第一話 追放された王女
前に投稿したことのある作品です。
現在、大幅リメイク中です。
「嫌よ。なぜ、わたくしがあなたと結婚しなくてはならないのかしら。」
先ほどまでの賑やかさが消え、広間がシ――ンと静まり返る。
アンジェラの言葉に、王座に座っている父は頭を抱える。そして、目の前の見合い相手である、どこかの貴族の男は唖然としている。(名前もよく覚えてないし、興味もないけど。)
「しかし……王女殿下……。これは家同士のお話でして……殿下の一存では決めることはできないかと。」
目の前の男は、王の方をチラチラ見ながら答える。
「お父様、わたくし、結婚はしないと言ったはずです。これで、お伝えするのは10回目ですわ。…………それに、わたくし……金髪が大嫌いですので。」
目の前の男はちょうど綺麗な金髪だった。
完全なる、言いがかりである。
………………………………………………………………………………………………
王女はかなりのわがままで、毎日のように豪遊をしているという悪評が市井で飛び交っている。
――との情報が、王と宰相である公爵の耳に入ってきた。
「アンジェラはどうしようもないくらいわがままで浪費家なんだと。
このままでは、民から糾弾されてもおかしくない。
下手すると、王家そのものも咎められるかもしれん。
結婚させて、王家から出そうものにも、本人に断られるし……。」
「陛下、私に良い案があります。」
「なんだ?公爵。」
「…………王女アンジェラ様を、王城から追放しましょう。」
――――――――――――――――
「なんで、こんなことになりましたの〜〜!?」
アンジェラはそのわがままさ故に罰として、先程平民との結婚を命じられ、更には王城を追い出された。
平民と結婚というのは、王からの温情だという。今まで王城でぬくぬくと育ってきた王女が、いきなり市井で一人、暮らせるワケがないからとのことだ。
(たしかにその通りだけど、何も、結婚じゃなくて、召使いをつけてくれるだけでいいじゃない!)
召使いがいるのでは、今までの生活と何ら変わらないゆえ、罰にならないということに彼女は気がついていなかった。
「す、すみません、王女殿下……。ぼ、僕が、偶然扉付近に立っていたばかりに…………!」
数年前からアンジェラの宮殿で、時々掃除をしているのを見かけるな〜っという程度の認識しかなかった使用人………………彼がアンジェラの結婚相手に選ばれた。
(そう!たまたま、お父様が私を呼び出した大広間にいたからっていう理由でよ!)
いつも通り、ただの注意で終わると思っていたのが、大間違いだった。
(割りと、本気で怒ってたわ……。)
呼び出され注意されたにも関わらず、反省の様子も見せないアンジェラの様子に、お父様はブチギレ、あろうことか平民との結婚と王城からの追放を命じたのだ。
そしてそのまま、アンジェラとこの使用人は無一文で着の身着のまま、王城の門から放り出されたところである。
使用人であるこの男も、何がなんだかわからず、混乱しているようだった。
「あなた!名前はなんですの!?」
「あっ…………、アルです。」
「わかりましたわ。アル。あなた、私を座るところに案内なさい!もう、立っているのは疲れたわ。」
「それは、僕の家に連れて行けということでいいですか?」
目の前の王城の門はピクリとも開く様子がない。
門番も開くつもりがないようだ。
王であるお父様がそう命じているのだろう。
「…………追い出されたんですもの。仕方ないわ。
ええ、そうよ、あなたの家に案内してちょうだい。
私、王城以外に住む家がありませんの。
それに、一応、よくわからないけど結婚?したのでしょう?結婚したからには、そうするしかないのだわ。」
かくして、平民との結婚を命じられた傲慢な王女アンジェラの、平民としての生活が始まった。
このおどおどした平民アルに、近い将来、ひかれてしまうということを、まだアンジェラは知らない。
もちろん、とある陰謀などには、もっと気がついていなかった。
お読みいただき、ありがとうございます。
誤字・脱字等がありましたら、
お豆腐メンタルですので、優しく教えていただけたら嬉しいです。