若返った
その後、私はサイモンさんと共に翻訳修正作業を行いました。
その間に色々と知識も蓄えましたよ。
たとえば、この世界の1年が15ヶ月。
25日間が1ヶ月くらい。
月が7つ。
一月に一つずつ増えて行き、7つ揃うと今度は一つずつ減って行く。
月が一つも出ない月が年末。
これは大発見。
私若返った!!
次、セントリア貿易都市の位置。
王国と帝国の真ん中くらいの海辺。
海近いのか、機会があったら行きたいもんだね。
後は魔法の免許についてってところかな。
生活に使う程度であれば免許は要らなくなっているらしい。
村や街単位の仕事として使うならギルドに登録するか、学校を卒業する。
国の仕事を請け負うなら学校卒業するしかない。
まあ、私は生活できる程度で十分だから学校とか面倒なモノはパス。
1ヶ月に亘る誤字、誤翻訳修正作業に遂に終わりが見えた時。
私達は当初の目的を思い出したのです。
「そう言えば、どうしてこんな事になったんでしたっけ?」
それはもっともな疑問だった。
私何でこんなことしてるんだっけ?
最初は資料集めしてたよね。何で資料集めてたんだっけ?
「そうだ! 忘れてたよ」
おいおい、サイモンさんまで忘れてたのかよ。
「君なら読めるかもしれない。今から持ってくるよ!」
言いながら部屋を出て行くサイモンさん。
数分後、何か重そうな物を持って戻ってくる。
布で包まれているので何かは判断し辛いが結構大きい。
「これ何だけどね」
言いながら布をはぎ取って行く。
「仕事の報酬で無理やり押し付けられただけなんだけど、中々に興味深い」
文字を見た瞬間、吸い寄せられる。
「石板の様な物に文字が彫られているんだが解読する事も、加工する事も出来ないらしい」
サイモンさんの言葉が頭に入ってこない。
私の意識に映るのは石板。
「サヤ? どうし―――」
『敗北を認めよう
明日を掴む手は空を切り
明日を目指す足は折れた』
読み上げる。
私の意思とは関係なく、口が動く。
『意志は砕かれ
希望は潰えた』
何だこれ、ってか何か不味い気がする。
眼を閉じようとしても無理。
『我に残された最後のモノを
勝者の貴様にくれてやろう
受け取るがいい』
やばいやばいやばい。
これ読んじゃダメな部類のモノだよ。
『絶望だ』
最後の単語を読み上げた瞬間。
私の意識は飛んでいく。