12:南凛太朗 12月22日9時35分 ③
「二十六だもんね、俺もおまえも。それで来年には二十七かぁ」
「なに、あたりまえのこと、しみじみ呟いてんだ」
「いや? もうそれだけの時間、凛と一緒にいるんだなぁって」
幼いころから一緒に育って、同じ時期に町を出て、そうしてほぼ時を同じくして町に戻った。
だが、あのできごとさえなければ、春風は今とは違う働き方を東京でしていたのではないだろうか。そう思う瞬間が、南にはまれにある。
「おまえには、感謝してる」
覚えた罪悪感を正確に読み取ったらしい春風が、笑って煙草をもみ消した。昔から変わらない匂いが強くなる。
「凛はねぇ、そうやって、他人にたやすく懐を見せるから、付け込まれるんだよ」
「付け込まれる?」
「そう、そう。付け込まれたいんだったら、それでいいけどさ。そうじゃないなら、もう少し距離を図ってあげてもいいんじゃない? 相手のためにもね」
相手のため、という言葉に内心で首を捻りつつも、南は否定した。
「べつになにもしてねぇよ」
「凜がそう言うなら、まぁ、それでもいいけどさ。どうするの、時東くん」
「どうする、って」
「戻ってきたら、知らぬ存ぜぬでお家に入れてあげるつもりなの」
――しかたないだろ、それは。
時東が時東自身の意志で来るあいだは、受け入れてやろうと決めていた。なにせ、自分の作る料理を心の底から喜んでくれる人間だ。どうして切り捨てられようか。
「あいつが来たらな」
その返事に、積年の友人はなんとも言えない顔で苦笑をこぼした。
「じゃあ、まぁ、それはそれとして、おまえさ。人様に部屋を貸すときくらい、そこになにがあるか把握しといたほうがいいと思うよ。もう遅いけど」
「は? なにが」
「だから。時東くん。初日にばっちり見てたよ。凛のコレクション」
「……あぁ」
あれか、と一拍置いて、南は呟いた。今の今まできれいさっぱり忘れていたのだが、そういえば。数年前、あの部屋の押し入れに、適当にまとめて荷物を突っ込んだような。
「なんで、あいつは初っ端から押し入れ漁ってんだ」
「ねぇ。なんでだろうねぇ」
「あと、コレクションじゃねぇよ。なんだ、コレクションって」
いまさらながらに訂正を入れた南に、春風が笑う。
「えー、でも、コレクションじゃなかったら、なんだろう。宝物? 在りし日の思い出? タイムカプセル?」
「違う」
「違うって、じゃあなによ」
「私物だ」
「え? それだけ?」
「ただの、私物」
苦虫を噛んだような声になったものの、南は強調した。ただの私物。六年ほど前に貰い受け、そのままになっているだけの私物。断じて深い意味はない。
見つけた瞬間の時東の心情を思えば、悪いことをしたとは思うが。でも――。
「見つけて気になったんなら、聞けばいいのにな」
時東に聞かれたら、自分はそのままを答えたし、時東が騙されたと感じたと言えば、謝ったはずだ。そう思わせていた、ということについて。
「凛のそういうとこ、俺は嫌いじゃないけど。時東くんとは相容れないと思うなぁ」
諦め半分という調子で、春風が呟く。意味がわからない。視線を向けると、春風はひょいと肩をすくめてみせた。
「だって、あの子。いまだに『Ami intime』を引きずってんじゃん」




