雪国に行きたいか!?
山賊風の男たちとは別れ、王都に入る。
王都の中は中世のヨーロッパ風。
本物は視た事ないけどね。たぶんそんな感じ。
露店があって、店があって、人がいて。
どこもかしこも賑わっている。
「いつもこんな感じなの?」
「祭りが近いからだろう。いつもはもう少し穏やかな街だ。お前はその祭りで売る予定だからな」
私の質問にローブが応える。
最後の一言はいらなかったよ。
周りを見渡せば身なりの良い人から魔術師っぽい人、騎士っぽい人、商人や平民入り乱れて、どの人を見ても笑顔。
うん、いい街だ。
そこで違和感。
看板を見る。
商品の説明らしきモノを見る。
読める………と言うより意味は分かるけど、日本語じゃない?
今まで当たり前の様に日本語で喋ってたけど。あれ?
「ねぇ、アイリスちゃん、アレなんだと思う?」
「ゼシの肉を串焼きにしたものだと思います。美味しいですよ」
適当に指をさしてアイリスちゃんの口に注目。
やっぱり、日本語じゃない。
聞こえてくる、いや、私が認識しているのは日本語だが、口の動きは全く違ったものだった。
「あー、あー。本日は晴天、本日は晴天」
「どうかしたんですか?」
「いいえ、何でも無いわ」
自分が発している声やら、口の動きに注意して気がついた。
私も日本語喋ってないし………
なんだろう。これ?
たぶんこの世界、と言うより、アイリスちゃん達の共通言語を喋っているんだろうけど。
便利な脳内変換とでも思っておけばいいのかな。
言葉は通じ無いより通じた方が便利なのは確かだしね。
「ここからは徒歩だ。降りろ」
馬車から降ろされ街の中心に在ると思われる大きな城へと入って行く。
馬車はどうするんだろうと思っていたら、門の近くの兵士達が持って行ってしまった。
ローブもアイリスちゃんも気にして無い様だし、まあいいか。
とぼとぼ後ろを付いて行く私とアイリスちゃん。
城の中って独特な雰囲気があるよね。
場違い感、半端ないっす。
大きな扉の前で立ち止まるローブ。
「入れ」
入ってみれば広間みたいなんだけど、何も無い。窓も無い。
照明に照らされた、ただ広い空間が広がっているだけ。
「中心まで歩け」
言われた通り真ん中に進み出る。
何か意味あんの、これ?
そう思っていたら、床が光り始めた。
何も無いと思っていた部屋の床には、巨大な魔法陣だと思われるモノが書かれていて、それが青白く光っているらしい。
大き過ぎて何が書いてあるのか把握できない。
それと私に詳細な説明は無理、美術1は伊達では無いのだ。
教師には「1でも与え過ぎだと思っている」とか言われた事あるし………
そこまで酷くないよ!
何か操作していたローブも私達がいる真ん中へとやってくる。
「気分が悪くなるかもしれんが、一瞬だけだ、我慢しろ」
ローブの言葉と共に軽い浮遊感。
酷いエレベーターよりはまし、という程度なので、そこまで気分が悪くなるような事も無い。
しかし、アイリスちゃんは違った様で、ちょっと顔色が悪くなっている様な気がする。
30秒ほどで、浮遊感が収まった。
「出るぞ、付いて来い」
え? 何が変わったのか全く分からないんですが。
ドアを開けてびっくり。
そこは雪国でした。