表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

推理、歴史、ホラー

終電間際のホーム

作者: 夢見楽土
掲載日:2025/05/11

 金曜日の夜。会社員の相川は、職場の飲み会の2次会後、終電前でごった返す駅のホームに立っていた。


「……ったく。課長の自慢話が長引いて終電近くになっちまったじゃないか」


 (ひと)りごちる相川。自分の前には長い行列が出来ていた。


「今日も満員電車か……」


 ふと相川がホーム右側に顔を向けると、電車が駅に入ってくるのが見えた。


 何の変哲もないいつもの電車。しかし、車内はガラガラだった。


 電車が停まり、ドアが開いた。何故か誰も乗ろうとしない。


「何で皆乗らないんだ? 次の快速か何かを待ってるのか……まあ、各駅でも空いてて座れる方がいいか」


 相川は、小走りで列の前に出ると、そのガラガラの電車に乗り込んだ。



 † † †



 ドアが閉まり、電車が動き出した。


 相川は、ドア近くの席に座った。酔いもあり、眠たくなった相川は鞄を抱えて目を閉じた。


 しばらくウトウトしていると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。


 相川が目を閉じたまま耳をすますと、どうやら客と車掌が揉めているようだった。


「電車を停めて! ここから降ろしてよ!」


「次の終着駅までお待ちください」


 終着駅?! どうやら寝過ごしたようだ。


 慌てて目を開け、騒ぎのする方を見た相川は、息を呑んだ。


 そこでは、何故かロープを首に巻き付けた女性が、車掌に怒鳴っていた。


 体に比して不自然に大きくなった頭部。足下にはポタポタと何かの液体が垂れ落ちていた。


 相川の気配に気づいたのか、その女性がこちらに振り返った。


 その顔は異様なほどに腫れ上がり、眼球が飛び出ていた。


「わああああ!」


 相川は叫び声を上げて立ち上がり、鞄を抱えてその場から逃げ出した。


 車内の座席に座る乗客が驚いた様子で相川を見る。


 しかし、その乗客達も、皆普通ではなかった。ぶよぶよに膨れている者、ガリガリで顔面蒼白な者、腕や足が引き千切れ、大量の血が出ている者……


 相川は車両の連結部まで走り着くと、隣の車両へ逃げようと連結部の扉を開けようとした。しかし、鍵がかかっているのか開かない。


「開けてくれ! 助けてくれ! ば、バケモノだらけだ!!」


「バケモノなんて、お客様に失礼ですよ」


 すぐ後ろから声がした。相川がビクッとして振り向く。


 後ろには車掌が立っていた。


「はい、お客様、お忘れ物ですよ」


 車掌は何故か相川の鞄を持っていた。


「え、鞄はここに……」


 相川は、自分が胸元で抱える鞄を見た。


 それは鞄ではなく、自分のグチャグチャになった腹部から溢れ出た臓物だった。



 † † †



「ねえ、この前の金曜日、このホームで飛び込み自殺があったでしょ? あの時、私ここに並んでたのよ」


「ああ、あの終電が止まったやつね。事故現場を見ちゃったの?」


「そうなのよ。マジ最悪」


「どんな感じだったの?」


「何かさあ、列の後ろからスーツ姿の男の人が前に出てきたかと思ったら、ホームに入ってきた終電に飛び込んじゃったのよ」


「えー! 何か思い詰めてたのかなあ。どんな感じで飛び込んじゃったの?」


「それがさあ。まるで急ぎ足で電車に乗るようにごく自然だったのよね」


「へー。そういえば、このホームって、昔から飛び込みが多くて有名じゃん? それで、学生の間では『あの世行きホーム』とか言われてるらしいよ。あの世行きの電車でも見えたのかな?」


「ははは、まさか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ