逆恨みって怖いよね
調査開始一日目。
地下の遺跡は広大だった。
地上に在る入口から降りて数十メートル。
眼前に広がる遺跡。
見た感じでは地下都市って言っても差し支えない。
これが勇者の為だけの墓だって言っても誰も信じないと思うんだけど、作った人の気分は古墳って感じなのかも。
中心部には大きな石碑、其処を巡る様に道が在って街並みが出来ている。
「これは、凄いな………」
サイモンさんが思わずと言った感じで言葉を漏らす。
「そうでしょう、私達も最初に見つけた時は自分の眼や頭を疑いましたよ」
先遣隊の人がサイモンさんに軽い感じで返す。
確かにこんなの見つけたら、先ず自分の頭とか疑っちゃうよ。
「眺める事はまたできます。行きましょう」
「目指すのは中心部ですか?」
一歩踏み出したサイモンさんに質問する。
「いえ、今日は外周の街を調査します。何も無い可能性もありますが、此処まで大きな遺跡です。何も無い方がおかしいでしょう」
サイモンさんの言葉通り、遺跡の調査は外周から始まり、一日目の調査はそれで終わる。
特に何の発見も無いまま、二日目、三日目と過ぎて行くんだけど、外周から中心部に向かって行くにつれて遺跡の破損が激しくなって行く。
破損状態は何か大きな物でぶっ壊した様な物から、何かで壊そうとして出来なかった傷などなど。
時には人の骨らしきものも見当る様になり、嫌な予感がビシビシ伝わってくるね。
「サイモンさん、これ以上中心部に近付くのはやめませんか?」
遺跡調査5日目。
流石にこの遺跡は不味いと感じた私は、サイモンさんに進言する。
いやだって、私はまだ死にたくないよ。
「いきなりどうしたんだい? ここまで順調に進んできたんだ。明日には中心部だよ」
そう、中心部までの往復は地上からだと半日はかかるため、調査の事を考えて遺跡内で一泊し、調査を行う事にしたのである。
「いやいや、明らかに不味いですよ」
とりあえずこの周囲の状況とか説明。
これで諦めてくれれば―――
「はっはっは、サヤは怖がりだなぁ」
コイツ…………^^#
「何かあってもサヤが守ってくれるだろ? なら何の問題も無いじゃないか」
「私にだって出来る事と出来ない事の区別は在りますから、何かあった場合逃げますよ?」
「その時は僕も連れてってくれると助かるよ」
明日は早い、今日はもう寝よう。
毛布に包まり、周囲に意識を飛ばしながら仮眠をとる。
奴隷って事と若い女性であるって事が災いして、調査中に何回か襲われかけてるんだよ。
全員撃退したけど、逆恨みって怖いよね。
ちょっと大事なところを蹴り上げて、鳩尾に一撃加えて投げ飛ばしただけなのに、「覚えてろこの雌豚!」とか捨て台詞吐かれるなんて。
この世界は怖い所だよ。