第3話:事件
家に着いたのはちょうど6時ころだった。学校用の装備を全て解き、ソファーに寝転がってテレビを眺めた。だがどうも落ち着かない。いつもどおりの一日だったようで、いつもとは違う一日だったような気がしてならない。なんとなく胸騒ぎがする。なぜだ?
とりあえず夕食を済ませ、部屋に閉じこもることにした。ベッドの上に横になり天井を見つめてみる。落ち着かない、宿題をやる気にもならない。どうしてだろう。
いや、実は原因も自分でもわかっている。さっき、健太に言われたことだ。だが、認めたくなかった。認めてしまえばどんどん深みにはまっていきそうで……。でも、僕は自分の気持ちに気づいてしまったんだ。どうしようもない。本当にそうなのか?と、もう一度自分に確認してみる。ああ、そうだ。たぶん、そうだろう。
そんな自問自答を繰り広げるのもばかばかしくなり、窓の外を見た。すっかり暗くなっている。半分だけ欠けた月がぽっかりと浮いていた。そうだ、今度春奈にメールアドレス聞いてみよう。
――今度がいつになるのかもわからず、そんな決心をして眠ることにした。
翌朝、亮介は珍しくいつもより早めに起きた。なぜだかわからないがぐっすり眠れたようだった。いや、早く起きることができた理由はそれだけではないようだ。外が妙に騒がしい。早朝だというのに人の話し声や車が往来する音が頻繁に聞こえる。
「なんかあったのか?」
独り言をつぶやく、と、僕は机の上にあるケータイのお知らせランプが点滅しているのに気づいた。おもむろにケータイを開く。メールだ。
『須田 修治』
が、本文には何も書かれていなかった。きっと、間違えて送信してしまったんだろう。それとも用があったのか?まあいいや、今日学校で修治に聞いてみよう。受信時刻は、昨日の夕方6時21分。昨日ちょうど夕食を食べていた時間だ。
大あくびをしてカーテンの隙間から窓の外を見た。するとパトカーがサイレンを鳴らさずに無言で我が家の前の道を通っていく。
警察?やっぱり事件でもあったのだろうか。いや、それだけでない。パトカーに続いてTV局の取材車まで来ている。こりゃ大事件だ。
僕がそれを目撃してから、学校からの「本日は休校です。」という連絡が回ってくるまで、さして時間はかからなかった。
そして、その事件の概要を僕はTVを通して知ることとなった。