チェックイン
雨だ。
日が傾くにつれて天気が悪くなってきていたのだが、ついに振って来た。
これで天気予言は多分信じて良い。
問題は―――
今、馬車で移送中って事だよ。
何を? 私を。
旅の準備が出来るなり、すぐに出発すると告げられ。
他にもサイモンさんと同じ方向へ向かう人たちと合流し、今は結構な人数での移動になっている。
え?
それより迷探偵の事?
戦争の事?
まあ、その内なんとかなるでしょ。
考えても仕方ない、気楽に行こう。
「サヤ! こっちを手伝ってくれ!」
「はい!」
振って来た雨は酷く、幌に穴が開いていたりすると、中の商品が傷んでしまう原因にもなるので、そのチェックと補修を行っている。
地面が泥濘始めているので、馬車も速度は出さず、少し先の雨避けが在る処まで走って今日は休むらしい。
手先はそれなりに器用である私にとって、布を当てて縫う程度の補修は朝飯前なんだぜ。
「終わりました!」
「よし、今はこれで良いだろう。幌の中に戻って休んでくれ」
とりあえずサイモンさんの荷馬車を探す。
「おーい、ムラサメさん、こっちだ!」
声のした方を向くと、サイモンさんが手を振って呼んでいる。
駆け寄り、幌の中にチェックイン。
気分は奴隷にチェックイン。
「大体終わったのかい?」
「ええ、終わりましたからこっちを向かないでくださいね、サイモンさん」
現在着ているのはメイド服でもスウェットでも無く、私服である。
サイモンさんが気を利かせてくれたのか、それともメイド服が気に入らなかったのかは判断が難しい所ではあるけれど、買って貰いましたよ。
この世界の標準装備。
ワンピースタイプで、ちょっと眺め―――もとい、膝下まである長めのスカート。
上は羽織る様にチェックのカーディガンっぽい物を。
合計3セット。
買って貰ったばかりのその服が濡れた所為で所々透けて、下着(特にブラ)や肌が見えてしまっている。
「え? どうし―――」
「振り返るな変態御主人!」
流石変態。
隙あらばラッキースケベを狙いつつ、女性の艶姿を見ようとする。
なんとか幌の除き穴を塞ぎサイモンさんの視界を遮る事に成功。
「そろそろ目的地ですよ。前を見て安全運転でお願いしますね」
出来ればご主人さまには豚箱にチェックインしてもらいたい。