野盗_01
初投稿です。お手柔らかに。
アルクは歯を食いしばって耐えていた。
荷馬車の荷台に転がされ、揺れるがままに柱に床に体がぶつかる。
強く縛られた手首は縄が食い込む。
体中が痛む。
だがアルクが一番堪えたのは無力さだった。
その情けなさに比べれば痛みなど大したことではなかった。
周りには子供が数人ほど同じように縛られて乗せられていた。
誰も何も喋らず、泣いている子がいれば、すべてを諦めたような表情の子もいる。
御者席から笑い声が聞こえる。
野盗が二人。
酒でも飲んでいるのかやけに陽気だ。
剣があれば今すぐあいつらを殺せるのに。
そう思った。
もっと剣が上手ければ。
もっと自分が強ければ。
そうすればこんなことには――。
そんな "たられば" を思い浮かべては手首の縄の痛みが自分を現実へ引き戻し不甲斐なさを痛感させる。
昨日まで、村はいつも通りだった。
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風が草木を揺らし、遠くで鳥の声がする。
大人は農作業をしている者がいれば工具を直している者もいる。
子供たちはそれを手伝っているかとおもいきや、飽きるとどこかへ駆け出し遊び始める。
どこにでもあるような平和な村。
何気ない平和な1日。
そして、どこにでもいるような少年。
アルクは木剣を構え、踏み込み、剣を振り下ろす。
老人――ゴードはそれを余裕のある表情で受ける。
「甘い」
ゴードの声が視界の外から聞こえる。
直後にアルクの木剣は空を切り、次の瞬間には脇腹に鈍い痛みが走っていた。
ゴードの木剣を食らっていた。
痛みに耐えきれず思わず動きが止まる。
「雑に剣を振るなっていってるだろ」
ゴードは呆れるように言う。
「……わかってるよ」
アルクはおもわず反論しようとおもったができなかった。
「わかってるならもっと考えて剣を振れ。いや、お前は馬鹿なんだから振る前に考えろ」
ゴードはそういいながら木剣で風を切るように素振りを繰り返す。
その芯のある剣筋は誰が見ても素人の老人のものではなかった。
ゴードは村で一番剣の扱いが上手かった。
若い頃はトレジャーハンターだったと言っているが詳しいことは聞いたことがない。
どこかの遺跡を探索しているときに怪我をして村に流れ着き、そのまま居着いたらしい。
今はアルクを含めて村の何人かに剣を教えている。
「筋は悪くないんだがな……お前の父親も相当の剣士だった」
「でも一緒に戦ったわけじゃないんだろ」
「まあな。一晩泊めてやって、ちょいと酒を飲んだだけだ。次の日にはお前を残して消えちまった」
そのときの情景を思い返すようにはなす。
「だが、あの立ち振舞を見ればわかる。あいつもトレジャーハンターだと言っていたが相当の達人だろう」
何度も聞かされた顔も覚えてない父親の話。
もう今さらなんとも思わなかった。
アルクは半ば聞き流すようにして再度木剣を構える。
「もう一度」
ゴードもニヤリと笑いながら木剣を構える。
「いいぞ、かかってこい」
徐々に夕日が畑の向こうに傾くなか、幾度となく木剣を突き合わせる。
のどかでいつもの一日の終わり。
きっと明日も同じような一日が続くだろうと誰も疑いもしなかった。
その日の夜までは。




