重大なお知らせ
合格発表。
諦めてる私でも緊張するんだ。
他の人たちの緊張感は半端無いだろうね。
またも玄関ロビーに集められた私含め15人の執事とメイド。
これから変態貴族ゲイル様からのお告げ、もとい合格者発表である。
合格者は明日から始まる祭りで売られる為の準備を始めるらしい。
合格でも不合格でも待っているのは地獄ですね、分かります。
「全員揃っている様だな」
ゲイルが階段から下りてくる。
「今回の合格者だが―――」
緊張の一瞬。
「全員合格とする」
え?
今なんと仰いましたかこの変態は。
全員
合格?
「変た………ゲイルさん、質問です!」
「何を言い直したのかはあえて問わんが、何だ」
「全員合格って私も? 私礼儀とか全然できなかったんだけど」
「ある程度できていれば問題ない。後は実地で覚えろ」
あ~、なるほど。
判断基準は私が考えてた異常に低かったらしい。
確かに料理とか「それは生ごみですか?」って聞きたくなる様な物もあったし、そんなもんか。
いや待て、って事はなにか、私売られるのか………
奴隷生活かぁ~。
人権とかあるのかな。
酷い扱いは受けないって分かってはいても、私の知識だと奴隷ってイメージが、愛玩ペット的なね。
いや、これ以上は何も言うまい。
流れに身を任せてしまおう。
「全員荷物はまとめておけよ。使っていた部屋の掃除も忘れるな」
言い放ち去っていくゲイルの後姿を眺めつつ、海が見える所に住みたいな~とかどうでもよく考えている私である。
此処で重大なお知らせ。
この世界の情報まったく集めてねぇ!!
忘れてた。
そんな私は今何をやっているかって?
ダシ、取ってます。
こっちのお肉は面白いね。
煮ると色が紫になったり、焼くと良いダシが取れたり。
ラーメンの様な物も作ってみた。
お昼はそれをみんなに振る舞った。
味は塩。
味噌とか醤油とかは無かったのでこれは仕方ない。
こっちには麺って概念が無かったので、最初は恐る恐る口を付けていた皆(ゲイルは除く)も、食べ始めれば口も利かずにすごい勢いで食べていた。
もう夢中になってましたよ、ええ。
現時刻は夕方、明日は祭。
この世界の常識ぐらいは仕入れておくべきだと、事前に調査しておいた書庫へと向かう。
今までは他の人を模倣しつつ生活できていたのだが、これから向かう所に私以外の奴隷や使用人がいるとは限らない。
最低限の常識やマナーはそろそろ覚えないといけない。
既に手遅れとか思ってないよ、思ってない、思ってない。