ほんの一瞬のロマンス260227
彼女と彼の
何気ない日常の何気ない出来事
その先のストーリーはあるのかないのか
彼女は午前の遅い時間、昼近くになって目を覚ました
昨夜は遅くまで仕事をしていたので必然的に起床時間が遅くなったのである
幸いにも今日は会社は休みなので今からの時間は自由に使える
目覚めてからしばらくは上体を起こしてボーっとするのが彼女の癖でもある
しばらくそうしてから、彼女はやがてバスルームに向かった
時間をかけて熱いシャワーを浴びたら無性にコーヒーが飲みたくなった
部屋ではなく店でもなく
車の中で
何故だか今は海を見たいと思った
彼女はキッチンに向かいコーヒーをドリップする準備を始めた
真空マグボトルに熱いコーヒーを淹れ、クッキーと一緒にバッグに入れた
車のキーとバッグを持ち駐車場に降り車のイグニッションを回した
そのステーションワゴンは新しくはなく、もはや今の時代では古めかしい感じさえするのだが
彼女はその平べったい車体のフォルムが好きで手放せないでいる
県道に出ると15分ほどで埠頭に着く
交差点をいくつか過ぎると赤信号で停められた
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彼はクライアントとの打ち合わせのために車を走らせていた
県道で車を走らせていると前に見覚えのあるステーションワゴンが走っているのが分かっていた
近付くでもなく避けるでもなく走っていると、やがてその車の真後ろに付いていた
リアウィンドゥ越しに見えるシルエットは彼の知る彼女そのものだった
赤信号で前後になったことは偶然のいたずらである
彼女と彼は友人という関係ではあったが1か月以上も会っていなかった
信号が青に変わると彼は彼女の右車線に並び並走し彼女に合図を送ってみた
彼女は即座に気付き、手で「こっちに来て」と合図をした
彼は彼女のステーションワゴンに続いて走り、やがて埠頭に向かうのだと気付いた
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やがて2台の車は埠頭に着いた
コンテナの並ぶ殺風景ではあるが海の見える埠頭だ
『久しぶりね。どうしてたの?』
『ぼちぼちだよ。忙しいみたいなので連絡も遠慮していたんだ』
『なによ、それ。いつでも連絡してくれていいのに。ね、少し時間ある?』
『うん。少しならいいけど』
『わたし海を見ながらコーヒーを飲みたくなったの。少し付き合ってくれる?』
『もちろんさ。1杯だけでもいいなら付き合うよ』
『ありがとう。ちょっと待ってね』
言いながら彼女はマグボトルのコーヒーをカップの代わりとなるキャップに注いだ
それを窓越しに彼に渡す
『ありがとう。君のぶんは?』
『わたしはボトルから直接でいいの』
『なあ、次は俺から誘っていいかな?』
『もちろんよ。時間さえ合えばいいわよ』
『ありがとう。今度連絡するよ。今日はおいしいコーヒーをありがとう』
『どういたしまして』
彼はギアをリヴァースに入れてUターンした
彼女は車の外に出て彼を見送り
メントールたばこに火をつけた
それからもう一杯コーヒーを飲みクッキーをかじって
車に乗り込んだ
彼がそうしたようにバックしてUターンして
走り去った
その先のストーリーは
ふたりの気持ち次第




