家族
「改めて自己紹介しましょうか」
なんとか家に入れてもらえたサイモンさんも交えて食卓を囲む私達。
ちなみに、サイモンさんが家に入れてもらえたのはつい先ほど、食事の準備が整ってからである。
「わたしはラミア=バッティーク。専業主婦で、趣味は料理。一応、サイモンの妻でもあります」
「一応って………」
サイモンさんが項垂れているのは無視。
「サラ=バックティークです。15歳ですので、来年から魔術学院に入学の予定です」
出来たお子さんだ。
容姿はラミアさんに似ているのだが、中身はサイモンさんには似ても似つかないしっかりとしたモノだ。
どういう化学変化が起こって、この子が生まれたのかとても気になる所だけど。
「私はサヤ=ムラサメです。奴隷としてサイモンさんに買われてやってきました。これからよろしくお願いします。旦那様、奥様、お嬢様」
深く頭を下げながら自己紹介。
これからお世話になるのだ、これくらいは普通だと思う。
「あらあら、そんな畏まらなくてもいいのよ。わたし達の事は家族だと思ってくれれば嬉しいわ」
「そうだよサヤ、これから僕たちは家族だ」
家族…………
家族か。
私はそもそも普通の家族って言うのが分からないんだけどね。
「サヤちゃん」
「は、はい」
「自分の事を『奴隷』なんて言っちゃダメよ」
おっとりした表情でも、しっかりとした口調で諭す言葉。
「そうね、わたしの呼び方もラミアで良いわよ」
「あ、ワタシのこともサラって呼んでください」
「僕の事はサイモン様と―――」
「分かりました、ラミアさん、サラちゃん、旦那様」
「あれ!? どうして僕だけ―――」
「本当は敬語も使わなくてもいいのだけど、それは追々直して行くといいわ」
「僕が悪かった! だからサイモンさんって呼んで―――」
「さぁ! 冷めてしまわない内に食事にしましょう。今日は腕によりをかけたのよ」
暖かい。
本当に暖かい家庭。
異世界に来て、奴隷になって。
それでもこの暖かさがあれば此処に来た意味はあったと思えるくらいに暖かい。
自分の居場所は此処じゃないとハッキリ思えるくらいに、自分が酷く場違いな気がして仕方ない。
それを顔には出さず、楽しい振りをして食事をする、談笑に混ざる。
今日は早く寝てしまおう。
それが良い。
嫌な事は忘れて、惰眠を貪ろうじゃないか!
遂に総合評価100ポイントです
最初の目標だった3桁です
今の時点で3桁は早いのか遅いのか、判断しかねますが3桁です
PV3万 ユニーク5千 嬉しい限りですね。
これからも頑張って行こうって思えますよ
感想とか指摘とか待ってます