私は普通の奴隷です
「おい! ふざけてんの―――」
「馬車へ」
サイモンさんに合図を出し、近寄ってきた盗賊の一人の喉を潰す。
「―――っ!!」
盗賊が持っていた剣を奪い、ボスの方へと猛ダッシュ。
このまま盗賊殲滅とか、多勢に無勢は無理。
狙うは敵将ただ一人!
「そいつを殺せっ!!」
ボスが大声で怒鳴りつけるが、間に合いそうなのは一人くらい。
部下が剣を構えているが、走った勢いを殺さず、ボスの前に立ちはだかる部下の腹部へ剣を突き立てる。
剣を抜いている暇は無い。
抜くのにも時間がかかるし、剣自体も結構な粗悪品っぽいので、刃毀れしているだろう。
その部下が持っていた剣を拝借。
ボスが剣を構えるが、遅すぎる。
構えようとした右手の手首を掴みそのまま捻りあげ、背後から首筋に剣を突き付ける。
「全員動くな!!」
私の声に、その場の全員が止まる。
いやいや、サイモンさん達は動いてていいのに、なぜ止った。
っていうか馬車に逃げ込めって言っといたのに、縛られた人のロープ解こうとしてますよ。
正義感あふれる良い人ですね。
『誰かさんと違ってな』
(黙れ、皆殺しにしようとした悪魔に言われたくないよ)
『まったく、これではどちらが悪役か分かりません』
(お前の案を採用したんだよ、天使!)
「動かないでください。手元が狂いますから」
ボスが落とした剣を何とか拾おうと足掻いているので、それを嗜める。
「貴方がこの盗賊団のボスですよね?」
「だったらどうした、てめぇは騎士団だとでも名乗るのか?」
「いえいえ、私は普通の奴隷です。かよわい乙女ですよ」
あ、何だろう。
自分で言ってといてなんだけど、鳥肌が立った。
「部下達に指示して下さい。私達が逃げられれば、貴方を解放しますから」
「そんなこ―――っ!!」
首筋に当てていた剣を少しだけ、薄皮だけ切れるように動かす。
「早くしないと、体と首がさようならしちゃいますから」
「お、おい、てめぇら! 逃がしてやれ!」
「サイモンさん達はさっさと逃げる準備して下さい! 何時まで固まっている気ですか」
まだ固まっているサイモンさん達一同に対して、さっさと動くように命令。
バカなの? 死にたいの? 私は美味しい物が食べたいよ!
盗賊たちにも紐を解くのを手伝わせ、馬車に全員乗り込んだところで、縛りつけたボスの塊と、私が馬車へと乗り込む。
「ある程度の距離を行った時点で、お頭さん解放しますから」
回収を願いしますね。と言うと同時に馬車が走りだす。
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