訳なさそうにしている彼女は何処かへ消え、何かを決心したような目でこちらを見つめていた。

「こ、恋人は無理ですが、友達ならどうですか?」

それは良くある断り文句だったが彼女は真剣だった。

外見からもそうだがどうやら中身もとても真面目な子らしい。


「サンキュー!じゃあ明日から友達でよろしく」

その言葉に快く受け答えた。

「は、はいっ!」

相手の笑顔はぎこちないがそれでも不快なものではなかった。


今度こそドアノブを引き中へ入り、屋上を後にした。

入学式して初めてのお友達というものができた。

………



「中学の時ははあんな良い子いなかったよなぁ」

帰り道一人つぶやく。

好きでもない人に告られてもあんなに丁寧にきちんと返して。

告られ慣れてる証拠だろうか。

「そういえばあいつ、クラスで男の人気3位なんだっけ?」

流石に入学から数日であの子に告った(ことになっている)のは自分くらいだろう。

きっとこの先はいろんな奴に告られそうだ。

大変だな。

今日は何故か足取りが軽いとおもったら何時も一緒にいる高橋がいなかったことに気付いた。

あいつは本当不思議な奴だ。

くだらないことしやがって、明日どうしてやろうか。



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