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第五話 骨董品

「………ええーっと、王女様、これはどういう状況ですか??」


王城の下男の仕事から帰ってきたというアル。


たった今、家の中がアンジェラによって荒らされていることに気がついたのである。


「わたくし、立派な平民になろうと思いましたの。それで、おかみさんにお聞きしたところ、妻というのは、洗濯、掃除、料理をするのが仕事だと知りましたわ。」


「ふむふむ………って、いやいや!!それを聞いて、どうやったら、その………このように、家を荒らすという結果に??」


「はじめの方は真面目に掃除していたのですわ。けど、途中から、仕方がわからなくなって………じゃなくて、何故かうまくいかなくてなってしまったのですわ。」


「………それは、単純にやり方がわからないのでは?」


「………………そ、…そうとも言いますわね。」


「いや、そうとしか言わない!!」


 アルは、呆れてこれ以上ものが言えなかった。


(………だけど、つい昨日までは王女だった方がここまでやっているんだ………。)


と、思い、掃除のやり方を教えることにした。



 掃除をして三時間、ようやく終わった二人は食事のテーブルについた。


「………わたくし、こんなにつかれたことがありませんわ。」


「………僕もです。」


「平民として生きるのも大変ですのね………。毎日遊ぶ暇もなく、仕事を自分たちでするんですもの。」


「王女様にいろいろしていただいてて申し訳ないです。ですが、週末は息抜きに出かけましょう!」


「お出かけですわね!楽しみですわ!!」


「隣町のところに、とある有名な………」



 その日は、夜遅くまで家の灯りが灯っていた。



―――――――――――――――――


 市井に下ってたから、もう1週間が経った。

 ここでの生活にもだいぶ慣れてきた。


「それじゃあ、今日も王城の仕事に行ってくるよ。」



いつものように、アルを家から送り出した。


そして、最近の日課である掃除を一人でしていたのだが………。いつも気になっていた小屋裏の掃除を初めてしてみることにした。



「まあ!これはソビアンの壺では?!あっ!こっちは、ロッホの秋桜の絵画じゃなくて!??」

 

なんと、アルの家の屋根裏は、有名な芸術家の作品が埃をかぶって眠っていたのだった。


 王女として、絵画などの芸術作品にふれる機会はとても多い。故に、目は肥えているアンジェラには作品についての知識には自信があった。


「………アルは、家の中にあるガラクタは捨てても、何をしてもいいと言っていましたわよね…。ですが、流石にこれを捨てるのはもったいないですわ!」


さっそく、隣の女将さんに言って手押し車を借り、女将さんの旦那さんであるトムおじさんに市場まで運んでもらった。


 流石は元王女。行動力はズバ抜けている。


「いらっしゃい〜!そこのべっぴんなお嬢ちゃん、きれいな骨董品はいかがかな〜。」


「あら、わたくし、絵画は持っていますの!これとか、ロッホの秋桜ですわ!」


 かろうじて手に持てる絵画を何枚か見せると、画廊のおじさんは目の色を変えた。


「お嬢ちゃん!!これを譲ってくれ!金貨50枚でどうだ?」


「なんですって?ロッホの作品がたった金貨50枚なんて!そこの露店でももう少しまともな金額で買い取ってくれますわよ?(……市政の金貨の相場など知りませんが、安く見られては困りますもの!)」


「なら、70枚!!」


「その3倍が相場でしてよ。」


「ぐ、ぐぬぬぬ………なら200枚でどうだ………。」


「仕方ないですわね、それで手を売って差し上げますわ。今回だけですわよ?」


 このようにして、アンジェラは持ってきた絵画や壺、更にはしょうもないガラクタまで、いいように言い繕って、高値で買い取らせたのだった。



「我ながら、割りと良い交渉ができた気がしますわ………。」


 忘れず、ついてきてくれたトムおじさんにお礼にいくらかを渡した。


「嬢ちゃん、目利き何じゃな………。それに、その交渉術、どこで身につけたのかね?かみさんには、そこらの男爵家の元令嬢とかなんやらと聞いたんだが、普通の貴族の令嬢とはそんなものなのかね?」


 アンジェラは、市井に来てから、自分が、王女だということを打ち明けてはいない。

 最初の洗濯場での女性陣の会話から、平民の皆が王女にいい印象を抱いていないことを知ったからだ。


(せっかくみなさんと仲良くなったのに……王女であることを知られるのは避けたい。)



「………さあ、あまり良くわかりませんが、そういうものだと思いますわ。」


 日が暮れてきた。


手を繋いで歩くカップルが広場に増えてきて、なんだか、アルの待つ家が恋しくなってきた。


「今日はありがとうございました。トムおじいさん。」


「ああ。またのぅ。」



 

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