複雑な感じ
「戦闘に自信のある者は1歩前に出ろ」
ゲイルの言葉に一歩前に出る。
今は個人売買の真っ最中。
嘘付くとまたあの不快感が襲ってくるので嘘は付けない。
試したからちょっと気持ち悪い。
「コレで良いか?」
私を指刺しつつ、隣に居る貴族に聞くゲイル。
あれ?
周囲を確認すると、私だけ一歩だけ前に出た状態。
こんなの、絶対おかしいよ!
「君が戦闘? ゲイルさん、疑っている訳じゃないんだが―――」
ま、見た目1○歳に見えるらしい私の容姿だと、戦闘(笑)ですよね。
「あれでも俺の近衛騎士5人を簡単に倒したぞ。まあ、こっちも油断していた所はあると思うがな」
え? 近衛騎士?
そんなの倒した覚え――――ああ!! あの山賊風の人たちか。
アレで近衛って………もうちょっと人選ぼうよ、変態貴族。
商談が進む中、半分以下に減った奴隷たちに目を向ける。
今は祭の四日目、今日も快晴。
天気予言は二日目も、三日目も当たってた。
これで夕方から雨が降り始めれば信じてもいいかもしれない。
ゲイルの言っていた事は本当らしく、あれよあれよと奴隷は売れて行くのだが、私はまだ売れていない。
やはり礼儀が一番重要視されるらしく、家事全般はできる物を他に雇えば良いだけなので、今年は売れないと思う。
「料理は――――」
「コイツなら―――」
売れるのはあまり嬉しくないのだが、売れ残っているというのもなんか納得いかないというか、寂しいというか。
複雑な感じですよ、ええ。
「いくらなら―――」
「出来れば―――」
予言が当たっているのなら戦争に巻き込まれるのは確定。
迷探偵を信用して良いモノかどうか………
「おい! ムラサメ、こっちに来い」
「あ、はい」
呼び声に上の空で答え、ゲイルの元へと歩いて行く。
「これから契約権の譲渡を行なう。少し痛みが走るが我慢しろ」
え?
左手の甲の刻印が光り出す。
わぁ、何か綺れ―――って痛っ!!
刺す様な痛みの後、刻印は元に戻る。
ああ、やっぱり消えるとかそんな訳ないですよね、分かってましたよ。
って言うか私売れたの?