空気が固まった
「全員馬車から降りろ!」
「ぐずぐずするな! 殺されてぇのか!!」
「金目のモノは馬車に置いて行けよ!!」
盗賊さん達、やりたい放題ですね。
私もあんな風に、自由に生きたい。
『人質を助けましょう!』
(キミは天使かい? 久しぶりだね)
『げへへへ、そんな事より、この隙に逃げちまおうぜ』
(悪魔め、そんな誘惑には負けないからな)
『そうです。逃げたとしても奴隷の刻印があって遠くまで行けませんから!』
(あれ? 天使さんそれフォローになってないですよ)
「全員集まったか!?」
「まだこっちに居るぞ!」
「こっちに連れて来い!」
盗賊による蹂躙は終わる気配も無い。
たぶん最後は皆殺しってオチじゃないだろうか。
『もう面倒だ、全員殺しちまえばいいじゃねぇか』
(悪魔らしい意見だな、一考に値する)
『ダメです! そんな事は悪魔が許しても天使が許しません!!』
(ほう、それならもっと良い意見でも言って貰おうか天使)
『そうですね、天使に良い考えがあります!』
『どうせ、大した意見じゃ―――』
『盗賊のボスを人質に取って逃げましょう!』
(それだ!)
『お前、悪魔より悪魔らしい素晴らしい意見だぜ』
『ふふふ、天使をもっと崇めなさい、奉りなさい』
脳内会議での結論は出た。
後は行動に移すだけ。
サイモンさんは運よく近くに居る。
盗賊は見えているだけで6人
ボスはあの厳つい奴だろう。
こまごまと命令や出したり、報告を聞いているから重要人物なのは間違いない。
盗賊はロープを出して来て、端から縛り始めている。
「サイモンさん、合図を出したら馬車に逃げ込んでください」
「え………?」
戸惑いの声。
サイモンさんが理解したかは確認できないが、時間が無い。
盗賊が近くによって来る。
「キャー タスケテ ゴシュジンサマー!!!」
大声を出しながらサイモンさんの後ろに隠れるように移動する。
空気が、固まった気がした。
『『ダメだコイツ』』
うるさいぞ、天使と悪魔!