2コンボ
この家に来てから二ヶ月。
ラミアさんやサラとも仲良くなって、快適な奴隷生活満喫中です。
三食昼寝付きで月給銀貨5枚。
お小遣いとかじゃないです。
ええ、給料です。
断じて子供に渡すお小遣いじゃないんです!
あ、サラとは何時の間にか姉妹の様に仲良くなりました。
今では『サラちゃん』って呼ぶと反抗期なのかちょっと怒られるんです。
無視されるんです。
お姉ちゃんちょっと悲しいです。
気を取り直して、そんなある日、我が家に訪問者が現れたのです。
「ただいま~」
「どなた様でしょうか?」
「あ、すいません。間違えたみたいです」
イケメンだけど雰囲気が軽い残念な人が訪ねて来たと思ったら、すぐに扉を閉めて帰って行った。
なんだったんだ?
「待ってくれ、此処は僕の家だろう!?」
「いえ、ここには奥様とお嬢様、それに使用人の私しか住んでいませんが?」
「旦那様! 奥さんとお嬢さんがいたら旦那さんも居るはずだ!」
「え?」
「…………」
ん? あれ?
「ああ! ご主人様じゃないですか!!」
「どうしてそっちに行った!」
「いえ、ちゃんと名前も覚えていますよ。軽い冗談じゃないですか、旦那様」
「―――僕の名前は?」
「えっと…………」
「………………」
そう、サから始まる四文字だった気がするんだ。
サ、サ、サ~。
サリ………じゃない。
サイ―――ッ!!
「お帰りなさいませ、サイケンさん!」
「サイモンだ! サイモン=バックティーク!!」
一文字違い、惜しかった。
「お客様でしたら客間にお通しして下さいね~」
家の奥からラミアさんの声。
そうだな、こんな所で立ち話ってお客様に失礼だった。
「では、客間にお通ししま―――」
「僕はこの家の主人のはずだよな………」
流石に落ち込んでいる。
「そう言えば最近見ないと思っていましたけど、長い散歩でしたね」
「散歩に出て帰って来られないほどボケてないし、もう少し僕の事も気にしてくれ」
「あ、客間はこちらになります。少々お待ちくだ―――」
「仕事で出てただけだでこの仕打ちか、何を、間違ったんだろうな」
あ、いじめ過ぎたかな?
「そのオジサン、誰?」
ああっと! ここでサラからの見事な右ストレートが決まった!!
「サヤ、知らない人を家に入れちゃ駄目だよ」
まさかの2コンボ!
その後、撃沈したサイモンさんを仕事部屋に運び込み、表に止めてあった馬車から荷物を運び込み、ついでに食糧と水を運び込んで軟禁状態にしようとしたところで―――
「待ってくれ!」
待ったがかかる。
あれ?
そんなに動いて無い?
そんなまさか
あれ~?