第4話:事情聴取
学校からの休校の連絡があった後、立て続けに電話がかかってきた。友人たちからだった。
「お前、ニュース見たか?」
慌てふためいたようすで尋ねてくる。
「え、なに?知らないけど。」
「た、大変なことになったぞ。修治が、修治が……。」
――死んだ。
まさか、嘘だろ?どうして修治が……。信じられない。信じたくもない。そんな馬鹿なことが……。もはや泣くこともできず、僕はただ呆然とそこにいるだけだった。
ニュースキャスターの無機質な声がテレビから聞こえる。
「今日未明、吉月市の公園で少年の遺体が発見されました。被害者は近くの高校に通う須田 修治さん16歳。頭を殴られた痕があり、現場付近からは凶器と思われる直径十五センチほどの石が発見されており、警察では……。」
――プツッ。
朝からこのニュースばっかりだ。もう耐えられない。さっきからメールの着信音が二分おきくらいに鳴っているが、見る気にはならない。クラスメイトたちはどんな気持ちでこの便利な通信手段を使っているのだろうか。
メール……。そういえば修治からメールが届いてた。昨日の夕方に。今思い出した。あれはもしかして。いやな予感がする。震える手でリモコンを握り、再びテレビをつけた。しばらく関係ないニュースを聞き流したあと、修治の事件の話題となったようだった。
「……ました。死亡推定時刻は、昨日午後6時から7時ころで、警察は殺人事件と見て近隣の住民に……。」
6時から7時。メールが来た時刻とぴったり一致した。
あれは助けを求めるメールだったんだ。それに気づいたとき、僕はとてつもない罪悪感に襲われた。もう少し早くメールに気づいていれば……。あの時僕は、とある女の子のことを考えるのに夢中になっていた。なんて僕は馬鹿なのだろう。修治が死の恐怖に打ちひしがれ、僕に助けを求めてきたにもかかわらず、僕は勝手な妄想にふけっていたなんて……。情けない。あまりにも情けない。修治にすまない気持ちでいっぱいだった。そして、その気持ちをごまかすためか、次第に修治を殺した犯人への憎しみが強まっていった。こうなったら、絶対犯人を突き止めてやる。
――ピンポーン。
来客に母が応対する。こんなときにいったい誰だよ。寝転がったまま、耳をそばだてて客と母の会話を盗み聞く。
「佐藤亮介君はいますか。」
え、僕?いったい誰?声に聞き覚えはない。
「あの……。」
母が戸惑った様子を見せる。
「私は警察のものです。」
ケ、ケイサツ?
「では、何の前触れもなく、何も書かれていないメールが届いたわけですね。」
「はい。」
「一通だけ?」
「一通だけです。今ケータイにあるとおりです。」
「ふうむ……。」
考えてみれば、僕のところに警察が来るのも当然だった。修治からのメールはどんな意味であろうと、とにかく死ぬ少し前に僕に送ったものなのだから。事実、修治のケータイが最後に電波に乗せたものは、まさに僕に届いたものだったらしい。
やっぱり、あれは助けを求めていたんだ。そう考えると、再び罪悪感が僕を襲う。そしてそのたびに、それは犯人を憎む気持ちへと変わっていった。